日本酒の製造が始まった時期は定かではないとされていますが、稲作の定着以降であると考えられています。
文献としては八世紀の「大隅国風土記」がもっとも古いといわれており、登場するのは生米と水を口の中で噛み砕いたものを吐き出して発酵させた、「口噛みの酒」といわれるものです。
鎌倉時代にはすでに京都の伏見などでは、醸造した酒を販売する造り酒屋が誕生しています。
その後の精米技術の発達に伴い、米の磨き度合いを高めた吟醸酒が誕生し、健康的な日本食の人気が欧米で高まるのにつれて日本酒は世界各国でも注目を集めるようになっています。
おもな原料は「米」「水」「米麹」の三つで、「醸造用アルコール」などの副原料が加わわるタイプの酒もあります。
「米麹」は蒸した米に麹菌を繁殖させたもので、白米のでんぷんを糖化させることによって、酵母がアルコール分を生み出すもとを作る働きをします。
「米」は食用のものは異なる「酒造好適米」と呼ばれる、粒の中心にあるでんぷんから成る白い部分、「心白」の大きな種類のものが用いられ、代表的な品種として「山田錦」や「五百万石」などが挙げられます。
酒造りは精米からスタートします。
原料米の外側部分を削り落として雑味の素を取り除き、その後洗米して水に浸けた原料米を蒸して、麹菌をふりかけることで米麹を造り出します。
そこに酒母や「もと」と呼ばれる培養した酵母、蒸し米、麹を混ぜることで発酵が始まります。
澱引きを行った酒は火入れという過程を経て殺菌を行い、酒の種類に合わせた期間貯蔵されて酒質を安定させます。
そして出荷の直前に「割水」と呼ばれる加水調整作業を行って、瓶詰めされて日本酒が出来上がります。
酒税法上において日本酒には、製法や原料の違いによって分類される「特定名称酒」というジャンルがあります。
普段よく耳にする「吟醸」「大吟醸」「純米」「本醸造」といった分類は、「特定名称酒」の中のカテゴリとなっています。
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日本酒の飲用温度は、冷酒やひやのほかにも燗という飲み方があるため、ワインやビールと比べると幅広くなっています。
一般的には軽快なタイプの本醸造酒や生酒は5℃から10℃、香りの華やかな吟醸、大吟醸酒は10℃程度がよいとされています。
またコクのある純米酒はひやで飲む場合は15℃から18℃でといわれますが、燗にも適したタイプであり、その場合は「ぬる燗」といわれる40℃くらいから、「熱燗」といわれる50℃ほどの温度まで楽しみ方は様々です。
いずれにしても、お酒の香りや味わいをもっとも美味しく表現できる温度を見つけるのが、上手に楽しむコツになります。
お気に入りのお酒を色々な温度で試して、好みにあった温度を見つけて楽しんでみましょう。
吟醸系の香りの高いタイプは、まずは食前酒として楽しめます。
刺身や魚介類、野菜との相性がよく、前菜として楽しむようなお料理との相性がよいでしょう。
本醸造のような淡麗でスマートなタイプは、料理には万能に合わせることができます。
和食との相性だけでなく、中華や軽めの味わいの洋食などと一緒に楽しんでみるのもよいでしょう。
またコクと旨みの強い純米酒は、しっかりとした味の煮付や照焼きなど味の濃いものにも負けない風味を持っています。
バターやクリームを使った洋食との相性も、試してみたいタイプです。
保存のポイントとなるのは温度と光で、保存温度が高いと「老ね香(ひねか)」という独特のにおいが生まれてきます。
また直射日光を浴びるような場所に保存すると、色調や味、香りに変化が現れてきます。
これは蛍光灯などでも変化の速度に違いこそあれ同じ環境で、光に弱い日本酒の特徴が現れています。
家庭での保存の場合は、箱に入れたり新聞紙を巻いたりした状態で、温度変化のない場所で保存するとよいでしょう。
冷蔵庫の中に入れられれば、もちろんそれが一番です。
また火入れと呼ばれる殺菌の工程を経ていない「生酒」や、火入れが一度しか行われない「生貯」「生詰め」は冷蔵保存が必須です。
要冷蔵の場合、ラベルにその旨が記載されていますので、それに合わせた保存をするようにしましょう。
初しぼり
秋に収穫された米を次の冬に仕込む「寒造り」で造った酒。
出来たて、しぼりたてで火入せずに瓶詰めされる新酒の生酒。
あらばしり
しぼった時最初に出てくるお酒のこと。
ワイルドで香りが華やかな、フレッシュ感のある味わい。
中汲み
しぼりの中間地点のお酒で、「中取り」ともいう。
一般的に、味と香りのバランスが、一番ベストの状態といわれている。
夏吟醸
冬に絞られたお酒を火入れせずに低温熟成させ、初夏に出荷されるお酒。
加水してアルコール度を低くし、飲みやすくしている。「夏酒」ともいう。
秋上がり
冬季に製造した清酒が、貯蔵して秋になると酒質が向上すること。
また、その時期に市場に出されるお酒。
ひやおろし
冬に搾った新酒を春先に火入れして貯蔵し、夏を越してから加熱殺菌せずに瓶詰めしたもの。
秋の風物詩として珍重される季節限定の日本酒。
長期熟成酒
蔵元が管理して熟成させた日本酒。
シェリー酒、チョコレートのような深い香りと琥珀、焦茶のような色合いが特徴。
生もと造り
昔ながらの日本酒の造り方で、蒸した米、麹、水を丹念に櫂ですりつぶす「山卸」の工程を経る。
時間をかけて酒母を造る段階で、蔵付き酵母と呼ばれる酵母や乳酸菌が酒母に取り付いて、蔵の個性のある日本酒が生まれる。
山廃仕込み
「山廃」とは「山卸廃止もと」を縮めた名称で、山卸と呼ばれる、蒸し米、麹、水を混ぜてすりつぶす工程を省い育てた酒母。
育成に時間がかかるため手間がかかるが、それを使って仕込んだ酒は、アミノ酸が豊富で濃醇な味わいに仕上がる。
生酒
通常の工程では貯蔵前と瓶詰め前に二度ある、加熱処理を一切行わない酒。
保存の際は要冷蔵となるので注意が必要。
生貯蔵酒
生のまま貯蔵し、瓶詰め前の一度だけ加熱処理を行う酒。
生酒同様保存の際は要冷蔵となる。
生詰め
加熱したあとで貯蔵し、瓶詰め前には加熱処理をしない酒。
生酒同様保存の際は要冷蔵となる。
原酒
一般的な日本酒の製造工程にある加水調整をおこなわない酒。
そのためアルコール度数が高めに仕上がる。
斗瓶取り
酒袋を吊るし、自然に滴り落ちる滴を一斗瓶に保管して造るお酒。
大吟醸、純米大吟醸、品評会出品酒など高級酒に用いられる手法。
貴醸酒
水の代わりに一部、酒を使って仕込む酒。
多くは三段仕込みの最終工程で、水の半分弱ほどが酒で仕込まれる。
とろみが強く甘口の濃厚な酒に仕上がる場合が多い。
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