KITCHEN LABO@blue monkey room 今月のラボ 『年末年始のストックフード』
2020.12.23
自然豊かな都市近郊のフードラボ「blue monkey room」に集まった、食のスペシャリストたちが繰り広げる、ちょっぴりマニアックな部活動。blue monkey(青い猿)とはマヤ暦の星人の一つで、楽しむことが大好きです。
年末年始の在宅時間を使って、いつものおせちや年末のご馳走と一緒に、少し気分の変わるストックフードとその使い方を考えてみました。常備菜や作り置きともちょっと違う楽しみかたのできる、展開型ストックフードです。
ストックフード。それは、
食材から“自由水”を奪うこと。
そもそもストックフードって幅広いです。blue monkey roomでは、まずストックフードのアプローチに、どんな方法があるのかを洗い出し、共通項を改めて考えてみました。
・塩蔵(梅干し、生ハム、チーズなど)
・乾燥(ドライトマト、干し椎茸、干し柿、昆布など)
・砂糖漬け(果物のコンポートなど)
・酢漬け(ピクルス、南蛮漬けなど)
・燻製や灰干し(ベーコン、秋刀魚の灰干しなど)
・発酵(チーズ、鰹節など)
・オイル浸け など
保存性を高める大きな共通項は、水分を減らすことです。食材に含まれる水分には実は二種類、結合水(タンパク質や糖質と結合する)と自由水(動き回る)があります。自由水の割合が多いと食材は腐敗に向かいます。そこで、水分活性を下げることが重要です。一つは脱水のようなアプローチ、もう一つは塩や砂糖などを加えることで食材中の自由水を結合水に変えるという方向性です。
食材に占める自由水の割合を示す指標に水分活性値(AW)があります。水分活性は1.00がもっとも大きく、水分活性値が低いほど抗菌性が高まります。すなわち、保存性も高まります。水分活性(AW)が0.7以下になると微生物は繁殖できなくなると言われています。参考までに、AW1.0の食品は果物、肉、野菜などの生鮮品。そして0.7がジャム類、0.6が米などの穀類、干し野菜などは0.2という具合に数値が下がります。
今回のフードラボで伝えたいのは、ストックフードのレシピではなく保存性を高める様々な手段です。また、ストックフードを作るだけでなく、どう使えるかの展開を重視しました。
保存食といえば、かつては常温が基本でしたが、現在の私たちは冷蔵庫との共存生活です。今回は、週末仕込んで常温もしくは冷蔵庫保存で1週間ほど美味しく食べられることを目安にしました。
米・豆・野菜・肉の各種から、シンプルながらユニークなストックフードが揃ったと思います。まずは非常にシンプルな、“米の乾燥=おこげ”からいってみましょう。
『愛の不時着』のヌルンジ(おこげ)が
食べたい。
コロナ禍で世界的に大ヒットした韓国ドラマ『愛の不時着』は、北朝鮮に不時着した韓国の財閥令嬢ユン・セリ(ソン・イェジン)と北朝鮮の軍人リ・ジョンヒョク(ヒョンビン)のラブコメディ。日本では「不時着沼」という言葉も生まれ、どハマりした人が続出しました。自分もその一人だったりしますが、ドラマで気になったのがヒロインのユン・セリが食べていた地味で素朴な北朝鮮のごはんの数々です。その一つがおこげ。おこげというと中国料理で使われている、揚げおこげの方が日本では馴染みがあると思いますが、韓国や北朝鮮のおこげは、焼くだけで“ヌルンジ”と言うようです。
ドラマの中では、手作りのおこげに砂糖をふって食べているのが妙に美味しそうでした。いつか食べてみたいなあという願いを叶えてくれたのは、ラボ研究員で和菓子の先生の安田由佳子さん。このおこげの話をしたところ「見てないけれどやってみます。赤米を入れると色合いもきれいになるんですよ!」と素敵なおこげにしてくれました。
ストックフード①<ヌルンジ(おこげ)>
保存のアプローチ:乾燥
保存期間:常温で1週間
※密閉性の高い保存袋で湿気を防ぐ
お米は焦がさないようにごく弱火で乾燥させていくイメージで火を入れます。面積の広いフライパンを使うと水分の蒸発が早いです。(ゆかこ)
材料
- 炊いたご飯 茶碗一杯分
- (白米1合+赤米大さじ2の割合)
作り方
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