KITCHEN LABO@blue monkey room 今月のラボ『盛り上がる丸鶏研究』

2020.11.18

自然豊かな都市近郊のフードラボ「blue monkey room」に集まった、食のスペシャリストたちが繰り広げる、ちょっぴりマニアックな部活動。blue monkey(青い猿)とはマヤ暦の星人の一つで、楽しむことが大好きです。

今回は、年末シーズンに向けて華があって皆をワクワクさせる料理を研究したいと思います。題して丸鶏研究。今回は丸鶏経験の豊富な2人に会をリードしてもらいました。

@blue monkey room 今回のメイン研究員

樋口直哉(ヒグチさん)
作家で料理家。論理的で知識満載のnoteのレシピが大人気。最新刊は「最高のおにぎりの作り方」(角川書店)。
https://note.com/travelingfoodlab/
ハヤシコウ(コウさん)
グラフィックデザイナー、バール「クインディチ」店主。自称日本人初のイタリア人。
https://www.instagram.com/lukacca/
柴田香織(セカシバ)
blue monkey room主宰者。現在東京と当ラボの二拠点生活中。今回の企画と執筆を担当。
https://note.com/blue_monkey_ks

※上記リンクはすべて外部サイトに移動します。

事前に、丸鶏ミーティング。

blue monkey roomでは、テーマが決まると参加者たちで事前にオンラインミーティングを行います。今回も「盛り上がる丸鶏料理」というテーマで実施。ミーティング前は「やっぱりローストチキンかな」「最近流行りのビアチキン的アウトドア料理も良いかも」などと思っていたのですが、メンバーは一様に反対でした。

ヒグチさんが「家庭のオーブンは芯温(素材の中心部の温度)が計れないから、ローストチキンは家でやると失敗しがち。外は焼けても中まで火が通っていないか、逆に焼きすぎて身がパサパサになってしまう」と言えば、コウさんも「僕は塩釜がいいと思う。軍鶏系の味の濃い鶏肉を“しっとり”焼きたい。軍鶏って美味しいけれどローストチキンだと硬くなる」と意気投合。

塩釜焼き…?なんだか凄そうです。「丸鶏って素材費もそれなりだし失敗すると痛い。外で焼けば楽しいからいいけれど、火が安定しないからこれも失敗しやすい。このラボでやるなら、確実な丸鶏料理を伝えたいよね」

結果、皆の意見の一致をみたのが「茹で鶏」でした。最も失敗なく鶏をしっとり仕上げ、残ったスープまで美味しくいただける、取りこぼしのない料理。茹で鶏をこんなソースで食べたい!というアイデアも次々出てきたので、ソース持ち寄りの茹で鶏に決定。塩釜鶏も茹で鶏も、目指すは“しっとりジューシー”です。

丸鶏の扱いには、それぞれの流儀がある。

注文した丸鶏は、青森シャモロックという地鶏です。大量生産されるブロイラーとの大きな違いは、まずは生育日数。鶏は2kg前後で出荷されますが、ブロイラーが40~50日で出荷されるのに対し、地鶏の生育日数は75日以上。青森シャモロックの場合は120日以上の生育日数です。父系が軍鶏、母系がプリマロックの交配種で、平飼い(ゲージ飼いでなく地面で育てる)で運動しながら独自の配合飼料でゆっくり育つので、身がしまって味わいに深い凝縮感があります。

今回は販売先と事前やり取りの上、チルド(冷蔵)で足(もみじ)付き、内臓もお願いしました。これもメイン研究員の希望によるもので、足はいい出汁が出るし、肝はソースにという算段です。丸鶏は冷凍品の扱いも多いのですが、その場合は1日かけて冷蔵庫で自然解凍しましょう。

丸鶏は、趣味性が出る素材。そう実感したのは、ラボ当日にヒグチさん、コウさん、それぞれの丸鶏の扱い方を見た時でした。下準備にはガジェット趣味も垣間見えます。

ヒグチさんは紐派。裁縫のようにポイントに針を刺して糸をスッと通し、最後に紐をきゅっきゅっと締めて手羽を内側にしまい込み、全体をタイトなポーションにしました。



針と糸を腿から入れて手羽辺りから抜きます。これは素人にはハードルが高そうです。

空いている穴部分を綴じ、足・お腹・頭を包み込むように縛ります。

一方のコウさんはサラシ派。サラシで隙間なく、鶏の体躯をぴっちりぎゅうっと締め上げていく。見たことはないけれど、ミイラを作っているみたいでした。



最初に鶏全体にオリーブオイルを塗り、塩釜の塩が入りすぎるのを防ぎます。かつ、焼き上がり後にサラシがひっつくのも防ぎます。

サラシの巻き上げ完成。やはりミイラのよう…。

「大事なのは、頭部とお尻の穴をしっかりとふさぐこと。内部に火が入ると焼きむら、身のパサつきの原因になります。」(ヒグチ)

それでは、茹で鶏、塩釜焼きの順に作り方です。