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2023/12/12更新

SUSTAINABLE JOURNEY

星のや竹富島


沖縄本島の南西に位置する八重山諸島にある島のひとつ、竹富島。サンゴ礁が隆起してできたこの島は、沖縄の原風景が残っています。亜熱帯海洋性気候ゆえ、太陽のエネルギーを多く受けた植物は、光合成が活発に行われて、元気に育ちやすいのも特徴のひとつ。藍、月桃、芭蕉、福木……竹富島の人たちは、自然環境の中で育つハーブや植物を用いて、民具や手工芸を作ってきました。天然素材で作られたものは、化学繊維に比べて健やかで、あたたかな魅力をたたえています。先人が受け継いできた竹富島に伝わる伝統的な工芸や民具の魅力を知り、島で暮らす人たちと交流するひとときを楽しんでみませんか?

天然染料で染められた糸や手織りの美しさに心惹かれて。


家庭で女性が糸を紡ぎ、布を織り、その布で家族のために着物を仕立ていたのは、そんなに遠い昔の話ではない。戦前の日本ではよく見られた光景であったという。染料は天然染料、糸は手紡ぎ、織りは手織り。化学的な染料、繊維を身につけることが当たり前になった現代において、手仕事で生み出されたものは、私たちの目に新鮮に映り、その美しい佇まいに我を忘れて見入ってしまう。

竹富島は伝統工芸品「八重山ミンサー」発祥の地。はじまりは、琉球王朝時代・18世紀初頭だと推測されている。地域ごとに特徴があり、竹富で織られるものは「竹富ミンサー」と呼ばれている。「ミンサー」とは竹富の言葉で「綿(ミン)で織られた幅の狭(サー)い帯」という意味。素材は木綿でできていて、縦糸と緯糸を交互に浮き沈みさせて織る平織りの織物だ。

最大の特徴は、四角い絣模様が4つと5つ、交互にあること。このかたちに「いつの(5つ)世(4つ)までも 末永く幸せに」という想いが込められているという。元々は「ミンサーフ」という帯を、女性が愛する男性に贈ったことから始まったという逸話もある。手間ひまをかけてこしらえた手織りの模様のかたちに、言葉では言い尽くせない想いや祈りをしたためた心のあり方が奥ゆかしくて、美しい。そのロマンティシズムに共鳴する心が伝播し、ミンサー織が浸透したのかもしれない。

客室にはミンサー織りのランプシェードがあり、シェードを通してやさしい光が灯される。

島の先人から学ぶ、織物づくりの奥深さ。


そして、滞在中は「ゆんたくラウンジ」で伝統的な織り機を使って、織物づくりを体験できる。手軽にこうした体験ができるのは、「星のや竹富島」のスタッフが「竹富町織物事業協同組合」理事長である島仲由美子さんに指導を受けているから。縦糸と横糸の組み合わせで面が作られる織物の工程を実際に学び、織物の奥深さを自ら体験したうえで伝えることを大切にしている。

伝統的な織り機「高機(たかばた)」。「竹富町織物事業協同組合」からお借りしたものを使い「織りあそび」を体験できる。

島に伝わる織物文化は、自然環境と密接だ。鮮やかな糸もしなやかな布も竹富島に自生する植物から生み出されたもの。自然の色で染め上げられた糸は、いくつか種類があり「織りあそび」をするときに、自分の好きな色を選ぶことができる。用意されているのは、赤芽槲(アカメガシワ)、藍(アイ)、月桃(ゲットウ)、福木(フクギ)、紅露(クール)など。

現代は化学染料で染める技術が発達したことで、手間ひまがかかる植物染料で染める人は、各家庭で織物づくりが盛んな頃に比べると少なくはなってしまったと聞く。だが、植物染料で染められた自然な風合いと美しさは唯一のものであることは変わらない。実際にその美しさに触れると、いくら手間がかかっても、この文化を「守りたい」「伝えたい」と願う人はいなくならない。そんなことを信じさせてくれる手工芸だ。

実際、本物を目にすると自分でも本格的に織ってみたい、という想いに駆られる人もいるはず。初心者にとってはとても根気のいる作業なので、まずはこの「織りあそび」体験で織物の仕組みを知ることからはじめてみることをお勧めしたい。織り方を学んだスタッフの仲西紋音さんが、ひとつひとつの所作を手取り足取り、丁寧に教えてくれる。そのおかげでまったくの未経験でも問題なく、織る作業に没頭できる。

「織りあそび」は、多くの人たちに体験を提供できるように事前に下準備を済ませた状態でスタートする。植物染料で染めた数種の色から自分の好きな色を選んで栞を作ることができる。

手業の達人が教えてくれる、民具づくりのあたたかなひととき。


トン、トンと織り機を動かす音が空間に心地よく響く。その作業を繰り返すたびに気持ちが整い、感覚が研ぎ澄まされていく。手工芸の体験は、ほかにも 用意されていて、島の人たちに直接民具づくりを教えてもらえる「手業体験」が催されることも。そのときの季節に合わせて、体験できる内容が変わったりするという。

自分たちの手で作る精神を大切にする竹富島では、自生する様々な植物の特性を生かし、暮らしに必要なカゴやゴザ、箒、団扇、帽子といった道具を家庭で作っていた。竹富島を愛してくれる人にそうした文化を伝えよう、と島のおばあ、大山ミツ子さんが来てくれた。

彼女は手業の達人たちが集まる「クージの会」のメンバーの一人。「クージ」とは、「トウツルモドキ」という植物を指す方言だ。この日は、手業でいちばん簡単だと言われるコースター作りに挑戦。基本の編み方をやさしく教えてくれた。大山さんは皆から「みっちゃん」と呼ばれていて、リラックスした親しみやすい空気感を与えてくれるチャーミングな人。まるで彼女の家にお邪魔して作業をさせてもらったかのように、おしゃべりしている感覚で作業できるのが楽しいひとときだ。


コースター作りの材料に使われる細い縄は月桃の茎。自生する月桃の茎を採取し、半分に切ってから裂いて、乾かし、叩いて、ほぐす。それを1〜2回絡めると縄が出来上がる。

まずは、木製の台のスペースに合わせて細い茎を隙間なく並べて。縦糸が動かないように編み込み、固定させる。この作業を繰り返すことでコースターが出来上がる。
島のおばあに自然や風習について教えてもらいながら、手業に没頭する時間はここでしか体験できないこと。外国からの旅行者もこの体験を楽しみしている人も多いそうで、大山さんに会いに竹富島を訪れる人もいるのだとか。こうして竹富島で暮らす人の魅力に惹きつけられて、再訪する旅人が後を絶たない。

民芸館やビジターセンターを訪れて、竹富島の歴史や自然を知る。


体験を通じて手工芸への興味が募り、宿のスタッフの方々に集落で手工芸に触れられる場について尋ねてみると、いくつか施設があることを教えてもらった。そのひとつが、「たけとみ民芸館」である。沖縄や竹富島の織り文化の起源を知ることができる資料館のようになっていて、着物や帯、糸や織物などが展示されている。


「星のや竹富島」の「織りあそび」の協力者である「竹富町織物事業協同組合」理事長・島仲由美子さん。ふだん、ここで作業していることが多いそう。「実際に手を動かしている最中に、次はこうしようかな、とデザインのインスピレーションが湧いてきます」と島仲さん。
島仲さんに織物をご経験された年数を尋ねると「年数だけは長いのですが、全然、まだまだです」と謙遜なさる。話を伺ううちに、織物と歩んだ道のりを教えてくれた。

「この島では、みんな小さな頃から織物をやっていて、手を動かしているんです。そういったものを見て手伝いをしながら自然と覚えていきました。ほかにやることがないですしね。しばらくの間、子育てが忙しくて離れていた時期はありますが、子どもの手が離れてからまたやるように。私自身、原材料の植物を畑に植え、収穫して染めて、織りものをする一連の営みをやっています。やればやるほど奥が深くて、織物は終わりがないんです」

熱を込めて織物との向き合い方を語る島仲さん。「織りあそび」の楽しさは、糸を変えことで広がる可能性だという。

「縦糸は一緒でも、横糸を細い糸と組み合わせたりするだけで印象がすごく変わるんですよ。栞ひとつとっても、白の中に紺を1本入れるだけでも違う。そうやって、織り遊びをしてくれたら嬉しいですね。こうした体験を通して、竹富島の自然に想いを馳せてみてほしい。たとえば、月桃の木を眺めているときに、この木の皮から黄色い染料がとれたんだ、と。体験をしてみると自然の見方や感じ方が変わると思うんです」。島仲さんの語りに、島の自然や織物の奥深さを伝える喜びが滲んでいた。

そして、織物や民具は西表石垣国立公園内の「竹富島ゆがふ館(ビジターセンター)」でも見ることができる。ちなみに「ゆがふ」とは「世の中が豊かで平和でみんなが幸せでありますように」という意味。この場所では、島の神話や民話、島の人々の言葉に触れられる音源や資料があり、彼らの暮らしや生き方について知ることができる。

自然を生かして暮らしてきた先人の知恵に触れることで、得られるものはとても大きなもの。本当の豊かさとはなにか。生活のたのしみとはなにか。竹富島を離れたあとにも、その「問い」を心に持ちながら生きていきたくなるだろう。


PROFILE
星のや竹富島

竹富島の東に位置する琉球赤瓦の集落「星のや竹富島」。 約2万坪の敷地には、島内の家々と同じように「竹富島景観形成マニュアル」に従い、 伝統を尊重して建てた戸建の客室、白砂の路地、プール、見晴台などがあり、小さな集落が構成されています。


星のや竹富島



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Photo by: Takeshi Abe
Edit & Text by : Seika Yajima

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