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2022/4/22更新

みんなのサステナブル vol.3(前編)

ファッションデザイナー 石川俊介さん

クリエイターや生産者をはじめ、暮らしを楽しむスペシャリストが「楽天市場」の中から選んだサステナブルな日用品や愛用品をエピソードとともに紹介していく連載「みんなのサステナブル」。第3回目のゲストは「marka」「MARKAWARE」「Text」の3つのブランドを手がけ、東京をベースに活動するファッションデザイナーの石川俊介さん。サステナブルな取り組みに深くコミットし、誠実なファッションの在り方を模索する石川さんのもの作りにかける想い、社会課題とは?

ファッションデザイナー 石川俊介さんの写真

現代におけるファッションを取り巻く環境では、大量生産、過剰消費、大量廃棄というサイクルがまかり通っていて、深刻な環境負荷が問題になっています。好きなファッションを身に纏い、着飾る楽しさや高揚感はとても特別なものですが、同時にその裏側にある背景や生産のプロセスを理解することは、非常に大切なこと。製造過程、働く人の人権問題など様々な課題が山積みなファッション業界の実情を改善できたら——そんな熱い想いを胸にサステナブルな取り組みに邁進するデザイナーの石川俊介さんはこう語ります。

日本の産地、ひいては繊維産業を盛り上げるために始めた取り組み。

「僕は2001年からブランドをスタートしたときに最初に強く思ったのが、日本の様々な産地の人と組んで、メイド・イン・ジャパンのものづくりをしたいということ。最初に始めたことは、原料がどこで取れたもので、どこで紡績して、どこで染色をしたのかを伝えていくことです。当時は、まだトレーサビリティー(商品の生産・流通過程が追跡可能であること)という言葉も知らなかったけれど、日本の産地がもっと盛り上がっていけばいいな、と思ってやっていたことです。2010年代くらいに海外の人たちにもメイド・イン・ジャパンのものづくりはいいね、という流れも生まれ、やはり、トレーサビリティーを意識することが大切なことだと実感。そうしたアクションによって、日本だけが作れる技術を残していきたいですし、繊維産業自体を元気づけたいという想いがずっとあります。最近は、どのような工場で紡績したり、染めていたりするのか気にしてくださる消費者の方が増えてきている印象があります」
さらに、サステナブルな取り組みに関しては、食の業界から学んだことが多々あると言います。
「食の業界は生産者や料理人といったように作り手の顔が見えていますが、ファッション業界は、製造工程でいろんな工場とのやりとりが多く、プロセスの多さゆえに複雑な部分があります。それでも、川の上流を遡って原材料が見えるようになったら、より可能性が広がるかもしれないという思いがありました」

「MARKAWARE」のシャツジャケット。タグにはブランド名、ヘンプ生地を生産している会社の名前をクレジット。トレーサビリティーに配慮している。会社名を調べると「日の出紡織株式会社」という会社のHPに辿り着く。企業の取り組みについて調べることができる。
サステナブルなアクションの一歩として石川さんが始めたのが、原料の産地に自ら出向くこと。ペルーには、自社で契約した農園があります。思い受かんだアイデアを着実に形にするその実行力に、並並ならぬ熱い情熱が滾っています。

綿花栽培のサステナビリティを追求するために、ペルーの自社農園でコットンを生育。石川さんの現地のパートナーが牽引し、オーガニックコットンを栽培する農家を増やしていく取り組みが進んでいる。

貧困問題を抱えるペルーに自社農園を作り、

オーガニックコットンの栽培を行う。

「ペルーはグローバルサウスで、貧困問題を抱える国。僕らがファッションの観点から協力できることがたくさんあると感じています。あまり知られていないですが、カカオ、バナナの生産量が多く、実はオーガニック大国でもある。一方で、コットンの生産に関しては、他国に比べて遅れを取っています。かつては、結構、生産量があったのですが、単価が下がり過ぎて農家の人たちが他の作物を作ることに力を入れるようになってしまって。そうした背景も踏まえて、ペルーのコットンをもう一度復活させたいと思い立ち、契約農家の方とフェアトレードをし、プレオーガニックコットンの栽培を進め、素材の開発をしています」
自社農園を作る以前は、大手企業と取引をしてオーガニックコットンを仕入れていた時代があったと言います。
「自社農園を作ろうと思ったのは、今、世界中でオーガニック資源の奪い合いが加速しているから。加えて、パンデミックになったことでより一層、価格が高騰しているんです。自社農園を取りまとめてくれている現地のパートナーは1980年代にコットンの生産を始めた人。面白いことに、72歳の彼はアメリカ人の人類学者なんですよ。ペルーにはフィールドワークで訪れ、遺跡発掘やミイラの研究しているうちにミイラが包まれている布の研究を推し進める中で綺麗な有色コットンに出合ったそう。ペルーで作っているはずの有色コットンの種をジャングルに探しに行ったりもして。それから、自分でオーガニックコットンを作るようにもなった、いわばオーガニックコットン作りの第一人者みたいな人。彼を筆頭にペルーでオーガニックコットンの生産に携わっている中枢の人たちが協力してくれています。農園があるエリアはピウラという都市に近い砂漠地帯で、貧困が深刻化しています。生活するための十分なお金がないから、その時々で売れる作物を作り、暮らしています。僕らが契約することでコットンの生産で安定的に生活ができるようなってほしいという願いもある。そこで実際に栽培しているコットンボールは、大きいものだと手のひらくらいのサイズで、とても上質なコットンが採れています」
さらに、石川さんはインターネットを駆使し、ペルーやアルゼンチンなど南米を中心にウール等の牧場の現地へ。そのうちの一つアルパカ牧場はペルー国内の標高4000mのエリアにあり、アンデス山脈の中腹に位置しています。

広大な牧草地でのびのびと暮らしているアルパカたち。

アルパカは動物の中でも一番、色が豊富。体毛は繊細で柔らかく、保湿力が高い。

アニマルウェルフェアを意識した農家と

契約を結ぶことの切実さ。

「一番近いアルキパという都市から車で最低5、6時間はかかる場所。高木が育たない森林限界で農業には不向きな土地なんです。ここで暮らしている農家の人々はとても貧しく、アルパカを育てて自分たちの生活を守ってきました。その共存の歴史は、数千年前にまで遡るとされています。広大な大草原で過密飼育をしていないので自然環境を荒らすこともない。アルパカはラクダ科の動物なので土地を荒らさないですし、牧草を根っこまで食べられないので、全部食べ尽くして砂漠化が起きにくいとか、いい面がいっぱいあるんです。ただ、とても貧しい農家なので、かつては割れた瓶で毛刈りをしていた、なんてことが平気であったそうで。そういった問題を改善しようと、大手の企業がバリカンを用意してあげたり、別のところで毛刈りを行ったり、アニマルウェルフェアを意識した対策をどんどん進めていっているところなんです」

石川さんが手がける「Text」のジャケット。タグには原材料であるペルーのナチュラルカラーのアルパカについて明記。滑らかな肌触りと着心地の軽やかさが印象的。

無染色の素材の色の美しさを生かした洋服づくり。

石川さんが手がけるジェンダーレスで着られるブランド「Text」では、ペルーで採れた無染色のアルパカを使って織り上げた、タッターソールチェックのジャケットを製作。羊毛を染色するときには、大量の水や熱が必要になるため、黒羊や茶色の羊から毛を梳き取り、無染色のウールでチェック柄を作るといった、環境への配慮がなされています。
「今はだいぶ、品種改良が進んできて、カシミアの質感に近いアルパカが採れるようになってきたので、ますます楽しみですね。自分のブランドでは、本当にいい原材料だけを使い、職人の顔が見える紡績工場で糸を紡いでいます。生産者の人たちを元気づけながら、洋服を作るということをずっとやり続けてきたので、そういう意味で、自分のブランドを購入してもらうことでみんなが幸せになれるんじゃないかな、と素直に思います」

長く着ることのできる品質とデザイン。そして、人権に配慮をし、環境負荷の少ない方法で作ること。そうした作り手の真摯なメッセージに共鳴するものを選ぶことが、これからの未来を少しずつでも変えていける力になるのではないでしょうか。記事の後編では、石川さんが生活者として、ふだんの買いものを通して参加できるサステナブルなことについてお話を伺いました。
PROFILE
石川俊介

ファッションデザイナー。「MARKAWARE」「marka」「Text」 の3つのブランドでファッションとサステナブルの良好な関係を模索。世界を一人で旅しながら、原材料を調達。現地の生産者、工場で生産に従事する人たちとコミュニケーションを深めてものづくりをすることを信条としている。 https://markaware.jp/


・MARKAWARE
・marka
Photo by: Mitsugu Uehara Edit & Text by : Seika Yajima

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