Monthly Food Letter 【Jan.】2021年、注目したい食傾向。

2021.1.13

新しい年を迎えました。2020年は時代の大きな変わり目と言われた一年。今月は2021年に注目したい食の話からです。

没入感とドラマ飯

2020年、オリンピックに合わせて日本は5G元年と言われていました。が、コロナ禍で延期措置。5G導入も鈍化したようですが、オンラインでの会議、オンラインイベント、オンラインショッピングが当たり前になりました。さらにコロナ禍で映像体験がパーソナル化。家族や誰かとではなく、個人で視聴する時間がとてつもなく増えました。同じドラマでも、誰かと見るのと一人で見るので圧倒的に違うのは没入感ではないかと思います。没入感とはあるものに集中して他のことや現実を忘れられる感覚で、快感の一種です。移動や接触が制限される生活で、没入感に救われたと感じた人も多かったのでは。

多くの人々がハマった韓国ドラマでは、食べ物や食べるシーンが、上手く演出されているなとわかりつつも、まんまと食べたくなっている。これはもう見事というしかないのですが、没入感覚で見ると食欲がさらに刺激されるようです。個人的にこれまで見た韓国ドラマで食べたくなったベスト3は、「愛の不時着」のチョゲプルコギ(ハマグリのガソリン焼き)、「梨泰院クラス」のチェユクポックム(豚肉のコチジャン炒め)、「椿の花咲く頃」のカンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け)でしょうか。

こうして並べてみると特別なご馳走はなく、どれも素朴な日常食です。韓国ドラマは人の感情の描き方が、日本のそれより丁寧な気がしていて、気持ちの表現と食の相互演出が実にうまい。まだまだ食べたくなってしまう食の宝庫のような気がしていますし、没入感に食は、一つの快楽なのかなと思います。

滅菌から共菌へ

存在の見えない菌の脅威にさらされる経験を経て、私たちは菌との共生を考えざるを得ない時代に入ったようです。食べ物に関しても同じではないかと思います。

私たちの体内には、見えないミクロな菌環境があります。善玉菌と悪玉菌、そしてその趨勢を伺う日和見菌。体全体の健康を決めるのは、半数以上を占める日和見菌です。彼らの動き次第で体が善玉優勢になったり悪玉が凌駕したり。この日和見菌を善玉へ導く活動が腸活で、そこで大事なのは滅菌ではなく共菌という考え方だと思います。

欧米のスーパーなどではプロバイオティクスというコーナーが設けられ、体に有用な作用をもたらす生きた微生物由来の食品が集められています。具体的にはヨーグルトや味噌などの乳酸菌豊富な発酵食品類。プロバイオティクスの語源は、プロ=共に、バイオシス=生きる。まさに共菌です。また、プロバイオティクスの餌となる食、プレバイオティクスも合わせて注目されるようになりました。プレバイオティクスは、水溶性の食物繊維食品やネバネバ系食品(ごぼうやキャベツ、オクラ、海藻など)。最近、生鮮食品としても出回るようになった菊芋も然りで、レストランでピュレにしたり、揚げてチップスで添えられたり、接する頻度が高くなっている注目食材の一つだと思います。

また、プロバイオティクスとプレバイオティクスを合わせて食べるシンバイオティクスという食べ方にも注目です。乳酸菌とその餌になる食材をセットで摂取する食べ方ですが、日本人に身近な例では、ワカメ(プレバイオティクス)の味噌(プロバイオティクス)汁がシンバイオティクス。サプリメントで販売されることも多い菌系食材ですが、料理として食べた方が喜びは大きいと思います。喜びは、食においてとっても大事なことで、これも大切にしたいこと。
他にも注目すべきものはまだまだあるのですが、長くなるのでこの辺りで。

R-gourmetへ、ようこそ。今月の皆様の食卓が美味しく、楽しくありますように。

イラスト:いとう瞳 文:柴田香織