EARTH MALL with Rakuten Magazine 未来を変える読み物

2023/1/16更新

愛媛の旅で出会った、サステナブルなものづくり。

瀬戸内海に面した四国・愛媛県は穏やかな気候と自然に恵まれていて、山海の幸に恵まれた食文化、歴史を感じるレトロな街並み、流れているゆるやかな時間、人のあたたかさや優しさがじんわり心に沁み入ります。EARTH MALL(アースモール)編集部は、そんな愛媛の魅力をさらに深掘りするために、クリエイターとサステナブルなものづくりをする人たちを訪ね、旅をしました。3つの旅を通して出会ったもの、人、文化の魅力 をお届けします。

城下町を歩き、大洲の歴史や文化を辿る。

「伊予の小京都」と呼ばれる城下町「大洲」には、風情のある歴史的な建造物が残っています。分散型ホテル「NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町」、愛媛の原材料を使って作った旨みの深い醤油をはじめとする銘品など、EARTH MALL編集長の平井江理子がその魅力を紐解きます。

大洲の名品に出合うことで、旅の愉しみが広がっていく。

大洲の路地裏や商店街をぶらりと歩き、大洲の名品に出合うのは、旅の楽しみのひとつ。地元の人から直接話を聞いて、買い物をすることで、その街の輪郭や生産者たちの取り組みが“見えてくる”ことが多いにある。

おはなはん通りから大洲城と並ぶ、大洲の観光資源で重要文化財の「臥龍山荘」に続く道沿いには、15年以上古民家だった空き家を改修した「OZU+」というセレクトショップがある。店舗は1階にあり、2階には「NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町」が。「OZU+」では、“生まれも育ちも大洲”というルーツを持つ山鬼(やまき)育子さんが、大洲由来の商品、愛媛のサステナブル商品を自らセレクトし、販売。そして、大洲産原材料を使用した商品開発にも力を入れている。そうした、一つひとつのものづくりの背景を対面で伝えることに、やり甲斐と意義を強く感じているという。

(写真左から)オーナーの山鬼育子さんとアースモール編集長の平井江理子。山鬼さんは前職で今治タオルメーカー「IKEUCHI ORGANIC」の営業や広報を担当していた。
「IKEUCHI ORGANIC」で働いていた際に、環境配慮や安全性にこだわった 商品を取り扱っていたことがきっかけで、サステナビリティへの意識が高いプロダクトを使うことに目覚めた、と語る山鬼さん。気になった商品について、質問をすると、ものづくりの背景を丁寧に教えてくれた。

普段、使っているものを身体にいいもの、

環境に優しいものに切り替えること。

「この店は、とても小さいので、商品のことをじっくりとお客様に伝えられるところがいいところだと思います。ちなみに、愛媛県人の感覚では、“みかんとタオルはもらいもの”という感覚があるのですが、ものづくりの背景をお客様に丁寧にお伝えすると、商品について興味を持ってくださるんです。例えば、オーガニックコットンを使ったタオルやサウナで使用するために作ったタオルだったり、みかんを使ったユニークな調味料だったり。そうして、じっくりお話をさせてもらうと、普段、使うものを意識して、愛着が持てるものに変えてみよう、と思ってくれる人が多くて。観光客の方から地元の方まで、様々な方が利用してくださるのも嬉しいことです」と山鬼さん。

(写真左から)イギリスのコーヒー専門会社「MINOR FIGURES」が、コーヒーを美味しく飲むために作った植物由来のオーツミルク。「OZU+」のスペシャルブレンドは、「Mountain stream coffee house」とのコラボレーション。大洲の街の佇まいをイメージして、重厚で深みのある味わいにこだわった。
山鬼さんとの会話が膨らみ、平井さんがサステナビリティへの想いを語り出す。
「このオーツミルクは、『アースモール』でも取り扱っている商品です。こちらの商品をセレクトされていることに共感しましたし、そのほかに取り扱っている商品も、どれも深掘りしてお話をお伺いしたいものばかり。私も、日常を豊かにするサステナブルな商品をご紹介する仕事をしているので、山鬼さんのご活動スタイルにシンパシーを抱いています。これまでにサステナブル商品をたくさん探してきましたが、まだ出合ったことがない商品がたくさんあり、心動かれました。いち、生活者として『サステナブルなものってなんだろう?』と、普段の生活でよく考えているのですが、昔から受け継がれてきた文化や風習を見つめ直したり、日用品や食べものがどんな原料で作られているのか、安全なものかどうかきちんと確認したり、自分なりに見極めて、買い物をすることも大切なことだと思うんです。そういったことが習慣化して、暮らしに浸透たら、日常そのものが楽しくなるように思います」

「IKEUCHI ORGANIC」とコラボレーションして作った、刺繍入りオーガニックタオルハンカチ。大洲城、大洲の銘菓、鵜飼いの鵜など、大洲にちなんだモチーフが刺繍されている。

取り扱っている商品は、国内外への発送を受け付けている。みかんを塩漬けにして熟成した調味料、「ミヤモトオレンジガーデン」の“塩みかん”をはじめ、心と体を満たしてくれるもの、地球や環境にもやさしいものを厳選して紹介している。

平井さんの話に頷き、山鬼さんが自身の仕事について語る。
「自分自身、ものづくりの現場を訪れて、どういう風に作られているかを知ることはとても意義深いことに思います。そして、大洲からサステナブルな商品を海外に発信し、届けていきたいという想いがあります。そうしたアクションによって、大洲を知ってもらって、旅をする方が増える、という循環をつくっていきたい、と考えています」
店をオープンして1年過ぎたいま、山鬼さんが抱く大きな夢は、大洲が「サステナブルな街」になること。そのために大切にしたいのは、コミュニケーションを通して、多くの方の日常に寄り添える、特別ないいものを愛情込めて届けていくこと。「OZU+」を訪れるたびに、生活を豊かにしてくれるお気に入りが、きっと見つかるだろう。

INFORMATION

住所: 愛媛県大洲市大洲393
TEL:0893-24-6710
営:10:00-17:00
休:火/水
instagram:https://www.instagram.com/ozu.plus/

「OZU+」でも取り扱っている人気商品のひとつに、大洲に醤油蔵を構える「梶田商店」の醤油がある。明治の時代から続いている、100%自社醸造しているこだわりの醤油蔵だ。大洲の旅の終わりには、地元の人の間で老舗として語り継がれている「梶田商店」を訪ねることに。いざ、店内に足を踏み入れたその瞬間に、醤油の香ばしい香りが鼻腔をくすぐる。

愛媛県といったら、“甘い醤油”が特徴と言われているが、梶田商店の醤油は、そうした一言でくくれない、舌にじんわりと広がっていくまろやかな旨みと深い香りが支持されている。その際立った美味しさが、県外の名だたる料理人に届き、和洋問わず、さまざま料理に使われているという。梶田商店の13代目、梶田泰嗣さんは語る。

体や地球環境に負担のない原料の選定にこだわって、

自社醸造すること。

「全国各地の様々な醤油を見ていると、添加物を加えて味をまろやかにしたり、砂糖を使って甘くしたり。そういう醤油屋が結構多い印象があります。実は、ちゃんと自社醸造で醤油を作っているところはそう多くないんです。とはいえ、自社醸造しているからいい醤油、という単純なことではなく、何よりそのやり方が大事だと思っています。僕らは、原料である大豆・小麦・塩の選定にこだわり、原料処理・麹造り・諸味の管理を全て自分たちで行っています」
地元の契約栽培農家より取り寄せ、大豆はフクユタカ、小麦は愛媛県産のミナミノカオリ、セトキララ、塩は徳島県鳴門産の海水を汲み上げたものを原料として使用している。
「地元の人たちに支えられて、醤油作りを行ってきたという実感があり、地元の契約農家の方から良質な原料を調達することを意識的に行っています。やはり、食べたもので人間の身体ができていると思うので、農薬や化学肥料は使用せず、環境に負荷がない原料のみを使用したい。諸味には、酵母添加も酵素添加も行わず、天然醸造で1年6ヶ月〜2年。長期醸造で手間と時間をかけて作っています。祖父や父の代では、アミノ酸や添加物を使って、“美味しさを科学”するアプローチで醤油を作っていた時代もありました。僕の代になって、どんな醤油を作っていきたいのかを自問自答したときに、添加物を使わずに、自然に寄り添ったものづくりをして美味しいものが作れたならば、それが一番、いい、という結論に至って。僕は、そこに体が求めるもの、体が喜ぶものがあると思っています」
そうした考え方で醤油作りを行うことは、作業的にも、営利的にも、決して、効率が良いとは言えない。だが、梶田さんは、美味しいものを届けたら、社会が良い方向に向かう、と信じている。だから、大変な仕込み作業に汗を流すことを繰り返し、やり続けられるのだ。

100年以上前から受け継がれてきた杉桶を使い、天然醸造している。ひとつの桶に対して、2,400ℓ程度の醤油が出来上がる。桶ごとに仕込み年月日、原材料の品種、生産地(生産者)、 諸味の状態など徹底管理している。

醤油の諸味を混ぜる際に2m以上の長さの櫂棒(かいぼう)を使って、空気を送り込む。そうすることで、微生物の発酵が促される。季節ごとの発酵の様子を丁寧に観察しながら攪拌作業を行う。

いい菌が住み着く杉桶で、諸味を発酵熟成させる。

梶田さんの間近で攪拌作業を見学させてもらった、平井さん。相当な力が必要であることに衝撃を受けていた。実際、醸造に杉桶を使うことでどんな影響があるのだろうか。
「なぜ、桶がいいのかと言うと、上手に管理をすることが出来たら、桶にはいい菌が住み着いてくれるという特徴があるから。実際、上手くいったら、その後に仕込みがしやすくなり、美味しい醤油が造りやすくなります。例えば、ステンレスのタンクは、仕込みのたびに綺麗に掃除したら、菌がなくなってしまうんです。それに、ステンレスやホーロー、FRPやコンクリートのタンクは、原材料がどんなものか見えづらいですし、感覚的にもなんだか味気ないように思えます。僕は自然に対して畏敬の念を持っていて、太古の時代から存在する素材を使うのが至って、自然なことに思えるんです。木材特有のあたたかさに心が落ち着きますしね。毎日使う道具は、心情的なところにも作用するものだと思うので、気持ちが乗るものを使うのがベストだと感じています」
醤油蔵で梶田さんのお話を伺った平井さんは、醤油に対するイメージが大きく変化したという。
「普段、醤油に関して、無農薬の原料を使用しているかどうかは気にしていましたが、天然醸造か否か、仕込み方については細かく気にしたことがなく、とても勉強になりました。今回、購入させてもらった、“再仕込み醤油 梶田泰嗣”は4年かけて作られていると知り、とんでもない手間ひまをかけて造られていることに、正直、驚きました。こちらの醤油は『水で薄めても美味しく飲める』と教えてもらい、実際にやってみたところ、水で割っても醤油の味がしっかりしていて。口の中になめらかに旨みと風味が広がっていく、上質な味わいを堪能し、とても豊かな気持ちになりました。1滴の質量に味が凝縮されていて、醤油自体ののびがよく、少ない量で味が決まるんですよね。さらに、この醤油は、旨みが強い食材に数滴つけて、焼き上げると、油を洗い流してくれるような力があるそうで。また、変化球として教えてくださった食べ方には、“アイスクリームに醤油をかけていただく”というユニークなものも。これから色々と試してみたくなりました」

(写真左より)地元大洲産の古代麦ダイシモチを使用した小麦不使用の天然醸造丸大豆醤油“巽紫”(たつみむらさき)。大豆・小麦は、契約農家の農薬・化学肥料不使用のものを使用した“巽晃(たつみひかり)”。大豆と小麦を天然醸造にてふた夏以上熟成。その後に、 生(なま)醤油に再び醤油麹を仕込み、さらにふた夏以上熟成させた再仕込み醤油“再仕込み醤油 梶田泰嗣”。
誠実な仕事によって生み出された、熟成された旨みの深い醤油の数々。 料理のメニューによって、使う醤油を変えることで、その味わいがぐっと豊かに引き上がっていく。この特別な醤油と出会う濃密な時間を、楽しんでみてはどうだろう。

前編はこちら >

INFORMATION

住所: 愛媛県大洲市中村559
TEL:0893-24-2021
営:8:00-17:00
休:第2土/日/祝日/年末年始
HP:https://www.kazita.jp/

Photo by: Tetsuya Ito Edit & Text by : Seika Yajima

クーポン獲得・利用期間 |2023年10月2日(月)10:00~2023年11月2日(木)09:59
愛媛の旅で出会ったサステナブルなものづくり

砥部:前編 後編
大洲:前編 後編
宇和島



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