photo : shohei kiyose
「こんな森があったらいいよね」
"木こり"が考える森の遊び方

森と街は本来、地続きのものだった──そう語るのは、北海道でフリーランスの木こりとして活躍する足立成亮さん。森と街の人が一緒に学ぶ場作りも手がける足立さんに、森の遊び方を聞いた。

ノリで木こりになり、森にハマる

足立成亮(あだち・しげあき)さんは1982年札幌生まれの38歳。林業の世界に足を踏み入れたのは26歳の時だった。

「それまでは、写真を撮って作品を発表したり、自分のギャラリーを運営したりしていました。ただ、学生の延長上というか、ゆるい感じで、世の中に大きく打ち出していたわけではないんです。そろそろ世間一般と同じように給料をもらうという行為を経験しておかなきゃと考えた時、森の中でうごめいている自分の姿がイメージできて。それがしっくりきたんですよね。薪でも割って、人里離れたところに住んで、そういう風景って面白いなと。まあ、最初はノリみたいなものだったんです」

photo : yamauchi mayumi

林業のことはほとんど何も知らなかった足立さん。まずは手当たり次第に林業会社に電話をかけることからはじまり、最終的にハローワークに行って北海道滝上町にある森林調査・林業作業の会社に就職することに。実際に仕事をはじめると、やはり森の仕事は楽しく、どんどん森の魅力にハマっていった。

3年後、NPO法人もりねっと北海道が主催する研修に参加したことが良い出会いとなり、もともと考えていた独立を果たしてフリーランスの木こりになった。現在の足立さんが得意としているのは、森林内に道をつけること。この道を森林作業道という。

足立さんが手がけた森林作業道の一部

「林道だけで森は網羅できません。毛細血管のように森のいろいろなところにアクセスしなければいけない。でもよくある現場の森林作業道(*1)は、効率化を優先して森を傷つけるようなつくりになっていた。僕らはその毛細血管を、森を傷つけたり景色を変えたりせず、その森が持つキャラクターを活かせるようにつくりたいんです」

森の景色を変えずに道をつくる。足立さんの活動はいわば、道をつくり森林の手入れを行う環境保全型の林業と言えるだろう。

(*1)林道は森林施業の実施に必要な路網の骨格となり、一部は一般車両にも利用される道のこと。森林作業道は集材や造材等の作業を行う林業機械の走行を想定した森林施業用の道を指す。

森と街、人をつなぎたい

森で作業をするだけでなく、積極的に街に出てイベントや空間演出も行う。毎年夏に北海道石狩市で行われるロックフェス「ライジング・サン・ロック・フェスティバル」では、間伐現場ではほとんど捨てられてしまう丸太や枝などを使って参加者がくつろげるスペース「森のチルアウトブース」を制作し、話題になった。

「森を知らない人とも森の会話ができるような、森についての共通言語をつくりたいんですよね」

「木こりが道をつけて木を伐って、皆がそこに遊びにくる」足立さんたちが考えている「森」の理想図。illustration : jinnouchi takeshi

こうした理念と活動が認められて、2020年に実施された「WOOD CHANGE AWARD 」(国産材の利用拡大や新たな利用につながるアイデアアワード)では、足立さんをはじめ複数のメンバーによる「もりのがっこう(仮)」(現在は「森と街のがっこう」に名称変更)が、最高賞であるゴールド賞を受賞。これは森と街が双方向に学ぶことのできる場のアイデアのことで、環境保全型の林業を広げそのプレーヤーを育てるとともに、森と街が関わるための共通言語づくりとアクセスポイントを増やすことが目的とされている。

「森が多様であるように、森にかかわる仕事も多様であるべきだと思っていて、その土壌をつくりたいんです。月並みな言葉でいうと、森と人をつなげる、ということですね」

昨年のクリスマス、足立さんたちが大丸で手がけたイベント風景

その第一弾としてこの夏、大丸札幌店にて、北海道の森や木をテーマにしたイベント「サツエキのナツヤスミ」を開催。森のエッセンスを街に持ち込み、さまざまな展示やワークショップを行った。今後は北海道各地へ展開することを予定しているという。

こうした動きは、大学生などの若い世代を中心に共感されている。

「情報を仕入れるのが得意な若い世代は、地球環境や世の中の成り立ちに対して細胞レベルで危機感を抱いているように感じます。僕たちの仕事の話をすると『足立さんたちがやってることって、やっぱそういうことですよね!』と強い共感をぶつけてきてくれるんです」

線引きをリミックスすれば、もっと気軽に森で遊べる

林業従事者ではない我々は、森とどんなふうにかかわり、楽しむことができるだろうか? キャンプをするのもいいだろうし、ハイキングをするのもいいだろう。トレランやクロスカントリーなどでアクティブに身体を動かしても気持ちいいだろうし、近年はサバゲー(サバイバルゲーム)なども人気だ。もちろんこうした活動も面白いだろうが、足立さんは、もっと気軽な遊びがあってもいいのではないかと提案する。

子供たちにも森と触れ合う機会を創出している photo : yamauchi mayumi

「たとえば、そこに林道があるから散歩してみようとか、きのこが生えていたからどんな種類か調べてみようとか。ただちょっと興味を持つだけでもいいと思うんです」

わざわざ大仰な準備をして気合を入れて森に行くのではなく、軽い気持ちで、サクッと森に行って帰ってくる。そういったデイリーなものを足立さんは「遊び」と呼んでいる。

そしてそのような「遊び」は、森林環境が整いさえすれば実現するものだという。つまり、木こりが道をつくることで、人が森林に足を踏み入れやすくなるというものだ。

「森は本来、人間の生活圏の一部だったわけです。それがいつからか線引きされるようになってしまった。もちろんある程度の線引きは必要ですが、そこをもう一度リミックスしたいんです」

では、そのリミックスのために、普段森と離れたところで生活している都会の人間ができることはないのか。ある、と足立さんは断言する。

「知ること、いや、見ることだけでいいんです。森という漢字は腐るほど見ているだろうけど、そこから一歩先に目を向けて、森のいろんなレイヤーを見て欲しい。見てさえもらえれば、意識は変わると思います。情報はこっちで用意するので」

photo : yamauchi mayumi

いま、森に対してハードルを感じている人もきっといるだろう。しかしそのハードルは思っているより低いのかもしれない。

「森には、天文学的な数の生き物がうごめいています。見れば見るほど賑やかで、知れば知るほど知らないことが増えていく。さまざまな種類の面白さや多様性があって、暇になることがないんです。普段は忘れがちな生きること・死ぬことについてダイレクトに観察できるフィールドでもあります」

それがいったい何につながるのか? 足立さんの答えは明確だ。

「健康と教育ですよね。いまの時代の人間にとって、森にはまだ見ぬ、もしくは、時代の流れの中で忘れてしまっていた、可能性がたくさん詰まっていると思います」

photo : yamauchi mayumi

SUSTAINABLE DEVELOPMENNT GOALS

SDGsとは、2015年の国連サミットで定められた「持続可能な社会を目指すための世界共通の17の行動目標」です。2030年を目標とし、より良い社会の実現へ、世界が同じ方向に向くための「道しるべ」として定めたものです。

大切なのは「植える、育てる、収穫する、上手に使う」という森のサイクル。あなたの意識が変わることによって環境をよりよくすることにつながっていきます。

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