イタリア料理や前菜の定番食材・生ハム。しかし、「妊娠中は生ハムを食べてもいいの？」と疑問に思う方もいるでしょう。また、知らずに生ハムを食べてしまい、後から心配になる方もいるかもしれません。ここでは、妊婦が生ハムを食べるリスクや、安全に食べられる調理法について詳しく解説しています。

妊婦は生ハムを食べちゃダメ？

結論からいうと、妊婦が生ハムを食べるのは避けたほうがいいでしょう。厚生労働省のサイト*でも、生ハムは妊娠中に避ける食品として注意喚起がされています。
その理由としては、これからお伝えするトキソプラズマなどへの感染リスクがあるからです。

しかし、生ハムを加熱処理・加熱調理すれば、感染リスクのある菌が死滅するため、妊娠中の摂取も可能になります。また、日本の大手メーカーから販売されている生ハムは、基本的に感染リスクの高い生肉ではなく加工肉が使用されています。そのため、もし妊娠期間中に、加熱調理された生ハムや、市販の生ハムを少量食べてしまっても、心配し過ぎることはありません。

※出典：厚生労働省「これからママになるあなたへ 食べものについて知ってほしいこと」

妊婦が生ハムを食べない方が良い３つの理由

妊婦が生ハムを食べない方が良い理由として、妊婦が感染すると危険なリステリア菌やトキソプラズマ（寄生虫）への感染、塩分の取り過ぎによるリスクがあげられます。
ここでは、それぞれのリスクについてさらに詳しくお伝えします。

リステリア菌への感染リスク

リステリア菌とは、自然界の至る所に存在する細菌で、塩分に強く冷蔵庫保管でも繁殖する菌です。生ハム以外にも、肉や魚のパテ、スモークサーモン、ナチュラルチーズからも検出されており、これらの食品も妊婦が避けた方がよい食品とされています。

生ハムは豚肉から作られるハムで、伝統的に空気中で乾燥・熟成させるという方法で製造されます。また、これらは生で食することが一般的であり、加熱調理をしないことが多いため、リステリア菌による感染リスクが高くなってしまうのです。

妊娠中の女性は、一般の健康成人と比べてリステリア菌への感染率が20倍高いといわれており、主な症状には発熱、頭痛、吐き気、嘔吐、下痢などがあります。また、まれではありますが、胎盤を通して胎児感染を起こすこともあります。胎児感染を起こしてしまうと、流産や死産、新生児の低出生体重や敗血症、髄膜炎などの危険性があるため注意が必要です。

トキソプラズマへの感染リスク

トキソプラズマとは、多くの哺乳類や鳥類が持っている寄生虫で、生の肉や加熱が不十分な食品から感染するため、生ハムも対象の食品となります。

ママが妊娠中初めてトキソプラズマに感染した場合、抗体がないため、まれに母子感染を起こすことがあります。
母子感染を起こすと、流産、死産、先天性トキソプラズマ症候群の症状である胎児の脳や目の異常、発達障害、神経学的障害などの影響が出てしまうことがあります。

日本の女性はトキソプラズマに感染したことがある人が少なく、多くの方が免疫（抗体）を持っていないことが報告されています。過度に心配する必要はありませんが、感染が心配な方は医師に相談してトキソプラズマ抗体検査をするとよいでしょう。

むくみ・妊娠高血圧症候群のリスク

妊娠中は、体がむくみやすい状態です。生ハムのような塩分が多い食品を摂取してしまうと、さらに体内に水分をためこんでしまい、むくみを悪化させてしまいます。
またこの症状が続いてしまうと、体重増加への影響や、妊娠高血圧症、胎盤機能不全などによる胎児の発育不全などを起こす可能性があります。

どうしても生ハムが食べたい場合の対処法は？

妊娠中に、どうしても生ハムを食べたいと思うこともあるかもしれません。生ハムは、加熱調理をし、過剰摂取しなければ妊娠中でも食べることはできます。しかし、購入の際は以下の点に注意をしましょう。

製造過程の衛生管理が徹底されているか確認する

生ハムは生肉を加工して作られるため、製造過程で細菌やウイルスが混入する可能性があります。製造過程の衛生管理が徹底され、安全性が確保されているメーカーや製造元の製品を選ぶと安心でしょう。

賞味期限や消費期限を確認する

生ハムは鮮度が大切です。購入する際には、賞味期限や消費期限を確認し、なるべく新鮮なものを選ぶようにしましょう。
また、開封したらすぐ使い切ることも大切です。調理や保存の過程でも、リステリア菌やトキソプラズマの影響を受ける可能性もあるため、なるべく新鮮な状態で使い切ってください。

塩分の含有量をチェックする

生ハムには塩分が多く含まれています。食べ過ぎは体に負担がかかり、妊娠高血圧症などの病気を発症することもあります。妊婦は特に塩分量に注意する必要があるため、塩分の含有量を確認し、なるべく塩分が控えめのものを選ぶように心がけましょう。

加熱処理をする

生ハムで心配なリステリア菌やトキソプラズマは、加熱することで死滅します。生ハムをサラダなどと一緒にそのままの状態で食するというのは避け、炒めてパスタの具材にする、パンに乗せて焼くなどして、確実に加熱をすると安心です。
外食の際は、生ハムの加熱を確実に依頼できる場合を除き、避けるのがベターでしょう。

妊娠中に生ハムを食べてしまったらどうすればいい？

妊娠中に生ハムや生肉などのような注意が必要な食品を食べてしまった場合は、一度かかりつけの医師に相談しましょう。また、嘔吐や下痢といった食中毒症状などが現れた場合は、すぐに病院を受診してください。

特にトキソプラズマ症への感染が心配な方は、トキソプラズマの抗体検査を受けることができます。感染の可能性がある場合は、胎児への影響を抑えるためにも抗生物質の投与が必要になるため、早めの受診がおすすめです。

生ハム以外で妊娠中に注意する必要がある食べ物

妊娠中は、生ハム以外にもいくつか注意すべき食品があります。ここでは、代表的な食品をご紹介します。
また、より詳しく知りたい方は、「妊婦が食べてはいけないもの一覧！摂取量＆注意点も│管理栄養士監修」の記事も参考にしてください。

・サラミ、加工肉
サラミなどの加工肉は非加熱処理の場合があるため、トキソプラズマが含まれている可能性があります。そのため、生ハム同様、感染や食中毒に注意が必要です。
また、ベーコンやウィンナーなどの加工肉は加熱調理して食べることが多いため、心配はいりません。しかし、塩分や脂質の過剰摂取につながるため、食事に使用する際は量に注意が必要です。

・生肉や卵
生肉（牛肉、豚肉、鶏肉など）や生卵には、サルモネラ菌やリステリア菌などの細菌が含まれている場合があり、食中毒や感染症の危険性があります。肉、卵を食べるときは、十分に加熱調理しましょう。
生卵のリスクについては、「妊婦さんは生卵を食べちゃダメ？生卵に潜むリスクや食べる際の注意点とは【産婦人科医監修】」をご覧ください。
また、素手で生肉を触ってしまうことも感染の原因となります。安全性を高めるためにも、調理時の手洗いや、使ったまな板・包丁などの消毒もしっかり行ってください。

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生ハムは、加熱調理をし、過剰摂取しなければ、妊婦でも摂取して大丈夫です。その他の気を付けないといけない食品でも注意は必要ですが、もし少量摂取したとしても、焦らずかかりつけの医師に相談していきましょう。妊娠期間中、食事制限が多いとストレスを感じるママもいるかと思います。健やかで楽しいマタニティライフをおくるためにも、食事以外の楽しみも見つけて気分転換をしてみてくださいね。

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