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2020/11/26更新

自然と共生するライフスタイルを次世代につなぐ。 滋賀県が目指す持続可能な未来とは?

2020年11月26日、滋賀県と楽天は包括的連携協定を締結しました。これまでも、楽天は30以上の自治体と協力して、地域の課題解決に取り組んできたのですが、今回の滋賀県との協定はいつもとすこし違います。なんと、連携する項目の第一項目が、「県産品の持続可能な消費の促進に関する事項」なのです!サステナブルなお買い物が世の中に広まりつつあるとはいえ、協定の一番上に「持続可能」を持ってくる県。すごすぎる。どうしてそんなことが出来るのか、知事に直接聞いてきました。

琵琶湖の恵みを守っていきたい

--- 突然ですが、知事からみて、滋賀県はサステナブルな県でしょうか?

三日月知事(以下、知事) おお。サステナブルにしたいと思っているんです。正直なところを言うと。

11月26日に楽天と包括的連携協定を締結した、滋賀県の三日月知事。


--- といいますと?

知事 まず地理的な背景からお伝えしますと、滋賀はちょうど日本の真ん中にあって、北に福井、南に三重、その3県をひとつのラインにしますと、そこから東側に22道都県、西側に22府県があるんです。その県のバランスからいっても滋賀が真ん中ですし、さらにその真ん中に琵琶湖があります。日本で一番大きな湖、世界有数の古代湖、その流れる水を京都大阪兵庫、約1,450万人が毎日飲み水に使って頂いている。

私たちはその水辺とか水資源を当たり前だと思っているけれど、気候変動や食糧危機の可能性を考えると、淡水資源ってすごく大事だと思うんですよね。そういう意味でもその大切な水資源、それを蓄える琵琶湖をお預かりしている県として、持続可能でなければならないと常々思っています。というのが、率直な思いです。

日本の真ん中で、日本一大きな湖である琵琶湖を持つ滋賀県。


--- やはり琵琶湖の存在が大きいんですね。

知事 はい。そういう水資源があったから、恐らく古墳時代も色んな有力な豪族がいたり、弥生時代も早くから稲作ができたんでしょうし、戦国時代はその場所を取り合い、城を作った。江戸時代は街道もありましたので商人が行き来した。明治時代は殖産興業でいろんな繊維産業をはじめ、水があったので早くに起こってより豊かになって。戦後は、例えば繊維産業、東レさんなんかもそうですし東洋紡さんなんかもそうですが、これからの世界を作るグローバル企業として活躍されている。

そういう意味で、琵琶湖を中心として昔から自然と共生してきた地域としてのコミュニティや思想というものをしっかり出していけたらいいなと思っています。

--- 琵琶湖が昔から人々にとってすごくいい場所だったんですね。

知事 いい場所だったんでしょう。そしていい場所にずっとしておこうと先人も思ってくれていたと思いますね。


自然を大事にする風土が根付く

--- 滋賀県は自然環境への取組みが活発な印象があります。例えば地銀さんや地元の企業さんも琵琶湖の恵みを守っていくという取組みをされていると聞いたことがあります。やはり環境意識の高い方が多いんでしょうか?

知事 滋賀県民には、自然を大事にしながら過ごしてきた県民性とか風土というものがあると思っています。

渡来の文化も早くから伝わりましたし、石の使い方や組み方、木の削り方などといった自然がもたらす文化文明が早くから成り立ってきた地域なんです。当時は車なんかなかったから石運ぼうと思ったらやっぱり水運だっただろうし。「そういう風土、自然があってこそ私たちの命であり生産であり生活なんだ」ということをすごく強く自覚されている方が多いですね。

よく言う言葉に、「はばかりながら水を流す」という言葉があります。私たちが汚した水は、必ず下流で誰かが使う。だから「この水、できるだけはばかって(配慮して)ながさなあかんでー」と言って。ちょっとでもきれいな状態で流しましょうと。

--- 滋賀で水を使って、その水はまず琵琶湖に流れて行って、その水は下流の京都や大阪に行くんですね。

知事 特に琵琶湖へ入るときに汚れたままではいけないということで、「かばた(川端)」という日本でも珍しい文化があるんです。家で野菜やお米を洗って、その水を一回ためておいて、そこに鯉を飼って、野菜屑や飯粒を鯉のエサにして、よりきれいな状態で流すシステムです。その鯉が太ったら、また私たちがいただきます。

かばたを始め、「水をキレイに使う」という先人の知恵と文化はいまでも受け継がれている。写真提供:滋賀県


--- すごい。めちゃくちゃサステナブルじゃないですか。

知事 そういうことをもう当たり前のようにされている集落とかあるんですよ。あとはその人間だけが飲む水じゃなくて琵琶湖の周りの田んぼでは、湖魚など生きもののことも考えながら、お米を作ったりもしています。

「魚のゆりかご水田」というプロジェクトなのですが、湖と田んぼを魚道(ぎょどう)でつないでいるので鮒とか鯉が田んぼに遡上して卵を産むんですよ。稚魚になるまでその田んぼにいて、そこそこ育ったら堰(せき)をあけて琵琶湖に帰す。そうすると小さい間に外来魚などに食われることがないので、たくさんまた繁殖する。ただそうしようと思ったら、田んぼに色んな化学肥料とか除草剤などの農薬を入れられないんで、そういう環境にこだわって作ったお米を「魚のゆりかご水田米」という名前でブランド化し、売り始めたりもしています。

人間だけじゃなく色んな生き物に対してサステナビリティというかダイバーシティというか、そういうのは大事にしようと思っています。

堰上げ式魚道を飛び越えて水田に向かう湖魚(ニゴロブナ等)。写真提供:滋賀県

魚たちが遡上・産卵・成育できる水田環境で作られた「魚のゆりかご水田米」。


--- 最近SDGsやサステナビリティの重要性が問われてきているからということではなくて、昔からそうだったんですか?

知事 そうですね、県民性としてそういうのがあるんじゃないかと思います。だからといって閉鎖的になっているわけじゃなくて、色んな人に来ていただいて、むしろそういう(滋賀の)良さや生き様を共有してもらっている。

旅行で来られる人にも、短期間であっても、そういうことを知ってもらって共感してもらえればと、最近よく考えています。「こういうステイの仕方がとても気に入ったのでまた来ます」というような関係人口の作り方とかにもチャレンジしたいですね。

--- なるほど。我々もEARTH MALL with Rakutenで商品を売る場所は提供しているんですけど、旅もありますよね。

知事 はい。EARTH MALLというコンセプトでサステナビリティを追及している姿勢にも共感しますし、そういったところに滋賀の生産者のみなさんが作ったサステナビリティに貢献できるようなものとか旅とか、そういうものが消費者の方に選ばれるとすれば、そして選ばれることで伸びるとすれば、それはすごくいいこと。まさに、三方よしの商売、色んな方にとってよい取引になるんじゃないかなと思っています。


旬の食材で季節を感じる

--- 知事ご自身のライフスタイルの中で、サステナブルな部分はありますか?

知事 そうかぁ・・・なんだろうなぁ・・・早寝早起き。

--- 早寝早起き!その心は?


知事 どうなんだろう?いつも健康でいられるというか、平常心でいられるというか。リズムかなぁ?いい時も悪い時も寒い時も暑い時もありますけども、できる限り規則正しい生活をして。ただ緊急の対応があったり、議会で遅くなったり色々あるんですけど、そのときもできるだけこう早くリズムに戻そうとするというか。

--- そうですよね。SDGsにも、健康とウェルビーイングに関する項目がありますね。

知事 あとは地産地消、そして旬産旬消ですね。地のもの旬のものを地域で買って旬の時に食べる。

新米はもう頂いたし、今で言ったらどうでしょうね、滋賀県だったら「かぶ」ですね。日野菜(ひのな)など、中秋、晩秋、初冬に採れる地域野菜。そういったものでちょっとお浸しにしたり漬物にしたり。そういうものをいただいて季節を感じる。もう少ししたら鴨とか。

--- 食べ物の恵みが、すごく近い自然から来ているんですね。

知事 あとは鮒ずし!!鮒ずしが漬け上がりますね。夏に僕も鮒ずしを漬けたんですけど。土用の暑い時に漬けて発酵させて、だいたい11月下旬から12月。できれば年末年始、クリスマス明けたころに出して、お正月に家族でよばれる(いただく)。

でもただ、なかなかよばれられないんですよ、鮒ずしなんて。一匹バーっと出すなんてハレの日というか、ちょっと親戚が集まる結婚式とか、そういうときに出してよばれるものなんですけど。子をいっぱい持った鮒を半年漬けて、発酵したご飯と一緒によばれるんで、子宝に恵まれますよとか健康でいられますようになど、いろんな意味を込めて出すということだそうなんです。

鮒ずしを仕込み中の三日月知事(左)。写真提供:滋賀県


--- 鮒は先ほどお話されていた、「魚のゆりかご水田」で増やしているんですか?

知事 そうしたいなと思っています。ずいぶん減ってしまったんですよ、ニゴロブナ(鮒ずしでよく使われる琵琶湖固有種)が。もうとれないんじゃないかっていう時もあったんですが、「魚のゆりかご水田」を整備したり、産卵環境をよくしたり、外来魚を駆除したりしながら、今一生懸命育てている、増やしている、そういう状況です。

--- なるほど、生物を守ることと、生活や文化がつながっていますね。

現存する最古の寿司とも言われる、鮒ずし。写真提供:滋賀県


次世代のために共感の輪を広げる

知事 サステナブルであろうとすることは、私たち固有古来の文化を次世代に繋ぐ、他の地域にはなくて滋賀県にはある、こういう文化を伝える、そういう営みでもあるのかなと。

--- 素晴らしいです。

知事 人間が生きているのはたかだか100年、でも琵琶湖は400万年生きてきています。だから僕らの時代、世代だけで汚して取返しのつかないことにしてはいけない、そういう思いですね。

琵琶湖は小さい窓ですけれども、地球環境とか生態系を考える上で非常に重要な窓、鏡だと思っています。それをできたらさっき申し上げた「魚のゆりかご水田米」を始め、お酒や、お肉、お茶など、ますます広げて行って、「サステナビリティに挑戦する滋賀」として、次の世代やまたその次の世代のために一緒に価値を創造しませんか?と、共感をもって消費をして頂く人を増やしたいなと思っています。

--- 本日はありがとうございました。滋賀県が持続可能な消費を協定項目の一番に据えた理由が、よくわかりました。滋賀県をもっとサステナブルにする取り組みに注目です。



今回のEARTH MALLイノベーター





三日月 大造(みかづき たいぞう)
滋賀県知事

昭和46年生まれ。滋賀県出身。平成6年に一橋大学経済学部を卒業後、西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)に入社。平成14年に松下政経塾23期生として入塾。平成15年に衆議院議員に初当選し、以降4期連続当選。国土交通大臣政務官、国土交通副大臣を歴任。平成26年7月より滋賀県知事に就任。現在は2期目を務める。

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