日本のお正月に欠かせない食べ物の1つであるおせち。たくさんの種類の料理を詰めるので、詰め方にはルールやパターンがあります。伝統を守るためにも最低限のルールを知っておき、そのうえでよりおしゃれに仕上げることを目指してみませんか。
今回は、おせちを三段の重箱に盛るときのルールを解説するとともに、おせちをきれいに見せるための詰め方や、おしゃれ感を高めてくれるアイテムなどをご紹介します。今までおせち詰めをしたことがない方も、ぜひこの機会に挑戦してみてください。
おせちの詰め方を解説する前に、まずはおせちを詰める容器、重箱についてお伝えします。重箱は「幸せ・めでたいことが積み重なるように」という願いを込めて使われるものです。
では、以下で重箱におせちを詰めるときのルールや仕切り方について見ていきましょう
おせちの重箱にはさまざまなサイズがあります。一般的に「寸」という単位で表され、1寸は約3cmで、1辺の長さが4~8寸のものが広く流通しています。おせちを食べる人数に応じてサイズを選ぶのがおすすめです。
以下で目安を記載するので、ぜひ参考にしてみてください。
● 4寸(約12cm):1人
● 5寸(約15cm):2人
● 6寸(約18cm):3~4人
● 6.5寸(約19.5cm):3~5人
● 7寸(約21cm):4~6人
● 8寸(約24cm):5~7人
おせちの重箱は、もとは四段が一般的でしたが、少子化や核家族化などの影響によって現在は三段のものが主流になっています。各段に詰めるものには決まりがあるため、それぞれの段に何を詰めるのか知っておきましょう。
また、一つの段に詰める料理の品数は、「別れる」を連想させる偶数ではなく、5・7・9などの奇数にすることも大切です。なお、細かいルールは家庭や地域によって異なる場合もあります。
◆ 一の重
一の重は一番上にくるお重で、「口取り」と呼ばれる前菜類や「祝い肴」と呼ばれるお屠蘇(とそ)のおつまみを詰めます。具体的には、たたきごぼう・伊達巻き・栗きんとん・数の子などです。
◆ 二の重
二段目に当たる二の重には、酢の物や焼き物を入れます。酢の物は紅白なますや菊花かぶなど、焼き物は鯛やブリを焼いたものなどです。エビのうま煮やイクラなどの魚介類、肉巻きやローストビーフなどの肉料理も二の重に詰めましょう。
◆ 三の重
三段重の一番下には、山の幸をメインとした煮物(煮しめ)を詰めます。こんにゃく・里芋・れんこん・しいたけなどです。筑前煮を詰める場合もあります。
おせちの重箱は、もとは四段が一般的でしたが、少子化や核家族化などの影響によって現在は三段のものが主流になっています。各段に詰めるものには決まりがあるため、それぞれの段に何を詰めるのか知っておきましょう。
また、一つの段に詰める料理の品数は、「別れる」を連想させる偶数ではなく、5・7・9などの奇数にすることも大切です。なお、細かいルールは家庭や地域によって異なる場合もあります。
市松型
市松型は、市松模様のように格子状に区切られたタイプです。「田の字」のように4つに仕切る方法や、細かく9つに仕切る方法などがあります。初心者でも比較的詰めやすい形状で、品数の多い一の重におすすめです。
段詰め
横向きに段を取って詰める方法です。段数や幅は好きなように調節することができます。華やかな盛り付けをしやすいため、二の重におすすめです。
升掛
升掛は「手綱」とも呼ばれる仕切り方で、お重の辺に対して斜めに区切られます。幅を変えれば多く詰めたい部分を広く取ることができるので、煮物をたっぷり詰める三の重におすすめです。
七宝詰め
七宝詰めとは、重箱の4つの角を三角形に区切る方法です。おのずと中央が四角になります。画像とは異なりますが、四隅の三角の部分には1品ずつ、真ん中の四角には見栄えのする豪華なものを置くとよく映えます。
末広
末広は、中央にメインの品や小鉢に入れた料理を置き、そこを起点に放射線状に末広がりに詰める方法。八の字の形状には、めでたいという意味合いが込められています。
おせちを美しく詰めるには、コツがあります。5つのポイントを押さえてみましょう。
形の崩れやすいものを先に詰めてしまうと、全体的に崩れてバランスが悪くなります。硬いものや形がしっかりしたものなど、崩れにくいものを先に詰めて基盤にするのがおすすめです。
また、詰めるときは奥から手前に向かって料理を配置していきましょう。しっかりさめてから詰めることも大切です。
配色もおせちの見た目を左右します。詰めるときには前もって料理の配置を決めておき、色のバランスにも気を配りましょう。
伊達巻き・数の子・栗きんとんのような同系色の料理はそれぞれ離れたところに詰める、どうしても同じ色味がかたまってしまう場合は飾り用の小物や仕切り用のはらんを使うなど、配置や色のアクセントを考えることが重要です。
黒豆のように煮汁が出るもの、酢の物のような汁気のあるもののほか、バラバラになりやすいもの・柔らかいものは、カップ状の容器や器に入れてから詰めるのがおすすめです。
おせちの具材の高さがバラバラだと、見た目もアンバランスになりやすくなります。全体的に具材の高さを同じくらいにすることも、きれいに詰めるためのポイントです。また、厚みのないものは、重ねることでボリュームが出て見栄えがよくなります。
頭がついている魚介類は、詰めるときに頭を左側にするのが決まりです。向きに注意して詰めましょう。
また、紅白かまぼこのように赤と白に分かれたものを詰める際には、「右紅左白」という「右を華やかにする」習慣に合わせて、右側に紅色を配置することも大切です。
おせちをさらに見栄えよく仕上げるためにはどうすればいいのでしょうか。華やかに仕上げるのに役立つアイテムを紹介します。
金箔は、料理に少し振りかけるだけで一気に高級感が出て、豪華な印象を与えられます。黒豆や伊勢海老のような単色のものに合うので、ぜひ試してみてください。
松葉・ヒノキ葉・南天の葉などの飾り葉もおすすめです。南天は、「難を転じる」という意味から縁起物として知られ、葉だけでなく赤い実も華やかさを際立たせてくれます。
また、笹の葉やはらんは、料理同士の仕切りや下敷きとしても使えて便利です。
赤い色には魔除けの意味があるとされ、古くから重宝されてきました。巻貝のような形をした「ちょろぎ」という植物の茎の部分を赤く梅酢漬けにしたものは、黒豆によく添えられます。黒に赤がよく映えてきれいです。
また、切った唐辛子も料理の色味のアクセントになります。
竹筒やゆず釜は、容器として使えて見栄えもよいアイテムです。汁気のあるものなどを入れましょう。
竹筒は、切った竹を器代わりにしたものです。黒豆や数の子などを入れるのに適しています。
ゆず釜とは、ゆずの中身をくり抜いて皮を器に見立てたものです。ゆずの爽やかな香りを感じられる一方で、中に入れるものには向き不向きがあります。酢の物などを入れるのがおすすめです。
仕切りのない重箱を使用する場合は、どのようにして区切ればいいのでしょうか。いくつかの方法をご提案します。
仕切りの代わりに、小鉢のような器やシリコンカップを使う方法があります。料理を種類ごとにまとめられ、詰めやすい点もメリットです。また、入れ物を使わずバラン(はらん)や笹の葉などで仕切る方法もあります。
100均やバラエティショップでは、お弁当用の便利アイテムが豊富に販売されています。おせちの仕切りとして使えるものもたくさんあるので、活用してみてはいかがでしょうか。
おせちを盛り付けるときには、必ずしも重箱を使用しなければならないというわけではありません。一人分ずつワンプレートにする、もしくは大皿に盛る方法や、半月盆にいろいろな料理を少量ずつ乗せる方法もあります。
ここでは、おせちを詰めるのに便利でよく用いられる人気アイテムをご紹介します
おせちを詰める容器といえば、ここまで見てきたように代表的なものが重箱です。黒塗りや赤塗りの正方形タイプがよく見られますが、ほかにもさまざまな重箱があります。木製のもの、色のバリエーションがあって選べるもの、長方形のもの、丸型や花型のものなどです。使い捨てができる紙製のタイプもあります。
デザインのバリエーションも非常に多く、単色のシンプルなものから、めでたい絵柄や豪華絢爛なデザインが施されたものまでさまざまです。利用する場面を考えながら選びましょう。
重箱の中を区切ってある仕切り箱も便利です。3つ・4つ・6つ・9つなど、さまざまな区切り方のタイプがあります。
さらにおしゃれに盛りたいときには、仕切りに収まるサイズの器も使ってみましょう。セットで販売されているものも別売りのものもあります。また、家にある器を使用する方法でもかまいません。
色付きや花の形をした器など、新年のおめでたい雰囲気を盛り上げてくれる見栄えのよいものを使うのがおすすめです。
おせちの装飾として料理のすき間に差し込む飾り串にも、さまざまな種類のものがあります。梅・松・ひょうたんなどのモチーフをかたどったもの、水引付きのもの、破魔矢串・南天串・ビーズ串などです。
おせち料理だけでも十分彩りはありますが、ところどころに飾り串を差すとアクセントになって一段と映えます。よりおしゃれに仕上げたいというときには、ぜひ活用してみてください。
ゆず釜は、ゆずがあれば簡単に作れます。
まず、ヘタの部分を上にして4分の1あたりの場所で真横に切ります。次に、果肉と皮の間にスプーンを入れて中身をきれいにくり抜きます。取り出した果肉は、絞った果汁を酢の物などに混ぜるのがおすすめです。
最後に、切り口のふちの部分に包丁の先端を当ててぐるっと一周させ、切り口を整えればゆず釜の完成。ゆず釜の中には、酢の物のほかイクラの醤油漬けや数の子などを入れてもよいです。
なお、最初に切り落としたヘタ側の皮は、ゆず釜の蓋として使います。
おせちはただ料理を詰めればいいわけではなく、段ごとに詰めるものの基本的なルールがあることがわかりました。詰めるときの仕切り方にもタイプがあり、それぞれに呼び名や適した使い方があります。
さらに、おせちを詰めるときのコツやより美しく仕上げる方法もご紹介しました。今回の内容を参考にすれば、初めての方もおしゃれに見栄えよくおせちを詰めることができるのではないでしょうか。
美しくおせちを盛り付けて、お正月に新たなる一年のスタートを気持ちよく切りましょう。