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赤ちゃんはいつからはちみつを食べていい?誤って口にした場合の対処法も

赤ちゃん

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2022/8/17

腸の機能が発達途中である赤ちゃんがはちみつを摂取すると、乳児ボツリヌス症を引き起こすことがあります。この記事では、赤ちゃんはいつからはちみつを食べられるか、乳児ボツリヌス症の症状、誤ってはちみつを口にした場合の対処法について解説します。

はちみつは健康にいい食品として知られていますが、1歳未満の赤ちゃんには与えてはいけません。この記事では、はちみつを赤ちゃんに与えてはいけない理由や、乳児ボツリヌス症の症状を解説します。併せて、誤ってはちみつを食べた場合の対処法やはちみつ以外のボツリヌス菌が含まれる食材についてご紹介しますので、ぜひご覧ください。

この記事の監修者

日本小児科学会専門医・同指導医、米国小児科専門医、米国小児救急専門医

井上信明先生

日本の医学部を卒業後、日本、アメリカ、オーストラリアにて小児科および小児救急の研修を行う。

はちみつはいつから食べていい?

はちみつは1歳を超えた赤ちゃんであれば、食べさせてもかまいません。1歳以降になれば、腸内環境が成熟してくることが理由です。ただし、1歳を過ぎても腸内環境が完全に成熟しているわけではないので、2歳前後までは子どもの体調がすぐれないときは、はちみつを与えるのは控えましょう。

はちみつは1歳未満の乳児に与えてはいけないと、厚生労働省が通達を出しています。その理由を次で詳しく説明します。

乳児にはちみつを食べさせてはダメ!その理由は?

1歳未満の赤ちゃんにはちみつを食べさせてはいけないのは、乳児ボツリヌス症を発症する危険性があるからです。

ボツリヌス菌とは、土や泥など酸素の少ない環境下で生息する細菌です。ボツリヌス菌は自らの生存に適した環境でなければ、芽胞という強力な殻を作り、身を守ります。そして生息に適した酸素の少ない環境になると、芽胞を破り増殖をはじめるのです。このとき、ボツリヌス菌は強力な毒素を生み出します。ボツリヌス菌の毒素が持つ毒性は、一般的には80℃で数十分、100℃で10分近く加熱することによって、ようやくなくなると言われています。つまり、普段の調理でおこなうような加熱方法では、ボツリヌス菌による食中毒のリスクはなくならないのです。

大人であればボツリヌス菌が体内に侵入しても、腸内細菌によって繁殖が邪魔され、毒素を生み出すことはほぼありません。しかし腸内環境が成熟していない乳児の場合、腸内でボツリヌス菌が繁殖しやすいのです。腸内は酸素が少ないので、ボツリヌス菌が繁殖するにはもってこいの場所なのです。

なおボツリヌス菌による産生される毒素は、主に全身の筋肉に麻痺を起こす作用や自律神経の機能を障害する作用を有しています。そのため、脱力感や筋力低下から始まり、ものが二重に見える、飲み込みが悪くなる、呼吸が苦しくなるなどの麻痺に伴う症状だけでなく喉が異様に渇く、便秘などの症状を伴うことがあります。

また「はちみつは、ボツリヌス菌感染のリスクが高いのはなぜだろう?」と思うかもしれません。その理由は、はちみつを容器に詰める前に加熱処理をしないからです。はちみつは糖分が多く、一般の細菌は死んでしまうので、通常加熱処理をしなくても問題はないのですが、ボツリヌス菌は芽胞に覆われているので、はちみつの中でも死滅しません。

加熱したはちみつや加工品も避ける

「はちみつを加熱してから与えたら、食中毒になりにくいのでは?」と思うかもしれませんが、ボツリヌス菌は芽胞の状態では非常に熱に強く、長時間100℃で加熱しても死滅しません。このような理由から、加熱したはちみつも非加熱のはちみつも危険性は変わらないので、赤ちゃんには不向きな食品と言えます。

また、はちみつ入りのお菓子やドリンクも多く販売されていますが、製造過程でボツリヌス菌が完全に死滅しているとは言い切れません。そのため、はちみつ入りの加工品も赤ちゃんには与えないようにしましょう。はちみつが入っているかどうか心配な場合は、パッケージ裏面の食品表示を確認したり、料理にはちみつが含まれていないか店員に確認したりすることをおすすめします。

乳児ボツリヌス症とは

はちみつを食べた赤ちゃんに発症することがある「乳児ボツリヌス症」は、ボツリヌス菌が腸内で繁殖し、毒素を発生することで起こります。
乳児ボツリヌス症を発症すると便秘がちになり、母乳やミルクを飲まない、泣き声が小さい、元気がないなどの症状が見られます。さらに進行すると、全身の筋力が低下する、瞼が下がる、呼吸が弱くなるなどの症状が出はじめ、重症化すると呼吸困難や呼吸停止に陥ることもあります。ただし、適切に治療すれば回復が期待できます。

なお、乳児ボツリヌス症の潜伏期間は長く、菌が体内に入り込んで約3~30日後に症状が現れます。
日本では、1歳未満の赤ちゃんにはちみつを与えないよう厚生労働省から通達が出てから、はちみつ摂取によるボツリヌス症の症例は激減しています。

大人がかかるボツリヌス食中毒との違いは?

乳児ボツリヌス症は、腸内でボツリヌス菌が繁殖し、毒素を発生させることにより起こるものです。一方、大人がボツリヌス菌による食中毒になる場合、食品中で生成された毒素を取り込むことで起こります。レトルト食品、瓶詰、缶詰、発酵食品などにボツリヌス菌が紛れ込むと繁殖し、毒素を生成します。

誤ってはちみつを食べた場合の対処法

はちみつを与えないよう気を付けていても、誤ってはちみつ入りの加工品などを食べさせてしまう可能性があります。
しかし、すべてのはちみつにボツリヌス菌が潜んでいるわけではありません。さらに、はちみつを食べても必ず乳児ボツリヌス症が発症するとは限らないので、しばらく様子を見てみましょう。
先ほども述べたように、乳児ボツリヌス症の潜伏期間は長いので、摂取後3~30日以内に便秘や哺乳力の低下などが見られないか、赤ちゃんの様子を見守ってください。万が一、乳児ボツリヌス症のような症状(便秘がちになる、母乳やミルクを飲まない、泣き声が小さい、元気がないなど)が見られた場合は、かかりつけ医に相談してください。

はちみつ以外のボツリヌス菌が含まれる食材は?

はちみつは乳児ボツリヌス症の原因のひとつとなる食材です。ただし、すべての乳児ボツリヌス症の原因が、はちみつであるとは言えません。むしろ原因不明である場合も多いのです。
ボツリヌス菌が潜んでいる可能性がある食材として、黒糖やコーンシロップなど完全に殺菌されていない甘味料や、自家製の野菜スープなどがあります。日本では、井戸水が原因で乳児ボツリヌス症を発症した事例もあります。
乳児ボツリヌス症を防ぐためにも、原因となりうる食材を与えないことが重要です。

【出典】
国立感染症研究所 感染症情報センター「乳児ボツリヌス症の発生原因と考えられた井戸水からの菌分離」

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ここまでは、小児科医の井上先生に監修いただきました。
1歳未満の赤ちゃんは腸が未発達ですので、はちみつを食べることでボツリヌス菌が腸内で繁殖し、乳児ボツリヌス症を発症する可能性があります。ボツリヌス菌は熱に強く、少々の加熱では死滅しません。そのため、原因となる食材を赤ちゃんに与えないように注意するなど、対策を行ってくださいね。

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