EARTH MALL with Rakuten Magazine 未来を変える読み物

2022/10/26更新

「これからの未来」への話。vol.2(後編)

小林メリヤス株式会社

持続可能な社会を作り出すためには、いま、自分たちに何ができるかを考え、課題に対して誠実に向き合い続けることが大切なことだと思います。そのヒントを探すべく、「サステナブル」な取り組みに感銘を受けた生産者や企業の方に、「EARTH MALL with Rakuten」編集長・平井江理子がお話をお伺いします。第2回のパートナーは、山梨県南アルプス市にある、オーガニックコットンのベビー服を中心にものづくりやサステナブルな取り組みに邁進する「小林メリヤス」の代表取締役・木村彰さんです。

今、アパレル業界が向き合うべき課題は、「技術の継承」。

平井:「小林メリヤス」の従業員の方の働き方や取り組みについてもお尋ねしたいと思います。従業員は何名いらっしゃるのですか?
木村:26人ですね。国内の繊維業界は外国人労働者の比率が高くなってきていますが、地域雇用にこだわっています。「メイド・イン・ジャパン」のものづくりにこだわるならば、地域に技術を継承していかなければ、と考えています。やはり、「技術の継承」というのが、アパレル業界全体の課題なので。地域に根付いたものづくりに注力しなければ、僕らの仕事そのものが続いていかないと思っています。

平井:戦後に地元の主婦の力を借りて縫製業をスタートしたのがはじまりだったと伺いしましたが、現在働いていらっしゃるスタッフのみなさまもほとんどが地元の方なんですね。技術の継承に加えて地域の雇用貢献にもつながっているというのは興味深いです。小林メリヤスに入社した方は、研修があるのでしょうか?

木村:入社して3カ月のスタッフには、ベテランのスタッフと仕事をする時間を持ってもらうように指導しています。例えば、編模様の柄を作ることや3D CADを使うことなど。昔は先輩が働く姿を見ながら徐々に仕事を覚えていく、というスタイルがまかり通っていましたが、今はそういうやり方では通用しなくて。先輩から後輩に技術の継承をしていくことも社内全体で意識的に取り組んでいます。編み機のメーカー「島精機製作所」の工場が和歌山にあるのですが、そちらに出向いて研修する制度やミシンの技術を習得するための研修もあります。そうした技術的な習得に加えて、「オーガニックコットン」について社員の理解度が高まるように豆知識のようなことを普段からよく話すようにしています。オーガニックコットンの畑を耕す以前は、農薬をまいた畑で児童労働をさせられていて、教育を受けることもできなかった人がいるという現実やそこに至るまでの背景を伝えるなど。僕らの事務所には、オーガニックコットンの畑に移行することができ、学校教育も受けられるようになった笑顔の子どもたちの写真を貼っています。この1枚の写真を眺めるだけでも、現地にいる人たちに想いを馳せることができると思うし、オーガニックコットンを使って商品を作る意義があると思うんです。

アパレル業界に潜む諸問題を共に働く仲間と共に考えていく。

平井:日本で暮らしているとそうした実態がなかなか見えづらいですよね。いかに社会課題を自分事として捉えられるかというのは、サステナブル消費の大きなポイントだと強く感じます。
木村:バングラデシュの主要産業になっているのは縫製なのですが、世界的なアパレルブランドの下請け工場が数多くある商業ビルが崩壊したことで1,000人以上の犠牲者が出てしまった事故がありました。ビルの老朽化が進む中、労働者たちは、ビル崩壊の危険性を訴えていましたが、利益を優先したオーナーが、稼働を続けた結果、事故が起きてしまったのです。作業内容や労働時間に見合わない低賃金、劣悪な労働環境で働いている人たちがいます。そうしたファストファッションの裏側に潜む闇を描いたアンドリュー・モーガン監督の『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償』という作品も社員に観てもらうようにしています。僕の言葉だけでは伝えきれない事柄がたくさんありますし、映像で観ることでよりリアリティを感じられると思うので。そうした作品に触れることで我々がやっている仕事の背景にあるものが見えてくるところがあると思っています。こうして、アパレル業界の裏側にある諸問題を共に働く仲間や消費者に伝え続けることもこれからの課題だと思っています。やっぱり、すぐには答えが出ないことですし、長い時間をかけてあらゆる角度から伝えていかなければ。
平井:「サステナブル=いいこと」というイメージを持っている方も多いと思いますが、生産過程で深刻な社会課題があるという事実も知る必要がありますよね。商品がどういった社会課題や人々にひもづいているのか、視座を上げて理解していくことは本当に重要だと思います。
木村:僕が常々思っていることですが、日本人は今こそ、本物を見極める力を養うべきだと。数年前にインドで栽培された遺伝子操作コットンが「認証済オーガニックコットン」として大量に世の中に出回るという事件が発生しました。製品化されてしまうと、オーガニックコットンなのかどうか、判別が難しい状態になってしまう。
平井:そうですね。オーガニックコットンを謳った製品がとても増えて来ているので、見極めが難しくなってきています。メーカーのサイトで根拠となる情報を確認したり、お店に問い合わせてみたりして、購入するものを選んでいく必要性を改めて感じます。良い意味で消費者が疑いの目を持つことで、メーカーの意識変化にもつながっていくのではないかと思っています。

切れ端や余ったパーツをものづくりの資源として有効活用する。

木村:そうですね。アパレル業界には大量生産して売り捌くサイクルがあり、売れずに余ったら、在庫を持ってしまったり、廃棄してしまったりするという悪循環もあります。僕はそうしたシステム無くしていきたくて、今取り組んでいるのが、受注生産に近いやり方。最近は「捨てない、燃やさない」ということを最大のテーマに掲げています。製造工程の中でどうしても出てしまう編み地の切れ端、廃棄せざるをえないパーツを再利用して、ぬいぐるみを作っています。

「cofucu」「ぬいぐるみS くま」6,050円(税込) ぬいぐるみ作家の濱津雅子さんとのコラボレーションによって生まれたハンドメイドのぬいぐるみ。中の詰め物、縫い糸、刺繍糸がすべて天然素材で作られていて、1点1点の仕上がりが異なる。
平井:木村さんのお話しを伺っていると、サステナビリティの大事な観点である「環境・経済・社会」のバランスを考えていらっしゃるのがとても勉強になります。「SDGsやらなきゃ!」みたいなことではなく、原料や働く人々のことを考えた結果、自然素材を使おうとか無駄な廃棄を減らそうといったアクションにつながっていったのは、素晴らしいですね。2009年から本格的にオーガニックコットンの取り扱いをスタートされたと伺いましたが、そういった長年の取り組みも、ようやく理解される時代になってきているのではないでしょうか。
木村:そうですよね。間違いなく、自然素材を使わないといけない時代が来ていると思います。現状の綿花栽培だったら、ますます環境に対する負荷がすごいことになってしまう。だから、少しでもオーガニックコットンを増やさないと、というところに行きつくんです。50〜100年後くらいにはその答えが出ているかもしれないですね。その頃に僕らの次の世代が、「信じてやってきたことは間違えてなかった」と感じ始めるときが来ると思う。決して「SDGs」がトレンドになってはいけないし、こうして語り合うことや次世代の人に伝え続けることを大切にしたいですね。
PROFILE
小林メリヤス株式会社

昭和24年に創業。自然豊かな南アルプス山脈の麓でベビー、子ども服の専業メーカーとして国内生産を続ける。最先端の3D CADシステム、コンピュータ制御のヨコ編み機を使用し、職人の手仕事と融合して風合いの良さを引き出したものづくりを大切に制作している。また、2009年にオーガニックコットン国際認証GOTSを取得。基準に沿ったものづくりを自社工場で行っている。


小林メリヤス(https://kobameri.co.jp/)

cofucu baby
Photo by: Mitsugu Uehara Edit & Text by : Seika Yajima

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