「より良い未来」をつくるために──
マクドナルドが「国産木材」を選んだ理由

マクドナルドが国産木材を活用した店舗づくりを進めている。近年、店内スペースを変革する企業は増えているが、何を重視しているのか。マクドナルドならではの理由をうかがった。

「ウッド・チェンジ・ネットワーク」との必然の出会い

日本マクドナルドは2019年、新規出店・改装・建て替えをする店舗の外装や軸組について、国産木材を積極活用していくことを発表した。その第一弾として同年12月、外装のロゴまわりにも国産木材を使用した店舗として京都 五条桂店をオープン。さらには構造材に国産木材を利用した牛久店、六本木ヒルズ店など、木材を活用した店舗出店や改装を次々と進め、2021年6月末時点では、木造店舗数15、外装に木材を使用した店舗数は49にものぼる。

ロゴ周囲などの外壁装飾に国産木材を使用して話題となった五条桂店

いったいなぜ、木材利用に切り替えたのか。店舗開発部で部長をつとめる佐藤弘樹(さとう・ひろき)さんによると、大きく二つの理由があるという。一つには、東京オリンピックを控えた建設ラッシュにより、鉄骨構造に必要な高力ボルトが不足していたこと。場合によっては資材調達にそれまでの3倍以上の期間が必要になってしまうこともあり、代替案として木材の可能性を模索していたという。

もう一つの理由は、近年多発している集中豪雨などの自然災害だ。特に2018年に発生した集中豪雨の被害は大きく、四国のいくつかの店舗は建て替えを余儀なくされた。この時、日本マクドナルドでは、将来起こりうる災害に耐えられる店舗について綿密な調査と議論がなされたのだという。

「その結果、やはり日本という国では、森をしっかり守らなければ同じような災害が全国各地で起こりうる、ということに気付いたんです」

「ウッド・チェンジ・ネットワークへの参加はマクドナルドにとっては自然なこと」と語る佐藤弘樹部長

被害にあった店舗を単純に建て替えるだけでは十分ではない。もっと根本的なアプローチが必要で、そのためにはできるだけ多くの木材を使い、林業を活性化することに貢献しなければいけない。そうした意識のもとで、経済合理性と矛盾しない木材利用の可能性を模索していたところ、林野庁が推進する「ウッド・チェンジ・ネットワーク」に出会った。

「ウッド・チェンジ・ネットワーク」とは、木材利用に関する課題の特定や解決方策、木材利用に向けた普及のあり方について協議や検討を行い、木材を利用しやすい環境づくりや日本全国に木材利用を広げるプラットフォームづくりのためにはじまった、建設・設計事業者やその施主となる企業によるネットワークのこと。2019年2月に第1回会合が行われ、日本マクドナルドは同年4月の第2回から参加している。

「店舗を木造にするためには、防火上の制約などさまざまなハードルがあります。最初は外装などに取り入れていましたが、やはり、できるだけ多くの木材を使うという意味では、構造材に木材を取り入れるのがいちばんいいですよね。最初は平屋建ての木造店舗を展開し、今年はよりハードルの高い2階建てにもチャレンジしています」

木材が使われているのがよくわかる建設中の牛久店
2019年12月に完成した牛久店

そうした木造店舗や外装に木材を利用した店舗を、マクドナルドでは積極的に増やしていく予定だという。

マクドナルドしか実現できない「より良い未来」のために

こうしたマクドナルドの環境への取り組みは、今にはじまったことではない。世界100カ国以上に展開するマクドナルドの強みとスケール(規模)を活用することで持続可能な社会の実現を目指し、「持続可能な食材の調達」「パッケージ&リサイクル」「気候変動への取り組み」など、さまざまな取り組みを行ってきた。

「マクドナルドは日本だけでも約2900以上の店舗があり、年間約12億個のハンバーガーを売っています。これだけのボリュームがあると、現在だけの利益を考えていては成り立たないんですね。10年後、あるいは100年後を見据えながら、サスティナビリティにどうアプローチするか、これはビジネスの一つであると考えています」

「特定の部署ではなく、全員がSDGsを推進していることがマクドナルドの特長かもしれません」

ここ数年、SDGsを推進するための部署を社内に新設する企業が増えてきたが、マクドナルドにそのような部署はない。なぜなら、SDGs的な取り組みは以前から部署を横断して当たり前のようにやってきていたし、SDGsに取り組むこと自体がビジネスの一部でもあるからだ。マクドナルドにとっては当然のことなので、あえて部署を新設する必要がない。

「創業者であるレイ・クロックの言葉に『giving back to the community』という言葉があります。地域に貢献することは創業の理念なんです。決断の際に立ち返るのはいつもこの理念であり、それが社風として浸透しているんです。だからこそ、国産木材への切り替えにも躊躇することなく踏み切れました」

店舗の構造材という、ボリュームを必要とする部分に国産木材を使用すること、それについて発信していくことは、まさに日本の地域に貢献することであり、マクドナルドの理念と合致する。また、マクドナルドならではのスケール(規模)を生かした施策、マクドナルドにしか実現できない施策であるとも言える。

それだけではない。将来的には、内装にも国産木材を取り入れることを目指しているという。

「メンテナンスのしやすさ、埃のつきにくさなど、フードセーフティの基準をクリアさせられれば、お客様がより木材のぬくもりを感じられる店舗づくりも追求できるのではないかと考えています」

国産木材を積極利用する日本マクドナルドの今後の取り組みに注目したい。

SUSTAINABLE DEVELOPMENNT GOALS

SDGsとは、2015年の国連サミットで定められた「持続可能な社会を目指すための世界共通の17の行動目標」です。2030年を目標とし、より良い社会の実現へ、世界が同じ方向に向くための「道しるべ」として定めたものです。

大切なのは「植える、育てる、収穫する、上手に使う」という森のサイクル。あなたの意識が変わることによって環境をよりよくすることにつながっていきます。

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