2022/4/12更新
フェアトレードを平易な言葉で説明すると、“適正な価格の取引を行う”ということ。私たちの身の回りの多くのものは、生産、製造過程においてたくさんの人の手を渡って日本に届いています。しかし、その裏側で世界各国の末端の生産者は、“買い叩き”に遭ってしまっている問題があるのです。だから、作れば作るほど生産コストを賄えないくらいの貧困状態になってしまう悪循環が生まれることに。つまり、一方の国は豊かになるけれど、一方の国は豊かにならないという貿易が行われていることがあるのです。
では、なぜそういった現象が起こるのか。その原因としては、生産者が市場価格としてどのくらいが適正価格かを知ることができない環境にあることが大きいと言えるでしょう。加えて、価格交渉力がないことも不利な状況に追い込まれる原因に。 それ故にどうしても相手の“言い値”で取引をするしかないのです。
実際の取引価格があまりに低いことを理由に、生産者は十分な生活を送ることができずにいます。そうした状況下で児童労働者として働き、教育を受ける機会を奪われてしまう子どもが存在していることも切実な問題です。実際、彼・彼女らの親世代も文字が読めない人が多く、教育機会の不足がどれほどの障害をもたらすのかについて、想像が及ばないところがあるのです。
しかしながら、立ち止まって考えてみると、文字がちゃんと読めたほうがいいのは明らかなこと。どの肥料を購入したら良いか、肥料をどのように蒔いたら効果的なのか、肥料のパッケージを読み、理解するためにも文字を読める力が必要なのです。
私たちはそうした“ビジネスの歪み”を解決しない限りは、世界を変えることはできないと思っています。だからこそ、フェアトレードを通して、途上国の人たちに適正な価格で取引をすること、そして、彼・彼女らが自らの力でより良い社会をつくれるよう支援していくことが非常に重要だと感じています。
そうした地道な働きかけが実を結び、近年ではフェアトレードの効果についても良いニュースが報告されるようになりました。「認証農家の収入が4年の間で85%ほどアップした」「生産性が上がり副業による収入も得られるようになった」といったように。
フェアトレードで商品価格に上乗せして支払われるプレミアム(奨励金)は、収入は途上国の村の組合に渡ります。村の人たちが話し合いを重ねた結果、その資金を使って学校を建てるケースもあります。そうした学校に通う子ども達の輝くような笑顔の写真を見ると、とても嬉しい気持ちになりますね。こうして、金銭の使い道を自分たちで決められる自立的な仕組みがエンパワーメントになっているのです。
私たちができることの一歩として、日々のお買い物でフェアトレードラベルが付いている商品を探すところから始めてみませんか?
例えば、手に取ったチョコレートがどんな国で作られているのか、どんな原料を使って作られているのか。特に気に留めずに買い物をすることの方が多いかもしれません。でも、極端なことを言うと、それが児童労働によって作られたカカオが原料に使われている製品である場合だってあるのです。そうした情報を知っていたら「購入したくない」という意志を持つことができますよね。ですが、肝心な情報は消費者に見えづらく、社会課題解決を大きく阻害している要因になっています。
ですから、フェアトレードラベルが表示された商品は、適正な価格で取引が行われたものであることの証として価値があるのです。
私が事務局長を務める「フェアトレード・ラベル・ジャパン」は「国際フェアトレード認証ラベル」の仕組みを運営しています。社会的、環境的、経済的基準について定めた国際フェアトレード基準を満たしていることをこのラベルは表しています。
黒いラベルと白いラベルの2種があって、それぞれ性質の違いがあります。日本で多く普及しているのは黒いラベルの商品です。社会・環境・経済の基準は勿論、企業が1つの商品からフェアトレードに取り組むときに、その商品に出来る限り多く、フェアトレード原料を含めることも基準となります。具体的には、例えば原材料全体の20%以上の重さがフェアトレードでないといけないといった細かな基準も。
一方で白いラベルは、企業が全社としてフェアトレード原料の調達量の目標を設定し、将来的により多く貢献をすると宣言した際に、その商品に表示されます。企業全体としてのコミットがある代わりに、1つのフェアトレード商品あたりに含まれる認証原料の量などは柔軟に設定できます。つまり、製品単位でフェアトレードの原料を多く活用しているのが黒いラベルで、企業単位でのフェアトレードのコミットメントをしている場合が白いラベルになります。
認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン 事務局長
潮崎 真惟子さん
「デロイト トーマツ コンサルティング」を経てオウルズコンサルティンググループにてマネジャーを務める。コンサルタントとしてはサステナビリティ戦略や人権デュー・ディリジェンス等を多数担当。2021年より現職。『児童労働白書2020 ―ビジネスと児童労働―』執筆。一橋大学経済学部卒・経済学修士(地域開発)。
コーヒーやチョコレート、ファッションなどさまざまなジャンルの商品があります。
・フェアトレード認証ラベル付き商品買いものをする際に覚えておきたい8つのキーワードを中心に、サステナブルな買いものを楽しむガイドとしてご活用いただけるページです。
・SUSTAINABLE SHOPPING GUIDE「サステナブルなお買いもの」とは、環境や人権に対して十分に配慮された商品やサービスを選択して購入することです。もっと詳しく知りたい方は過去の記事もご覧ください。
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