妊娠中の貧血予防のために、鉄分が豊富なレバーを定期的に食べようと思うママも多いのではないでしょうか。確かにレバーは鉄分が多く含まれますが、胎児に影響を与える可能性があるビタミンAも含まれるため、食べ過ぎには注意が必要です。

そこでこの記事では、妊婦がレバーを食べる際の注意点を紹介します。ビタミンA、鉄分不足の予防対策も解説するので、最後まで読んでください。

妊婦でもレバーは食べられる？注意点は？

一般的に、妊娠中にレバーを食べることは問題ないとされています。しかし、ビタミンAが豊富に含まれる食品のため、食べる量に注意しなくてはなりません。

妊婦がレバーを食べる際の注意点や、過剰摂取を避けるべき理由を詳しくみていきましょう。

ごく少量なら食べてもOK

内閣府が示した「食品安全委員会のファクトシート」では、妊娠中または妊娠を希望する女性は、レバーや、レバーパテなどのレバー製品を摂らないことが推奨されています。これは、レバーにビタミンAが豊富に含まれることが理由です。

ビタミンAはお腹の赤ちゃんの成長に必要な栄養素ですが、過剰摂取すると悪影響を及ぼす可能性があります。そのため妊婦はビタミンAの耐容上限量が設けられており、1日あたり2,700μgRAE(*1)が目安です。

鶏レバーは牛レバーや豚レバーと比べて最もビタミンAの含有量が多く、100gあたり14,000μgRAE(*2)のビタミンAが含まれます。つまり、鶏レバーの焼き鳥1本を食べるだけで、耐容上限の2倍近くのビタミンAを摂取してしまうのです。

どうしてもレバーを食べたい時にはごく少量にしましょう。レバニラ炒めは、もやしやたまねぎなどの野菜をプラスすると満足感が得られます。

※1出典：長野県塩尻市「妊娠時の食事について」
※2出典：文部科学省「食品成分データベース」

妊娠初期の継続摂取は避けた方が良い

ビタミンAを過剰摂取すると、胎児の先天性奇形のリスクが高まる可能性があります。ビタミンAは脂溶性ビタミンの一種であり、体内に蓄積しやすい点が特徴です。特に妊娠初期（3か月以内）は、レバーなどのビタミンAの含有量が多い食品を継続的に大量摂取することは避けましょう。

しかしビタミンAは、鉄分と同様に健康を維持するためには必要不可欠な栄養素でもあります。妊娠初期〜中期の推奨摂取量は1日あたり、650〜700µgRAE、妊娠後期は730〜780µgRAEですので、これをを目安にビタミンAを摂取しましょう。

妊娠中、レバーに含まれるビタミンAに注意が必要な理由

妊娠中にレバーに気をつけたい理由は、ビタミンAが豊富な点にあります。ビタミンAを過剰に摂取した場合、赤ちゃんに先天異常が起こるリスクがあるため、妊娠中のママは摂取量を正しくコントロールしましょう。

また、胎児のみならず、ママ自身に身体症状が現れる可能性もあります。妊婦がビタミンAに注意すべき理由を詳しくみていきましょう。

赤ちゃんに先天異常が起こる可能性がある

妊娠時にビタミンAを摂りすぎると、胎児の先天奇形が増加するといわれています。

鉄分の過剰摂取でも同様に先天性異常児出生のリスクが上がりますが、通常の食事で鉄分を摂りすぎることはあまり考えられません。

鉄分を摂取したい場合は、ビタミンAが多く含まれるレバーではなく、ほうれん草や豆類などの植物性の食品を選択するとよいでしょう。

過剰摂取は頭痛などの身体症状を起こすこともある

妊婦に限らずビタミンAを過剰摂取すると、中毒症状を引き起こす可能性があります。頭痛、関節や骨の痛み、脱毛、食欲不振、肝脾腫（かんひしゅ：肝臓や脾臓が肥大する症状）、血液中のカルシウム濃度上昇などは代表的な症状です。

また、骨粗しょう症や骨密度の減少などが起こり、骨の脆弱化にも繋がります。健康な骨作りのためには、カルシウムやビタミンD、ビタミンK2を積極的に摂取しましょう。

妊娠中にレバー以外でビタミンA・鉄不足を予防するには？

胎児の成長や妊婦の貧血予防に欠かせないビタミンAや鉄分は、食品から適度に摂取する必要があります。妊娠中のビタミンA、鉄分不足を予防するためには、献立にうまく野菜を取り入れ、食べ合わせを工夫することがポイントです。

予防法を詳しくみていきましょう。

ビタミンA・鉄分を含む野菜で摂取

野菜は、ビタミンAや鉄分以外にもミネラルが豊富なことが魅力です。また、緑黄色野菜に含まれるβ-カロチンは体内で必要な分だけビタミンAに変わります。そのため、妊娠中でも摂取量を気にする必要がありません。

β-カロチンが豊富な野菜は、しそ、にんじん、小松菜、モロヘイヤ、ほうれん草、ニラなどがあります。また、小松菜、枝豆、ほうれん草、サニーレタス、しそは鉄分が多いため、貧血気味の方は積極的に摂取しましょう。

一般的に野菜は動物性食品と比べてエネルギー量が少なく、体重管理をしたい方にもおすすめです。

鉄分の吸収を阻害する食べ物＆飲み物に注意

鉄分の吸収率は、一緒に食べる食品の栄養素や成分に大きく左右されます。例えば、ビタミンCは非ヘム鉄（主に植物性食品に含まれる鉄分）の吸収率を高める栄養素です。

一方で、鉄分の吸収を阻害する食べ物や飲み物があります。コーヒーや緑茶、紅茶に含まれるタンニンは、鉄分の吸収を阻害する成分です。また玄米や海藻類など、不溶性食物繊維が多い食品を一緒に食べると、鉄分が便と共に排出される可能性が高くなります。

妊娠中に限らず鉄分を効率よく摂取したい時は、タンニンが多く含まれる飲み物や不溶性食物繊維が多い商品や食品の摂取量に注意しましょう。

妊娠中、レバー以外のビタミンAを多く含む食べ物は？

レバー以外にも、ビタミンAが豊富な食品がいくつかあります。過剰摂取になりやすい食品をいくつか確認していきましょう。

動物性食品（レチノールを含む）

ビタミンAを含む動物性食品の一例を挙げていきます。
・うなぎ
・ぎんだら、あなご、ホタルイカなどの魚介類
・生卵
・マスカルポーネ

うなぎは、ビタミンDやカルシウム、亜鉛など妊婦に嬉しい栄養素が豊富に含まれる食品ですが、100gあたり2,400μgRAEのビタミンAが含まれます。(*3)

妊娠中に絶対に食べてはいけない訳ではありませんが、食べすぎないようにしましょう。

妊娠中のうなぎの摂取については、「妊婦は鰻を控えるべき？いつからどれ位の量がNG？│管理栄養士監修」でも詳しく解説しています。

また、ぎんだら、あなご、ほたるいかなどもビタミンAが豊富な食品です。魚介類を食べる際は、水銀の含有量にも注意しなければなりません。

「妊婦が安心して食べられる寿司ネタは？炙り寿司は？│管理栄養士監修」では、妊娠中に注意が必要な魚介類やお寿司を食べる際の注意点を解説しています。

そのほか、生卵やマスカルポーネは、妊娠中に注意すべき食品のひとつです。

「 妊婦さんは生卵を食べちゃダメ？生卵に潜むリスクや食べる際の注意点とは【産婦人科医監修】」の記事や、「妊婦がチーズを食べても大丈夫？危険なチーズの種類を解説」の記事では、食中毒や妊娠中に避けるべき食品を紹介しています。合わせて確認してください。

※3出典：文部科学省「食品成分データベース」

植物性食品（β-カロテンなどのカロテンを含む）

にんじん、ほうれん草、春菊、小松菜、ブロッコリー、トマトは、ビタミンAを豊富に含む野菜です。このうち、ほうれん草、小松菜、春菊は、特に鉄分の含有量が豊富なため、妊娠中に積極的に摂取しましょう。前述した通り、緑黄色野菜に含まれるビタミンAは、許容量を気にせず食べても問題ありません。

妊婦が避けるべき食品や飲み物は、「妊婦が食べてはいけないもの一覧！摂取量＆注意点も│管理栄養士監修」の記事でまとめています。食べてもいいのか気になる食品がある方は、参考にしてください。

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レバーは鉄分が豊富で貧血予防によい食品ですが、ビタミンAの含有量が多いため妊娠中は食べ過ぎに注意しなくてはなりません。鉄分を補給したい時は、野菜から摂取したり鉄分の吸収を阻害する食品を避けたりするとよいでしょう。レバー以外にもビタミンAの含有量が多い食品があるため、この記事も参考にして1日の耐容上限をオーバーしないように気をつけてください。

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