福島県伊達郡の丘陵地域に位置する川俣町。平安時代から続く養蚕業と織物業により「絹の里」としても知られており、当時、裕福な機屋(はたや)の旦那衆が娯楽として楽しんでいたのが「闘鶏」でした。そのため気性の激しい軍鶏(しゃも)が飼われることが多く、それが現在の「川俣シャモ」の原点となっています。
「1983年ごろに当時の町長が『この町に特産物をつくろう』ということで、かつての軍鶏に目を付け、川俣シャモとしてスタートさせたんです」。そう話すのは川俣シャモの加工・販売を行う川俣町農業振興公社の代表、笠間英夫さん。国内には60数種のブランド地鶏がいますが、年々知名度があがり、今では「名古屋コーチン」や「比内地鶏」に並ぶほどの存在になりつつあるのだそう。
「一番大切なのはやはり、強く元気な雛を育てること。孵卵からある程度の大きさになるまでは気が抜けません」と養鶏を行う川俣シャモファームの斎藤正博さん。鶏舎に足を運ぶと鶏たちが元気いっぱいに動き回っていますが「密飼いはもちろん、エサや水がないことがストレスになり、それが肉質にも影響してくるんです」と話してくれました。エサにもこだわりがあり、とうもろこしをメインに、福島産の玄米を10%配合しているのだそう。
そうして大切に育てられた川俣シャモたちは、川俣町農業振興公社内にある調理場で、モモ、ムネなどの部位や、スープや燻製といった加工品へと生まれ変わります。「皮の部分は毛を焼いて、それでも残ったものは1本1本手作業で毛抜きをするんです」。終わったあとすぐに氷水に漬けるのは、鮮度を保つため。実際に作業を拝見すると、その手際の良さに驚かされます。
笠間さんいわく、川俣シャモのおすすめはセット商品としても販売している「シャモ鍋」だそう。川俣シャモのガラでとったスープに、モモ肉、手羽、肉団子がはいっているので、お好みの具材を入れて煮込めば、気軽にシャモ鍋が味わえるのです。また燻製された川俣シャモは桜のチップでじっくりスモークしており、程よい弾力の肉に鳥本来の旨味が凝縮された逸品。サラダやお酒のつまみにもぴったりです。
「川俣シャモをはじめたばかりのときは、本当に試行錯誤の連続でしたが、今や全国的に知られる鶏にまで成長しました。私も養鶏家の1人ですが、これは私だけの鶏じゃない。町のみんなが協力してできた鶏なんです」。川俣シャモの創成期から関わる川俣シャモ振興会の佐藤 治さんは、そんなふうに熱く語ってくれました。川俣町の思いの結集ともいえる川俣シャモは、これからより多くの人に愛されることでしょう。