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母乳はいつから出る?出ない原因と分泌を促進させる方法【助産師監修】

妊娠

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2023/2/6

この記事では、母乳がいつから出るのか、出ない場合の原因と対処法などを解説しています。母乳が軌道に乗る時期などは個人差があるため、焦らずに楽な気持ちでいるようにしましょう。正しい授乳方法も解説しているので、ぜひ参考にしてください。

この記事の監修者

バースコンサルタント・助産師

古市菜緒さん

助産師として1万件以上の出産に携わり、7千人以上の方を対象に講師を務める。その他、妊娠・出産・育児に関する刊行物・商品・サービスなどの監修、産院のコンサルなどを行う。2児の母。

出産を控えているママの中には、「母乳が本当に出るのか」「いつから出るのか」など不安に思っている方もいるでしょう。実際、母乳の出方には個人差があり、母乳育児が軌道に乗るまでにかかる時間もそれぞれ違います。今回は、母乳がいつから出るのか、出ない原因にはどのようなことが考えられるかなどについて解説していきます。育児をスムーズに始めるためにも、ぜひ参考にしてください。

母乳がつくられる仕組み

妊娠すると胎児と母体を守るために「プロゲステロン」というホルモンが働き、母乳を作る乳腺を発達させます。しかし、このホルモンは母乳の分泌を抑える役割もしているため、妊娠期間中には母乳の分泌がみられません。

出産すると、「プロゲステロン」を分泌していた胎盤がなくなり、母乳の生成を促す「プロラクチン」と、母乳を乳腺から押し出す「オキシトシン」というホルモンが活発に働きます。そして、これら2つのホルモンのおかげで母乳の生成が盛んに行われるようになります。

産後2日までは、胎盤由来のホルモンである「プロゲステロン」が体内に残っているため、母乳の分泌はさほどみられません。しかし、出産直後からおっぱいを吸わせ、乳頭に刺激を与えることで、「プロラクチン」と「オキシトシン」が大量に分泌され、母乳をたくさん作り始めます。そのため、産後2日以降からは徐々に母乳の分泌が増えてくるようなります。

参考
前橋協立病院「母乳育児」

母乳はいつから出る?軌道に乗る時期は?

「出産すれば、すぐに母乳が出る」と思っているママもいるかもしれません。しかし、母乳が出始める時期や母乳が安定して出てくる時期は個人差があり、時間がかかる場合もあります。ここからは、母乳の出方について詳しくお伝えします。

母乳はいつからどのくらい出る?

一般的には、産後2~3日目から母乳が出始めるママが多いとされています。

妊娠するとママの体は母乳を出す準備をするために、妊娠初期から乳腺が発達しはじめるといわれています。ママの中には、妊娠が発覚した時期ぐらいに、胸が張って痛かったという方もいるでしょう。

出産を終えた後、ママの体に残っていた胎盤由来の「母乳分泌を抑えるホルモン」が徐々になくなります。同時に、出産直後から赤ちゃんがおっぱいを吸い乳頭に刺激を与えることで、「母乳を生成するホルモン」が分泌されます。そのホルモンの影響が逆転する時期が産後2~3日後になるため、母乳が出始める時期も産後2~3日目が多いのです。

母乳育児が軌道に乗るのは産後1~3か月頃

母乳の出方には、体質や授乳経験、育児環境などにより個人差がありますが、一般的に母乳育児が軌道に乗るのは、産後1~3か月頃といわれています。

母乳の分泌を促す一番の方法は、赤ちゃんが欲しがるたびに授乳する「頻回授乳」を行うことです。母乳はミルクとは異なり、飲ませ過ぎを気にする必要はありません。赤ちゃんが飲みたいときに飲ませても良いものです。出産後しばらくは、母乳の分泌量や赤ちゃんが飲める量が少ないため、ミルクを与えていない赤ちゃんは、3時間も空かずにおっぱいを求めるでしょう。そのため、1日20回前後の授乳をすることもあります。このように、乳頭への刺激を多く与えることで、母乳の生成がスムーズに行われるようになってくるのです。

母乳の分泌量が増えてくると、赤ちゃんがおっぱいをくわえただけで母乳が反射的に作られ、必要分の母乳が分泌されるようになっていきます。そして軌道に乗れば、赤ちゃんの泣き声を聞いただけでも、ママの体が反応して母乳の分泌がみられるようになります。

妊娠中から母乳は出る?

妊娠中に、乳頭から「母乳のような分泌物」が出ることがありますが、厳密にいうとこれは母乳ではなく乳汁とよばれるものです。乳汁の分泌は、乳管が開いたサインでもあり、出産後のスムーズな母乳分泌が期待できます。授乳経験がある経産婦さんや、初産婦さんでも妊娠後期になるとこの乳汁分泌がみられるようになります。

乳汁や乳頭の分泌物が増えると、妊娠前にはみられなかった「乳垢」という白いカスが乳頭につき始めます。そのまま放置しておくと乳管の詰まりや、母乳の分泌を妨げてしまう可能性があります。そのため、妊娠中期に入ったら、1週間に1回ほどを目安に、自分で乳頭チェックを行いましょう。もし、乳垢が溜まっているようであれば、乳頭を刺激しすぎないように、オイルを浸み込ませたガーゼなどでやさしくふき取ってください。乳頭に強い刺激を与えてしまうと、子宮の収縮を起こす可能性が高くなってしまうため 、乳頭の扱いは丁寧に行いましょう。なお、切迫早産の方は乳垢のケアを行わないでください。

母乳育児のメリットは?

母乳育児は、赤ちゃんとママのどちらにとっても、多くのメリットがある栄養方法です。ここではその多くあるメリットの中でも4つのメリットに絞って詳しくお伝えします。

赤ちゃんにとって栄養・免疫物質が豊富

母乳は、赤ちゃんにとって最適な栄養です。母乳はミルクとは異なり、ヒト由来のたんぱく質などが含まれているため、消化吸収に優れています。また、赤ちゃんに必要な成分を多く含むだけではなく、赤ちゃんの成長に合わせて母乳の成分も変化するため、その月齢に必要な最適な栄養素を与えることができるのです。

さらに、母乳にはママ由来の免疫物質も含まれているため、免疫機能が未熟な赤ちゃんを、さまざまな感染症から守ってくれます。特に、母乳が分泌しはじめるときに見られる「初乳」にそれらの免疫物質が豊富に含まれているため、出産後から少量でも母乳を与えることは、とても大切です。

赤ちゃんの口周辺の筋肉が発達

母乳は乳頭を口に含むだけでは分泌してくれません。赤ちゃんの唇・あご・舌のたくみな動きによって乳頭から分泌されます。そのため、母乳育児の赤ちゃんは、ゴム製の乳首でミルクを飲むときと比べ、口周辺の筋肉をたくさん動かしています。おっぱいを吸うことは、離乳食を食べる力や表情筋、言葉を話すための筋肉を鍛えることにもつながるのです。

また、赤ちゃんの口は敏感であり、動かすことで脳を刺激します。母乳育児は、その大事な口の筋肉を活発に動かすため、脳の発達を促す効果があるといわれています。

ミルク代がかからない

完全ミルクで育児をする場合、ミルクの購入回数が想像以上に多くなって、驚かれるママ・パパもいらっしゃいます。さらに、お子さんの成長とともに買い替えていく、哺乳瓶や消毒用品などの出費も必要です。反対に、母乳育児の場合は、ミルク作りや後片づけなどをする必要がないため、経済的かつ、手間がかからない栄養方法ともいえます。

ママの乳がん予防につながる可能性がある

国立がん研究センターの調査*において、母乳を飲ませる期間が長い人は、そうでない人に比べて乳がんのリスクを低下させる可能性があるという結果が報告されています。乳がんの発症には「エストロゲン」というホルモンが関わっていますが、母乳を与えるとエストロゲン値が低くなるため、乳がんのリスクを低下させる可能性があるとされているのです。

また、出産後におっぱいを吸われることで、子宮の収縮や悪露の排出が促され、子宮を妊娠前の状態へ回復させることにつながります。さらに母乳育児によって、ママの体はいつもより多くのエネルギーを消費するため、その結果、産後太りを防ぐことが期待できます。

*出典:国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所予防関連プロジェクト「授乳と乳がんリスク」

母乳が出ない原因は?

ママによっては、母乳がなかなか出ないということもあります。母乳が出ない原因としては、以下のことが考えられます。

・おっぱいを吸わせる回数が少ない
・赤ちゃんのおっぱいの含ませ方が悪い
・乳頭の形などが原因で、乳頭にうまく刺激を与えられていない
・育児などによるストレス
・栄養不足や水分不足
・ママの体が冷えていて血行が悪くなっている など

母乳が安定して分泌されるためには、授乳方法や食生活、そしてママの心身の余裕も大切なのです。

母乳が出ない原因などについては「母乳が出ない原因は?母乳の分泌を促す4つの方法も解説|助産師監修」の記事で詳しく説明していますので、ぜひ参考にしてください。

母乳の分泌を促進させるマッサージの方法を紹介

母乳の分泌を促すためには、乳頭状態を整える「乳頭マッサージ」がおすすめです。
出産前から乳頭マッサージで乳頭を柔らかくし、伸びをよくしておくことで、赤ちゃんが吸いやすいおっぱいを作ることができます。そのため、臨月を迎えたら、医師から止められていない限り、積極的に乳頭の刺激やマッサージを行いましょう。出産までに、少しでも乳管を開かせることで、産後の母乳分泌がスムーズになることも期待できます。

産前・産後の母乳マッサージについては、「正しい母乳マッサージのやり方。張り、しこりの対処方法を解説|助産師監修」の記事で詳しく説明していますので、ぜひ参考にしてください。

赤ちゃんへの正しい授乳の方法

母乳の分泌を促すために必要なことは、赤ちゃんの口に、乳首だけでなく乳輪まで含むように深くくわえさせることです。新生児への授乳や育児に不慣れなママたちは、深くくわえさせることが難しいと感じるでしょう。しかし、授乳姿勢を整えてあげることでスムーズな授乳ができるようになります。

新生児期の赤ちゃんの授乳姿勢の基本は、赤ちゃんの口とママの乳頭の高さを同じにし、赤ちゃんの体をねじらず、しっかりママの体に向き合わせることです。新生児期は、赤ちゃんが小さく首もすわっていないため、授乳クッションやタオルなどを使って赤ちゃんの高さを調節し、ママも負担にならないような授乳姿勢を整えてあげることが大切です。

授乳姿勢には、横抱きや縦抱き以外にも脇抱きや、添い寝授乳などがあります。お子さんの口の大きさや形、ママの乳房・乳頭の大きさや乳頭の形などで、深くくわえやすい授乳姿勢が変わるため、出産施設や助産師などからアドバイスをもらいましょう。

授乳姿勢や授乳がうまくいくコツについては、「正しい授乳姿勢とは?基本の姿勢や授乳がうまくいくコツを紹介!|助産師監修」の記事で詳しく説明していますので、ぜひ参考にしてください。

新生児の一回当たりの哺乳量

生まれて1週間までは、赤ちゃんの哺乳量が毎日変わります。目安としては、1回あたり(生後日数×10ml)+10mlですが、赤ちゃんの体重でも異なります。

<一般的な哺乳量の例>生後0~7日目
※新生児の体重によって変化します。
出生当日  10ml/回
生後1日目 20ml/回
生後2日目 30ml/回
生後3日目 40ml/回
生後4日目 50ml/回
生後5日目 60ml/回
生後6日目 70ml/回
生後7日目 80ml/回

生後8日目以降の新生児は、1日の哺乳量150ml/kgが目安となります。
例えば、3,000gの赤ちゃんであれば1日の哺乳量が450mlぐらいのため、1回60ml前後の哺乳ができることになります。

母乳の不足・飲みすぎのサイン

「母乳が足りていないのではないか」「または飲み過ぎてしまっているのではないか」と心配に思うママもいるでしょう。

空腹(母乳の不足)のサインとしては、おっぱいをあげた後にすぐ泣く、手を口元に運んでいき手を吸っている、おっぱいを吸うような口の動きをするなどがみられます。また尿や便の回数が少ない場合も注意が必要です。

また、母乳の飲みすぎのサインとしては、母乳を多めに吐き出す、不機嫌な様子を見せる、うなる、お腹が大きく膨れるなどが見られます。
なお、母乳の吐き戻しをした際の対処法は、「新生児の吐き戻しの原因と対処法・予防法を解説!助産師監修」の記事でも詳しく解説していますので、お悩みの方はご覧ください。

母乳量は目では見えないため、赤ちゃんの様子から母乳が足りている・足りていないかを判断していく必要があります。なかには、搾乳をして母乳量を測る方もいますが、「自分で搾乳できる量」と「赤ちゃんが実際飲む量」は全く違う場合もあるため、おすすめはできません。

どうしても母乳量を知りたい場合は、赤ちゃんの体重をグラム(g)単位で測ることができるスケールをリースなどで用意し、授乳前(おむつ交換後)と授乳後(おむつ交換前)の赤ちゃんの体重を図って母乳量を出してみるといいでしょう。保健施設やショッピングモールの子育てサポート施設にはスケールが常設されていることが多いので、そこで測ってみるのもおすすめです。

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母乳を与える時間は、ママになったことをより実感し、なんとも言えない幸せな気持ちにもさせてくれます。しかし、母乳の出方や、安定する時期は個人差が大きいため、人によっては軌道に乗るまで根気がいるかもしれません。母乳育児を希望しているのであれば、妊娠期間中にできる乳頭の手入れやマッサージを行い、授乳をしている姿を想像していきましょう。もし、思うとおりにいかなくても、母乳だけに囚われるのではなく、ミルクの力も借りて、心に余裕のある状態で育児をされてくださいね。

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