古くから港町として栄えたフランス南西部の都市ボルドーは、名高い銘醸ワインの産地です。
十二世紀にこの地を領土としたアキテーヌ女公の二番目の夫ノルマンディ公が、イングランド国王の座を継承しヘンリー二世となったため、ボルドーワインは大英帝国を経て世界に広く普及しました。
現在においても人気の高い高級ワインの産地で、長期熟成に耐える赤ワインや、世界を代表する甘口白ワインをはじめ、様々なタイプのワインを産出しています。
ボルドー地方は中央を流れる、ジロンド河の両岸のワイン産地を中心に広がっています。
左岸のメドック地区と右岸のサンテミリオン地区、ポムロール地区が赤ワインの中心的産地です。
両岸では主要ブドウ品種に違いがあり、前者はカベルネ・ソーヴィニヨン主体、後者はメルロ主体のワインが多くなります。これはそれぞれの土壌や気候条件などに起因していると考えられます。
また赤、辛口の白の銘醸地グラーヴ地区や甘口白ワインのソーテルヌ地区も名だたる銘酒を生んでいます。
1855年第1回パリ万博が開催されるに当たり、当時の帝政フランスの皇帝ナポレオン三世は、すでにイギリスでの名声を得ていたボルドーワインを農産部門の目玉とすることにしました。
そして流通に携わる仲買人組合のリストをもとに、第一級から五級までのシャトーが選ばれ、いわゆる格付けがおこなわれました。
格付けの対象となった赤ワインの造り手は、パリでの流通の中心であったメドック地区のシャトーとなりましたが、例外的にグラーヴ地区のシャトー・オー・ブリオンが一級のひとつに格付けされています。
この格付けはそれ以降ムートン・ロートシルトの一級昇格以外の変更はなされないまま、現在も公式に受け継がれています。
全61の格付けシャトーのうち、一級格付けとされているものは、「ラフィット・ロートシルト」「ラトゥール」「マルゴー」「ムートン・ロートシルト」「オー・ブリオン」のわずかに五つしかありません。
それが「五大シャトー」と呼ばれるものです。
1855年当初は「ムートン・ロートシルト」以外の四シャトーが一級格付けとされました。
その後百年以上の時を経て1973年に「ムートン・ロートシルト」が一級に昇格しています。
いずれも現在でも評価、人気ともに高く、ワインファン憧れのワインとして君臨しています。
五大シャトーの筆頭。エレガントさの際立つ銘酒。
力強い味わい、ラベルの塔の絵も人気のシャトー。
マルゴー村唯一の一級。女性的と表現される味わい。
1973年に異例の一級昇格。年代わりのアートラベル。
グラーヴ地区から一級に選出された異例のシャトー。
ラトゥールに隣接する畑から生まれる銘醸ワイン。
安定した品質を誇るレオヴィル御三家のひとつ。
80年代後半からその名声を取り戻した名門シャトー。
東洋風の塔が描かれたラベルも印象深い人気シャトー。
「薔薇の山」を意味するサンテステフの英雄的存在。
90年代終わりから急激に品質を回復させた注目銘柄。
「星の王子様」作者の先祖が所有したこともある名門。
印象的な金ラベル、タンニンのしっかりした味わい。
時にはシャトー・マルゴーに比肩する銘醸ワイン。
ハートマークのラベルで知られる人気のシャトー。
英国統治時代この地を収めたタルボ将軍の名を残す。
最先端セラー導入により復活を遂げた古豪シャトー。
一級シャトー「ラフィット」のロートシルト家所有。
帆船を描いたラベルで知られる「ベイシュヴェル」。
前オーナーはワインの権威アレクシス・リシーヌ氏。
グラーヴ地区では1953年に格付けがおこなわれました。
赤ワイン13銘柄と白ワイン8銘柄が特撰銘柄に指定されており、格付け内での等級による順位付けはありません。
また赤、白ともに指定されたシャトーもあれば、いずれかのみが指定されているシャトーもあります。
ソーテルヌ地区の格付けは1855年のパリ万博の際に、メドックの格付けとあわせておこなわれています。
一級、二級にシャトーを格付けする中で「シャトー・ディケム」だけは別格扱いとされ、最高位である特別第一級に指定された唯一のシャトーとなっています。
右岸の銘醸地区サンテミリオンでも、1955年にシャトーの格付けがされています。
特に優秀なシャトーは第一特別級として格付けされましたが、その中でも別格として「シュヴァル・ブラン」「オーゾンヌ」のふたつのシャトーは第一特別級Aとされています。
1855年以来不変のメドック地区と違い、サンテミリオン地区の格付けは約十年ごとに見直しがおこなわれており、格付けの変動が発生するのが特徴です。
最新の2012年の見直しでは「アンジェリュス」「パヴィ」が、格付け導入後初めて第一特別級Aへの昇格を果たしたシャトーとなり、大きな注目を集めています。
グラーブの最高峰。赤、白ともにこの地の代表的一本。
力強い骨格と評されるもうひとつのオー・ブリオン。
グラーヴ白を代表する銘酒。赤の評価も上昇中。
リッチな味わいの白にエレガントで軽やかな赤ワイン。
90年代半ばから急激に品質向上した注目のシャトー。
メドック地区
第一級
第二級
第三級
第四級
第五級
グラーヴ地区
特撰銘柄・赤
特撰銘柄・白
ソーテルヌ地区
特別第一級
第一級
第二級
サンテミリオン地区