2022/2/9更新
クリエイターや生産者をはじめ、暮らしを楽しむスペシャリストが「楽天市場」の中から選んだサステナブルな日用品や愛用品をエピソードとともに紹介していく、連載「みんなのサステナブル」。第1回目のゲストは、「ビームス ジャパン」のクリエイティブディレクターを務める鈴木修司さん。日本各地の銘品やものづくりの現場に精通する、鈴木さんの考えるサステナブルな買いものとは?
鈴木さんが暮らす土地は、山と海に囲まれた静かな街、鎌倉。大きなビルが立ち並ぶ都心とは異なり、自然を身近に感じられる土地柄です。それゆえ、時間の流れもゆったりで独特なのどかさがあります。高台に位置する鈴木さんの一軒家の裏には山があり、風の抜けが心地よい住環境に。聞けば、土地選びから家の構造、建具のパーツまで自身で決めたそう。内装は「日本民藝館」のような趣があり、鈴木さんが大切にしてきた民芸品や手仕事で作られた道具や置物が点在しています。
仕事でもプライベートでもたくさんの魅力的なクラフトに出合ってきた鈴木さん。日常的に愛用しているものも日本国内で作られたつくりのいい民芸品や銘品ばかりだといいます。
愛知県有松町で作られている「板締め豆絞り」。屏風だたみにして板ではさみ染めされたもの。この手法は江戸時代の頃から広く行われていた絞り方だと言われています。
>戸田屋商店 梨園染 手ぬぐい 板締め豆絞り「僕は手ぬぐいが好きでタオルやハンカチ代わりに使っています。家にあるのは50枚ほど。この豆絞り手ぬぐいは民芸品店で購入しました。写真右のものは既に5年以上使っています。だいぶいい感じに経年変化が出てきました。汗っかきで夏場は首まわりや胸元に汗がジワリと出てきてしまうので、手ぬぐいを首に巻いてケアすることが多いです。『楽天市場』でも取扱いがありますね。有松は『有松絞り染め』の産地として約400年以上の歴史があるエリア。数多ある手ぬぐいの中でも一番のスタンダード、と言ってもいいデザインで豆のにじみ具合が愛らしいところが気に入っています」
銭湯に行くときは手ぬぐいに石鹸をつけて体を洗うこともあります。夏場は銭湯帰りにビュンビュン振り回しているとすぐ乾くんですよ(笑)。旅先で活躍することも多いですね。
「使用感がだいぶ出てきたら1/2か1/4のサイズにして布巾として使うこともできます。とても長持ちするし、さまざまな使い方ができるので重宝しています」
手ぬぐいの使い方について愛情を込めて語る鈴木さん。ほかに集めているクラフトには、うちわがあるそう。
熊本県・来民の伝統を受け継ぐ唯一の工房「栗川商店」。小ぶりで柄が長く、手にしたときにすっと馴染むつくり。薄茶色の和紙素材が涼しげな印象に。使い込むほどに味が出ます。
>栗川商店 来民渋うちわ 小丸「我が家は高台に位置していて環境的に涼しいので冷房を設置していません。だから、夏はうちわが大活躍。1階〜2階の至るところ置いてあります。この『来民(くたみ)渋うちわ』は会社の事務所でも使っているもの。ペンスタンドに差しておけるコンパクトさも気に入っています」
熊本県の北にある山鹿市の鹿本町来民(かもとまちくたみ)。この辺りでは400年以上前から竹うちわ「来民渋うちわ」が作られ、京都、香川と並んでうちわの“三大産地”としても知られています。
「『山鹿灯籠祭り』という熊本県山鹿市で夏に行われる祭りがあります。手すき和紙と糊だけで作られる立体的な紙細工の工芸品の山鹿灯籠を頭に掲げた女性が舞い踊る祭りです。祭りとともに、このうちわも伝統として受け継がれてきたものですね」
熊本県山鹿地方では、江戸時代初期より紙の原料である楮 (こうぞ) の栽培が行われていて、紙すきの技術が子孫にも受け継がれ、山鹿灯籠が発展したといいます。
「『来民渋うちわ』は1本の竹でうちわの骨を作って和紙を貼る伝統的な手法で作られています。とても丈夫ですでに10年以上使っていても壊れない。まだ作り手の方にお会いできていないので、いつかコラボレーションできたらいいな、と思っています」
暮らしにそっと寄り添い、馴染むものを選ぶこと。自ら使うことでそのものの魅力を発信し、文化の継承の一端を担うこと。そうした営みは鈴木さんの暮らしの基本になっていて、仕事にも分かち難く結びついているようです。
東北三大祭りとして知られる「青森ねぶた祭り」の色彩を8色のガラスで表現。食卓に夏らしさと華やかさを添えてくれる目にも楽しいデザイン。光がガラスに当たったときに美しい表情を見せてくれます。
>津軽びいどろ ねぶたタンブラー「青森の伝統工芸『津軽びいどろ』は『北洋硝子株式会社』が作っているもの。僕自身、仕事でものづくりを一緒にさせていただいたことがあり、現場にも足を運んだことがあります。漁業用の浮玉の製造からスタートした会社で、技術力の高さと品質の素晴らしさが評価されて、国内でも随一の製造会社に。その後、色ガラスの原料も自社で調合し、成形技術と掛け合わせた工芸品として『津軽びいどろ』を生み出したそうです」
ガラスの透明感と多彩な色が調和している様は、『ねぶた祭り』の華やかさや躍動感をみずみずしく表現しているかのよう。
「現場には腕利きの職人さんがたくさんいて分業しながら働いていらっしゃいます。ものづくりをするための環境、一度にたくさんの量を作れるシステムが整っているんです。日常で気兼ねなく使える値段で、品質やデザインに優れたものを作り続けていらっしゃる企業努力が本当に素晴らしいと思います。僕はこのタンブラーでお酒を飲みたい。焼酎の水割りが合いそうに思いますね。今回紹介した3つの商品をはじめ、日本には先進国の中でも日常使い出来る手仕事で作られた魅力的なものが残っています。その文化を絶やさぬよう、自分ができることを探していきたいし、ものを作る側の人間として、自分が使ってみていいと思ったものをお客さんにお勧めしたい。これからも愛着を持てるものを大切に使い続けていきたいと思います」
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