日本でも人気の高いビール。
世界各国で親しまれるこのお酒の歴史は古く、世界四大文明のひとつメソポタミア文明の史料にはすでにその存在が記されています。
また古代エジプトの壁画にもその姿が描かれており、当時はパン状に焼いた麦芽を水でふやかしてアルコール発酵させていたと推測されています。
その後ゲルマン人の登場によってヨーロッパ各地にビールの醸造技術がもたらされ、原料にホップが使用されるようになったのは11世紀頃のドイツだといわれています。
1516年バイエルン公ヴィルヘルム4世によって、麦芽、ホップ、水以外の材料を用いることを禁じた「ビール純粋令」が制定され、さらにドイツ帝国の誕生によってその法律はドイツ全土に広がり、品質の安定化が大きく進むことになりました。
また1600年代半ばにはミュンヘンの地において、低温発酵熟成のラガービールの製造が始まり、これによって常温発酵常温熟成のエールと、ラガーという現代ビールの二本柱が揃うことになりました。
アルコール発酵をもたらす酵母は、原料の糖分を食べてアルコールを生み出す働きをしています。
ワインの原料になるブドウと違い、麦芽は乾燥した穀物はそのままでは糖分を含んだ果汁に値するものを酵母に提供することは出来ません。
そのためビール醸造には、麦芽を粉砕したものを温水と混ぜ合わせて糖分を水に溶け出させる「糖化」といわれる工程があります。
糖化した麦汁は水分を蒸発させて濃度を高めるために煮沸されますが、その際にビールの香味に重要な役割を果たすホップが入れられます。
そして冷却した麦汁を酵母の力で発酵させるのです。
発酵に用いる酵母には「上面発酵酵母」と「下面発酵酵母」があります。
上面発酵酵母は15℃~24℃、下面発酵酵母は10℃以下と活動温度が違うのが特徴で、そのため香りや味わいにもそれぞれの特徴が現れます。
ビールには様々なタイプがあります。
製法をもとに大きく分けると上面発酵のエール、下面発酵のラガーの二種類となり、これで世界中のビールがほぼ分類出来ます。
さらにベルギーのブリュッセル近郊で作られる、自然発酵のランビックも製法による分類のひとつのカテゴリです。
また麦芽のローストの度合いによって出来上がるビールの色が変わり、ローストの度合いの高い物はいわゆる黒ビールとなります。
ビールのタイプは分類の切り口によって様々に分けられますが、その特徴を知れば、好みの味わいと出会える確率がより高くなるといえます。
国産のメジャーブランドのビールはほぼ、下面発酵のラガーに分類され、さらに細かくスタイルで分類するとピルスナーというチェコ由来のスタイルに属しています。
ただヨーロッパのビールのようにその地の気候、特性、歴史に合わせて長い時間をかけて成立した特徴のあるビールは、すべてがピルスナーのように冷やして美味しいものとも限りません。
ワインの世界に白ワインと赤ワインがあるように、飲む温度、グラスの形など楽しみ方にバリエーションがあるのです。
たとえばベルギービールには、それぞれの銘柄ごとに形の異なる専用のグラスがあります。
まずはグラスの形によって香りや味わいが変化することを体験してみてはいかがでしょう。
ビールの味わいに様々なバリエーションがあるということは、当然ワインのように料理との相性を楽しむことも出来ます。
定番の組合せを訊かれて「ビールには唐揚げ!」というとき、そのビールの多くはピルスナーというスタイルで、爽やかな喉ごしやホップの香りが揚げ物の香ばしさに合うことを体験的に知っているからなのです。
多種多様な味わいの輸入ビールには、それぞれに合う食べ物があります。
たとえばアイルランドの黒ビール、スタウトは牡蠣に合うビールとして現地で親しまれています。
またその地のビールを使った煮込み料理も定番です。
実際にビールの故郷で親しまれている組合せは、ぜひ色々と試していただきたいものです。
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