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新生児の吐き戻しの原因は?対処法と予防法も解説!【助産師監修】

赤ちゃん

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2023/9/29

赤ちゃんが母乳やミルクを吐き戻してしまうのは、飲み過ぎやうまくゲップができないことが原因としてあげられます。赤ちゃんの様子や吐いたものの状態によって対処法は変わってくるため、冷静な判断が必要です。この記事では吐き戻したときの対処法や予防法について詳しく解説していますので、参考にしてみてください。

この記事の監修者

バースコンサルタント・助産師

古市菜緒さん

助産師として1万件以上の出産に携わり、7千人以上の方を対象に講師を務める。その他、妊娠・出産・育児に関する刊行物・商品・サービスなどの監修、産院のコンサルなどを行う。2児の母。

赤ちゃんが吐き戻してしまうと、心配や不安に思ってしまうママ・パパも多いでしょう。赤ちゃんは授乳後に吐き戻しをしやすく、新生児期は特に多いのが特徴です。ほとんどの場合は様子をみても大丈夫ですが、なかにはすぐ受診をしないといけないケースもあります。
今回は助産師監修のもと、赤ちゃんが吐き戻しをしやすい原因についてお伝えするとともに、その対処法や注意すべきポイントについても詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

新生児の母乳・ミルクの吐き戻しが起こる原因は?

新生児の赤ちゃんが、飲んだ母乳やミルクを口から出すことはよくあります。それは、赤ちゃんの胃の機能が未発達だからです。そのため、低月齢の子ほど、飲んだ後に口の端からたらたらと吐く「溢乳(いつにゅう)」がみられます。
また、飲んだものをそのまま多めに吐いてしまう「吐き戻し」もみられます。この原因としては、胃が未発達であること以外に次のようなことが考えられます。

・ 母乳やミルクを飲み過ぎてしまう
・ 上手くゲップができない
・ 食道や胃などに何かしらの病気がある

それぞれの原因について、詳しくみていきましょう。

母乳やミルクを飲み過ぎてしまう

赤ちゃんは消化機能が十分に発達していない上に、「口の中に入ってきたものを吸う」という吸啜反射(きゅうてつはんしゃ)があります。そのため、お腹がいっぱいでも吸い続けてしまい、母乳やミルクを飲み過ぎでしまう場合があります。

また、赤ちゃんの胃は小さく垂直に近い縦型で、食道と胃の境目にある括約筋(かつやくきん)が未発達なことから、母乳やミルクを飲み過ぎてしまうと、簡単に溢入や吐き戻しをしてしまうのです。

赤ちゃんの授乳は個人差があるものの、ミルクの場合だと生後1~2か月の間は2~3時間ごとが望ましく、1日の哺乳量は、生後1か月で600~800ml程度、生後2~3か月で1,000ml程度とされています。

上手くゲップができずお腹に空気がたまり過ぎてしまう

赤ちゃんは授乳によって、空気もよく飲んでしまいます。その空気を排出しようとする際に、吐き戻しが見られるのです。くわえて、おっぱいの吸い付き方が浅い場合や、ゴム乳首がミルクで満たされないままの授乳は、より多くの空気を飲んでしまいます。授乳後にゲップを促してあげることは、胃の中の空気を排出させ、吐き戻しを防ぐことができるのです。

赤ちゃんの胃の特徴から、体を縦向きにしてあげないと上手く空気が排出できません。そのため、ゲップを出さずに授乳後すぐ寝かせてしまうと、吐き戻しが起きやすくなります。赤ちゃんの首がすわり寝返りもできるようになれば、体を動かすことで胃に溜まった空気を自分でも排出できるようになります。新生児や低月齢の赤ちゃんは、授乳後のゲップを心がけましょう。

赤ちゃんのゲップを出させる方法やコツについては「赤ちゃんにゲップをさせる方法とコツを解説!ゲップが必要な時期についても【助産師監修】」で詳しく解説していますのでぜひ参考にしてください。

肥厚性幽門狭窄症(ゆうもんきょうさくしょう)などの病気の可能性

「母乳やミルクの飲み過ぎ」「上手くゲップができない」などの原因は、赤ちゃんにとって生理的な現象で心配し過ぎることはありません。しかし、それらとは異なり、何かしらの病気が原因であることも考えられます。
嘔吐のほか、尿・便の回数が少なく体重増加がみられない場合は早めに医療機関を受診しましょう。

・胃食道逆流症
胃酸が食道へと逆流することで、ゲップや胸やけのような症状が出る病気です。生後2~6か月の頃は胃食道逆流症によるゲップがよくみられますが、生後7か月ころを過ぎると徐々に少なくなります。

・肥厚性幽門狭窄症(ゆうもんきょうさくしょう)
胃の出口(幽門)の筋肉が肥厚することで、母乳やミルクが胃の中に溜まってしまい、激しく噴水状に大量に吐き戻すのが特徴です。生まれつきの病気で多くは生後2~3週頃から3か月頃に症状が出現します。

・腸重積症(ちょうじゅうせきしょう)
腸の一部が腸の中にもぐり込んで重なってしまい、腸閉塞(ちょうへいそく)を起こす病気です。発生頻度が高いのは生後10か月前後ですが、生後3~4か月から4~5歳くらいの発症例があるため注意が必要です。

・胃軸捻転症 (いじくねんてんしょう)
胃がねじれてしまい、お腹がよく張る、おならが多くなる、吐きやすいといった症状がみられます。新生児期から発症しますが、たいていの場合は症状が軽く成長とともに自然に治ることが多いです。

新生児の吐き戻し対処法!母乳が気管に入ったらどうすればいいの?

赤ちゃんが吐き戻した際は、落ち着いて対処をすることが大切です。具体的な対処法をご紹介します

少量の吐き戻しは少し様子を見る

少量の吐き戻しは問題ありません。吐いた後は、頭を高くしてしばらく抱っこしてあげましょう。授乳の途中であれば少し様子をみながら授乳を再開します。

もし大量に吐き戻したときは、すぐに水分補給を行うのではなく、抱き上げて頭を高くし、しばらく様子を観察しましょう。鼻から嘔吐物が出る、鼻の中に入ってしまった場合は、速やかにふき取ってください。
吐き戻しの量に関係なく、毎回赤ちゃんの呼吸や顔色、機嫌などを観察することが大事です。

赤ちゃんの状態が落ち着き寝かせる際は、再度ゲップを促しましょう。また、ゲップが出ても出なくても、必ず頭を横に向けて寝かせてください。吐いた後は胃腸の動きが亢進する(激しくなる)ため、普段より吐きやすくなっています。

横を向かせづらい場合や、頭の位置がすぐ上を向いてしまう場合は、赤ちゃんの背中に筒状に丸めたバスタオル等を入れ、体全体を少し傾かせた状態にすることで上向きになるのを防ぎます。この際、赤ちゃんから目を離さず、うつ伏せにならないように気を付けましょう。

気管に入ってしまったら背部叩打法を行う

嘔吐物が気管に入ると、赤ちゃんはむせたり咳き込んだり、機嫌が悪くなったりします。呼吸が苦しく大きな声で泣くことが難しい場合や、うまく咳き込めず顔色が悪くなってしまう場合は、背部叩打法で気管に入った嘔吐物を取り除きます。
上記以外の症状もみられる場合は背部叩打法を行わず、すぐに医療機関を受診しましょう。

<背部叩打法(はいぶこうだほう)の手順>
赤ちゃんをうつ伏せにして自分の片腕に乗せて、赤ちゃんの頭を上半身よりも少し低くし、指で赤ちゃんのアゴを支えて軽く突き出します。このとき、お母さんはイスか床に座り、太ももの上で赤ちゃんを支えるようにすると、赤ちゃんの体が安定します。そして、もう片方の手の付け根あたりで、赤ちゃんの肩甲骨の間を素早く4~5回叩きます。

吐き戻し直後の水分補給は避ける

吐き戻しをすると、脱水やお腹が空いているのではと心配になるママ・パパもいるでしょう。
しかし、吐き戻した直後に水分補給をするのは避ける必要があります。胃に水分が入ることで、吐き戻しが誘発されてしまうからです。

多めに吐き戻した後は1時間ほど様子をみましょう。吐き戻し等などの気になる症状がなく、お腹が空いていそうであれば、少量の授乳を行ってください。赤ちゃんの特性上、口におっぱいや哺乳瓶をもっていくと吸おうとします。お腹が空いていなそうであれば、無理な水分補給は必要ありません。

新生児の吐き戻しがヨーグルト状の場合の対処法

吐いたものがヨーグルト状の場合は、消化途中のものを吐き出している状態で、たまにであれば様子をみて大丈夫です。赤ちゃんの胃の特徴や、腹圧がかかったことなどが原因で、ヨーグルト状のものを吐き戻すことは珍しいことではありません。吐き戻した後の赤ちゃんの様子が変わりなく、元気そうであれば特に問題はないでしょう。

繰り返す場合は早めに病院を受診

たまにヨーグルト状のものを吐くのは問題ありませんが、この形状の嘔吐を多く繰り返すようであれば、逆流性食道炎になる可能性があります。早めに受診をしましょう。

吐き戻しと一緒に下痢や発熱がある場合の対処法

吐き戻しと併せて下痢や発熱などの症状がみられる場合は、感染性胃腸炎にかかっている可能性があります。脱水を起しやすい状態のため速やかに医療機関を受診してください。

医療機関を受診する際は、吐いたものの量や色、吐き戻しの回数、気になる症状などをメモしておきましょう。また吐いたものを写真に撮っておくと正確な状況を伝えることができ、適確な診断にもつながります。

ぐったりしている/意識がない/痙攣している/その他異常がある場合の対処法

赤ちゃんがぐったりしている、顔色が悪い、機嫌が悪くてずっとぐずっているようなときは、危険な嘔吐の可能性があります。ほかにも、強く頭を打った後けいれん(ひきつけ)がある、意識がないような場合は、すぐに救急車を呼びましょう。
また、次のような状態の場合は、昼夜や休日を問わず、救急外来などを利用してすぐに受診しましょう。

・赤や茶色い液体を吐いた
・黄色(胃液)や緑の液体(胆汁)を吐いた
・嘔吐を繰り返し唇や舌が乾いている
・おしっこが半日くらい出ていない
・嘔吐と下痢を同時に頻回に繰り返す
・間をおかず何度か吐いた後で、コーヒーかす状のものを吐いた

夜中に吐き戻しがあった場合などは、一晩様子を見るか、すぐに病院に連れていくか、それとも救急車を呼ぶか、判断に迷ってしまうかもしれません。その際は、「救急安心センター事業 #7119」へ電話をしましょう。24時間365日対応可能で、専門家からアドバイスを受けることができます。

また、土日や夜間時などに、症状が軽くても病院受診をすべきか悩んだ場合は「小児救急電話相談(#8000)」を利用するとよいでしょう。
どちらの電話相談も全国どこからでも利用することができますので、万が一のためにぜひ電話番号を登録しておくことをおすすめします。

新生児が吐き戻しをしないための対策

吐き戻しを予防するには、一緒に飲み込む空気の量を減らすことが大切です。飲み込む空気を減らすために、授乳の間隔や量、授乳の姿勢などに問題がないかを確認していきましょう。ここでは、吐き戻し対策のためにチェックしたいポイントについて詳しくお伝えします。

授乳の間隔をあけ、飲む量を調節する

完全母乳の方でときどき赤ちゃんの吐き戻しがある場合は、1回の授乳時間を少し短くしてみましょう。同じ授乳時間でも、日々母乳量が増えてきている可能性が考えられます。また、授乳前後の体重を測ることでおおよその哺乳量が分かります。吐き戻しが多くて心配な方は、母乳測定をするのもいいでしょう。適量であれば「必要以上に飲んでしまう」ことを予防できます。

混合栄養のようにミルクを飲ませている方は、ミルクの飲みすぎが原因の可能性もあります。ミルクの間隔や、一度にあげるミルクの量を調節するのがおすすめです。また、ミルクの量が前から変わっていないという方は、母乳量が増えている可能性があるため、ミルクの量や回数を減らしてみましょう。

しかし、ミルクの量を極端に減らしてしまうと、赤ちゃんに必要な栄養が足りなくなる場合があります。赤ちゃんの様子を見ながら、その時々でミルクの量を調節してください。

新生児のミルクの量や飲みすぎについては、「新生児のミルクの量・あげる間隔の目安を月齢別に解説【助産師監修】」「新生児のミルク飲み過ぎのサインは?飲み過ぎる原因と対処法を解説【医師監修】」の記事も参考にしてください。

授乳のスピードを調節する

哺乳瓶で授乳する場合、ゴム乳首のサイズ、穴の大きさ・形状などが赤ちゃんに適切か確認することが大切です。合っていないものを使用すると、必要以上にミルクや空気を飲んでしまうことがあります。

また、ゴム乳首の劣化で素材が柔らかくなり、ミルクが出やすくなることもあります。赤ちゃんは飲むスピードを自分で調整することがほとんどできません。赤ちゃんの成長に合わせて、月齢に合わせたゴム乳首を検討しましょう。

授乳の姿勢を調整する

赤ちゃんの頭を少し高くするだけでも、胃から食道への逆流予防につながります。吐き戻しが多い赤ちゃんは、横抱きや脇抱き(フットボール抱き)での授乳ではなく、縦抱きで授乳すると逆流を防ぐことができます。
しかし、首が座っていない新生児時期は縦抱きが不慣れな方も多いため、首の支えなどに注意して行ってください。縦抱きの方法が分からない場合は、助産師などに相談しましょう。

授乳直後は、赤ちゃんの背中をしっかり立て縦抱きにし、背中を下から上にやさしくさすったり、軽くトントンと叩いたりすることで、上手にゲップを促せます。

新生児が吐き戻した後の注意点

突然赤ちゃんが吐き戻したら、心配になって焦ってしまう方も多いでしょう。まずは落ち着いて、次のことに注意して対応するようにしてください。

吐いたものを取り除く

吐いたものが口に残っていないか、鼻や耳に入っていないかを確認しましょう。もし、口の中に残っているようなら、指にガーゼを巻き手前の方を軽くふき取ってください。口の奥は無理にふき取らなくて大丈夫です。鼻や耳に入った嘔吐物も、速やかに除去しましょう。

しばらく時間をおき、少量の水分補給から

水分補給は大事ですが、吐き戻し後はすぐ飲ませるのではなく、しばらく様子をみます。再びミルク等を飲ませるときには少量にしておきましょう。
また水分補給時は、胃に負担のかからない母乳やミルクを飲ませます。ジュースや乳酸菌飲料、牛乳などは浸透圧が高く、胃に負担をかけてしまうため、飲ませてはいけません。

汚れた服などは、様子をみながら替える

服などについた吐物のニオイで再び吐いてしまうことがあります。また吐いたものが服に付いたままだと、体を冷やしてしまいます。しかし赤ちゃんを着替えさせる場合、寝かせながら体を動かすと再び吐き戻す可能性があり危険です。様子をみながらお着替えをしていきましょう。体が汚れた場合は、温かいタオルでふき取ってあげてください。

すぐに仰向けで寝かせない

赤ちゃんを横に寝かせるときは、顔を横向きにしてあげます。仰向けの状態だと、再び吐いたときに気管に入ってしまうためです。

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赤ちゃんが吐き戻してしまうと慌ててしまいますが、正しい知識をつけておけば安心です。どうしても自分で判断がつきにくい場合や、不安を感じる場合は、生後1か月までなら出産した産院や病院、それ以降は小児科に相談しましょう。

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参考文献
青木三恵子(編) 子どもの食と栄養 「生きる力を育むために」 2020年3月 講談社
時事メディカル 家庭の医学 乳幼児の消化器の発達
新潟県福祉保健部 乳幼児保健指導の手引 改訂第4版
横田俊一郎、山本淳(編) ナースが知っておいたい 小児科でよくみる症状・疾患ハンドブック 2020年7月第1版第6刷発行 照林社
市川香織ほか(指導) 母子保健テキスト 1989年初版、2021年5月改訂第2版発行 公益財団法人 母子衛生研究会
千葉県医師会 こども相談室 赤ちゃんの嘔吐
日本医師会 白クマ先生の子ども診療所 嘔吐
公益財団法人 日本新生児生育医学会 被災地の避難所等で生活をする赤ちゃんのためのQ&A(ご家族向け)
東京消防庁 もしものときの応急手当 のどに物が詰まったとき
MSDマニュアル プロフェッショナル版 意識のある乳児における窒息の治療方法
茨城県 (2019年度作成)小児救急パンフレット

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