2024.03.29

日本酒の造り方は?発酵の仕組みや製造工程をわかりやすく解説

日本酒の造り方は?発酵の仕組みや製造工程をわかりやすく解説

日本酒は発酵して造られるお酒で、製法にほかのアルコール類とは異なる特徴があります。同じ日本酒でも、製造工程の違いにより呼び名や味わいが変わる点も、面白さの1つです。

この記事では、酒と食に関するセミナーなども行う専門家の友田晶子さん監修のもと、日本酒の発酵の仕組みや製造工程、製造期間、製造工程の違いによる日本酒の呼び名や味わいを詳しく解説します。

日本酒をもっと楽しむヒントとして、参考にしてください。

※20歳未満の飲酒や飲酒運転は法律で禁止されています。
※妊娠中や授乳期の飲酒は胎児・乳児の発育に悪影響を与えるおそれがあるためやめましょう。
※お酒は適量を守り、飲みすぎに注意しましょう。
※空き瓶はリサイクルしましょう。

監修者
友田 晶子

一般社団法人 日本のSAKEとWINEを愛する女性の会 代表理事

友田 晶子(ともだ あきこ)

米どころ酒どころ福井県に生まれ、ワインの輸入販売やフランス留学を経験。現在は、業界30年以上のキャリアと感性を活かし、酒と食に関する一般向けセミナー・イベントの企画・開催、ホテル旅館・料飲店・酒販店・輸入業者などのプロ向けコンサルティングと研修を行っている。お酒にまつわる書籍を20冊以上執筆したほか、田崎真也氏オーナーのワインバー「アルファ」(銀座)代表を歴任。お酒を通じて女性の教育・活用社会進出支援に力を入れる一般社団法人「日本のSAKEとWINEを愛する女性の会(通称:SAKE女・サケジョの会)」の代表理事として活動中。

アイコン目次

日本酒の発酵の仕組み

日本酒は、「並行複発酵」と呼ばれる造り方をしています。「並行複発酵」とは、アルコール発酵と糖化を同時に行う、アルコールづくりでは珍しい高度な技術です。

以下で、アルコール発酵と糖化をそれぞれ解説します。

アルコール発酵

「アルコール発酵」とは、糖を酵母の力でアルコールに変える過程です。発酵の過程で炭酸ガスも出てきます。

ちなみに日本酒造りに使われる酵母は、清酒酵母(せいしゅこうぼ)で、いくつか種類があります。

糖化

「糖化」とは穀物中のデンプンを糖に分解するプロセスです。日本酒の原料となる米には糖分がないため、糖化しないとアルコール発酵が起きません。

日本酒の場合、米のデンプンを麹菌の酵素が分解して糖化しています。

日本酒ができるまでの流れ

本酒ができるまでの流れ

日本酒は多くの工程を経て造られ、工程の違いにより日本酒の呼び名が変わります。 以下で、日本酒ができるまでの流れと工程の違いによる日本酒の呼び名を簡単にご紹介します。

1.精米・蒸米

はじめに、原料となる玄米を「精米(せいまい)」します。精米のタイミングでどの程度お米を磨くかで、日本酒の種類が変わります。例えば、精米の段階でお米を半分以上削っているのが、大吟醸酒です。

精米したあとは、お米を蒸します(蒸米・むしまい)。

2.麹造り

蒸米に麹菌を付着させるのが「麹造り(こうじづくり)」の工程です。麹菌を振りかけると、米のデンプンが糖化します。

麹菌をふりかけたあとは、温度のばらつきが起きないように全体を混ぜます。

3.酒母(酛)造り

麹と水を混ぜ合わせたものに、酵母、乳酸菌、蒸米を加えて造るのが「酒母(もと)」です。酒母は、もろみの発酵を促すために酵母を大量に培養したものをさします。

酒母づくりには2週間から1ヶ月必要です。

4.もろみ造り

酒母ができたら、もろみを仕上げていきます。完成した酒母を大きなタンクに移し、麹、蒸米、水を加えるのがもろみ造りの工程です。この時3回に分けて投入するため、「三段仕込み」と呼ばれます。

三段仕込みを行うのは、発酵をゆっくりと進めるためです。麹、蒸米、水を一気に加えると酵母が薄くなり、雑菌が繁殖する原因になるため、あえて手間をかけて作業を進めます。

三段仕込みは、1日目に1回目の仕込み(添仕込)を行い、2日目に糖化や酵母が少しずつ増えるのを待つために仕込みをお休みします(踊り)。そして、3日目に2回目の仕込み(仲仕込)を行い、4日目に3回目の仕込み(留仕込)を行います。

蔵人が毎日蒸米、麹、温度、発酵の進み具合を見ながら、発酵と糖化のバランスをとる清酒独特の方法です。

5.上槽(搾り)

圧搾機などを使い、もろみを搾って、酒(液体)と酒粕(個体)に分けるのが「上槽(じょうそう)」です。

搾りたてをろ過、加熱(火入れ)し貯蔵され製造年度内に出荷されたものは「新酒」と呼ばれます。

通常は目の細かい酒袋で絞りますが、あえて目の粗い酒袋で絞ったお酒が、「にごり酒」と呼ばれます。

6.ろ過・火入れ

絞った日本酒はまだ酵母や米の固形物が残っているため、ろ過します。ろ過によりできるのが、透明な日本酒です。

ろ過後、殺菌と品質安定のために加熱処理の火入れをします。

ろ過の工程を省き、火入れや加水調整をしない日本酒は「無濾過生原酒」、火入れを一度もしないものは「生酒」と呼ばれます。

7.貯蔵・調合・割水

火入れの終わった日本酒は貯蔵して、味わいをまろやかに整えます。そのあとに水を入れ、アルコール度数や味わいの調整をするのが、調合、割水の工程です。

加水処理では、アルコール度数を15度前後に調整します。あえて加水調整しないものを「原酒」と呼びます。

8.火入れ・瓶詰め

割水が終わり、味を整えたら、もう一度火入れをして品質を安定させます。最後に瓶詰めをして、日本酒の完成です。

日本酒の製造にかかる期間とサイクル

日本酒の製造にかかる期間は、約60~120日間です。

日本酒造りのサイクルは7月1日〜翌年6月30日までが一年度として区切られます。なお、年間のお酒造りのサイクルをさすのが「酒造年度」です。

一般的に日本酒は、秋頃に米を収穫し、温度管理のしやすさや菌の繁殖のしにくさから寒い時期の12月〜3月に造られることが多く、この時期に製造された日本酒を「寒造り(かんづくり)」と呼びます。

日本酒は製造工程の違いによって名称が変わる

日本酒は製造工程の違いによって名称が変わる

前述のとおり、日本酒は製造工程の違いにより呼び名がわかれます。
以下に、製造工程の違いによる日本酒の呼び名と味わいの特徴をまとめました。日本酒を選ぶ際に参考にしてください。

名称 製造工程 味わい
新酒 貯蔵の工程を短くして出荷する フレッシュな味わい
にごり酒 もろみをあらめに絞り、液体にオリを残して作る さっぱりしたものから濃厚でまったりとした口当たりのものまでさまざま
無濾過生原酒 ろ過の工程を省き、火入れ、加水調整を行わない ずっしりとした深い味わい
生酒 絞りのみで火入れや貯蔵をしない 新鮮な香りや味わい
原酒 できたお酒に水を入れる工程を行わない 濃厚な力強い味わいで、アルコール度数が高い

【製造工程別】日本酒のおすすめ10選

楽天市場で取り扱いのある日本酒の中から、専門家が選んだ製造工程の異なる日本酒のおすすめを10個紹介します。

製造工程だけでなく商品によって味わいは異なるため、ぜひ参考にしてください。

【にごり酒】蓬莱 新酒一番 にごり

【にごり酒】蓬莱 新酒一番 にごり

【にごり酒】蓬莱 新酒一番 にごり

内容量 720ml
蔵元 渡辺酒造店
産地 岐阜県
種類 にごり酒
アルコール度数 17度
味わい 甘みが強くとろっとした味わい
おすすめの飲み方 冷やして、ロック
おすすめの付け合わせ 豆乳鍋、キムチ鍋といった鍋料理 など

にごり酒の中でももろみの量が多く、甘みと濃厚なとろみが特徴のお酒です。アルコール度数が高いため、ロックやソーダで割って飲むのもおすすめです。

【にごり酒】八海山 にごり酒

【にごり酒】八海山 にごり酒

【にごり酒】八海山 にごり酒

内容量 720ml
蔵元 八海醸造
産地 新潟県
種類 にごり酒
アルコール度数 15度
味わい 爽やかな酸味と華やかな香り、ほんのり甘い味わい
おすすめの飲み方 冷酒
おすすめの付け合わせ 白身魚のお刺身、茶わん蒸し など

発泡タイプのにごり酒で、シュワシュワした爽やかさとミルキーな甘みが広がります。あっさりとした日本酒なので、軽い味わいの料理やフルーツにも合います。

【にごり酒】五郎八 にごり酒

【にごり酒】五郎八 にごり酒

【にごり酒】五郎八 にごり酒

内容量 720ml
蔵元 菊水酒造
産地 新潟県
種類 にごり酒
アルコール度数 21度
味わい 濃厚でコクのある味わい
おすすめの飲み方 ロック、冷やして
おすすめの付け合わせ 鮭の味噌焼き、野菜の甘辛味噌炒め、カレー など

お米の粒が残っており、口当たりも楽しめるのが五郎八です。しっかりとした甘みがあり、冷やして飲むほか、ソーダやミルクで割るのもおすすめです。また、スパイシーなお料理にも合います。

【にごり酒】川鶴 讃岐くらうでぃ

【にごり酒】川鶴 讃岐くらうでぃ

【にごり酒】川鶴 讃岐くらうでぃ

内容量 1800ml
蔵元 川鶴酒造
産地 香川県
種類 にごり酒
アルコール度数 6度
味わい 乳酸飲料のようなクリーミーで甘酸っぱい味
おすすめの飲み方 冷酒、ロック、ソーダ割り
おすすめの付け合わせ ほたてのグラタン、卵焼き、クリームチーズケーキ など

川鶴 讃岐くらうでぃは、3倍の麹を使った甘酸っぱい味わいが特徴です。乳酸飲料のような、まろやかな甘酸っぱさを楽しめます。

【無濾過酒】千代むすび 鬼太郎純吟 無濾過

【無濾過酒】千代むすび 鬼太郎純吟 無濾過

【無濾過酒】千代むすび 鬼太郎純吟 無濾過

内容量 720ml
蔵元 千代むすび酒造
産地 鳥取県
種類 無濾過
アルコール度数 16度~17度
味わい 芳醇な味わい
おすすめの飲み方 ストレート、熱燗
おすすめの付け合わせ 牡蠣のバター醬油焼き、ステーキ など

アニメのキャラクターをモチーフにした日本酒で、芳醇な香りが特徴です。特徴的なラベルは、プレゼントにもおすすめです。

【生酒】油長酒造 風の森 秋津穂657

【生酒】油長酒造 風の森 秋津穂657

【生酒】油長酒造 風の森 秋津穂657

内容量 720ml
蔵元 油長酒造
産地 奈良県
種類 生酒
アルコール度数 16度
味わい 軽快でやや淡麗な味わい
おすすめの飲み方 冷酒
おすすめの付け合わせ 白味魚のカルパッチョ、豚しゃぶサラダ など

「風の森 秋津穂657」は、風の森シリーズの代表酒で、軽快で透き通るような口当たりが特徴です。爽やかで繊細な香りと、お米の旨みや奥行きのある味わいが楽しめる1本です。

【生酒】上善如水 純米吟醸 生酒

【生酒】上善如水 純米吟醸 生酒

【生酒】上善如水 純米吟醸 生酒

内容量 720ml
蔵元 白瀧酒造
産地 新潟県
種類 生酒
アルコール度数 15度以上16度未満
味わい 果実のようなフレッシュな味わい
おすすめの飲み方 冷酒
おすすめの付け合わせ 鶏肉の冷製サラダ、鮪とアボカドのタルタル など

搾りたてのフレッシュな香りが特徴の上善如水。フルーティーで飲みやすく、初心者にもおすすめの1本です。

【生酒】平和 紀土 純米吟醸 しぼりたて生

【生酒】平和 紀土 純米吟醸 しぼりたて生

【生酒】平和 紀土 純米吟醸 しぼりたて生

内容量 1800ml
蔵元 平和酒造
産地 和歌山県
種類 生酒
アルコール度数 15度
味わい マスカットのような甘みと軽快な酸味のある爽やかな味わい
おすすめの飲み方 雪冷え、少し冷やして
おすすめの付け合わせ サーモンのカルパッチョ、豚肉のしゃぶしゃぶ など

2種類の酵母をブレンドした、フレッシュな香りとソフトな質感を両立させた一本です。新酒の柔らかな炭酸感とシャープな酸味があり、飲んだあとは優しい余韻が残ります。

【原酒】八海山 特別純米 原酒

【原酒】八海山 特別純米 原酒

【原酒】八海山 特別純米 原酒

内容量 720ml
蔵元 八海醸造
産地 新潟県
種類 原酒
アルコール度数 17.5度
味わい 軽さがあり辛さをおさえた深い味わい
おすすめの飲み方 冷酒
おすすめの付け合わせ 炙り鰹のたたき、茄子の味噌煮 など

ふくよかで気品のある香りが特徴的な日本酒です。飲む1時間くらい前に冷凍庫に入れ、しっかり冷やして飲むのがおすすめです。

【原酒】土佐鶴 大吟醸原酒 天平

【原酒】土佐鶴 大吟醸原酒 天平

【原酒】土佐鶴 大吟醸原酒 天平

内容量 500ml
蔵元 土佐鶴酒造
産地 高知県
種類 原酒
アルコール度数 17度以上18度未満
味わい やや辛口で芳醇な味わい
おすすめの飲み方 冷酒、ロック
おすすめの付け合わせ 白身魚のムニエル、和風パスタ など

原酒を樽から直接詰め、芳醇な味わいが特徴の一本です。てんぷらやお刺身などの日本料理に合わせて飲むのがおすすめです。

まとめ

日本酒は並行複発酵と呼ばれる珍しい製法で造られています。並行複発酵は、アルコール発酵と糖化を同時に行う製法です。

発酵後も日本酒は多くの製造工程を経て、約60~120日間かけて造られます。製造工程を一部変えると、呼び名や味わいが変わるのも日本酒の面白さです。

ぜひ、製造工程の異なる日本酒を飲み比べてみてください。