サカナクションが6年ぶりにアルバム『834.194』をリリースします。シングル曲『新宝島』『グッドバイ』や『忘れられないの』などのタイアップソング、さらに新曲も含めた計18曲を収録。なぜアルバム発売が前作から6年も空いたのか、また本作に込めた想いを、山口さんらしい言葉で紡いでくれました。

ニューアルバム『834.194』のコンセプトは?

北海道出身の僕らは、アルバム2枚目までを北海道、3枚目から東京で制作しています。北海道で制作していた頃は、300人のキャパシティのライブハウスで1/3埋まっていればいいという時代でした。人に向けて創るというよりは、自分たちの課題と向き合い、周りの評価を気にせず好きなものを創っていたのです。 でも上京したことにより、ライフワークよりも“ライスワーク”として音楽を創らなきゃいけない瞬間が来ました。サカナクションはクラスに1〜2人いるような濃い音楽好きの集まりなので、歌謡やポップスを研究しながら、好きなアンダーグラウンド系と組み合わせて、良い音楽を創ることをコンセプトにしていこうと考えたのです。
無作為に創っていた時代から、作為性を持って創っていく時代へ突入し、前作の『sakanaction』というアルバムはオリコン1位を獲得しました。さらに『紅白歌合戦』にまで出場し、そこを目指して活動していたわけではない僕らがその域に到達したことで、なんとなく居心地が悪いというか……。外をマスクして歩かなきゃいけなくなったり、今まで通り生活できないことに違和感があったのです。それまではあぶらとり紙を1枚1枚重ねるように少しずつセールスを伸ばし、ファンがちょっとずつ増えていき、ライブ会場のキャパシティを徐々に大きくしていた僕らが、あの作品をリリースしたことで、ありがたいことではありますが、自分たちの活動が想像を超えた規模になりました。
1枚ずつ積み重ねていた時代に戻ろう。そんな想いを込めて、アルバムのあとに『グッドバイ』というシングルをリリースし、6年間の沈黙に入りました。『834.194』というタイトルには、実は郷愁が込められています。無作為に音楽を創っていた純粋な気持ちと、そこに戻りたい感情、そして自分達が手に入れた作為性の距離をこのアルバムで表現したいと思いました。

DISC-1とDISC-2それぞれのコンセプトは?

北海道には、が降ります。雪は音を吸収するので、急に街が静かになるんです。自分が雪を踏む足音だけが聞こえる、あの環境を知っているからこそできる音がある。一方、東京ではコンクリートの上を吹いてくる風を浴びている。坂が多く、ゴミ臭い匂いがする。都会でありながら、実はローカルの集合体でもある東京で、生き残っていくために創った音がある。そこにはやはり、差があるんですよね。このアルバムの中でそこを旅することができたらな、と思いました。

アルバムを制作中、ずっとパソコンに向かって詞を書いていたら、お尻に床ずれを起こしたとか……。

寝る時も椅子の上で、起きてすぐ歌詞を書いて……とやっていたら、床ずれを起こしちゃいました(笑)。僕はとても不器用で、かつ頑固な性格なので、自分の納得いくところまでたどり着かないと世に出したくないんです。その分、どうしても時間がかかってしまいます。特に今回はシングルの収録が多い分、アルバムとして完成させるにはいろんな曲でピースを埋めていかなければいけない。今までよりも大変でしたし、それこそ床ずれを起こすくらい長い時間をかけて創りました。
僕は1曲の歌詞を書くために、何パターンも書くんですよ。最多の『忘れられないの』だと、180パターンも書いたほどです。そうやって創っていくと、自分で書いた詞を組み替えて違う意味になった瞬間、ドキッとすることがあります。想像していなかったところに着地した感動がほしくて創っているので、なかなかゴールにたどり着けないことも。その分、たどり着いた時の感動は大きいですけどね。

山口一郎さん(サカナクション)

新曲のレコーディングはいかがでしたか?

「好きなものを創る」の「好き」には種類がありますし、状況によって違います。ただ、自分たちの中で変わらないもの……、変わっていくのですが、変わらないまま変わるというか。それを再発見できたと思っています。

初回限定盤のBlu-ray/DVDには、ファンからのリリース要望が多かった『サカナクション デビュー10周年記念イベント"2007.05.09 - 2017.05.09"』が収録されていますね。

普段の僕らのコンサートはMCがなく、本編が始まったら音が途切れず鳴り響くのですが、10周年のライブでは1曲ずつ振り返りながら歌っていきました。僕らの曲と共に生きてきてくれたリスナーの方々と、軌跡を噛みしめながら演奏できたことはすごく感慨深かったです。

このアルバム、どんな風に味わってもらいたいですか?

ユーミンさん(松任谷由実)とお話しする機会があり、その際に「僕はポップスを創りたい」と伝えたんです。するとユーミンさんは「あなたはもう、できているじゃない」とおっしゃってくれました。「今じゃなく、5年後に評価されるものがポップスなのよ。敏感な人たちがそこに反応することによって、みんながその良さに気づくの。未来で評価されるものを創ろうと取り組んでいるのだから、あなたはもうできている」と言っていただきました。 音楽の聴かれ方が変化していく中で、CDや作品を創り続ける意味やコンセプトが重要になる時代が来ると思います。未来に評価されるためには、曲だけじゃなく届け方や伝え方もアップデートしていきたい。このアルバムは、その序章になるのかもしれません。もしかしたらアルバムという形態で発信するのは、今回が最後になるかもしれない。100万セールスやドームツアーみたいな形でたくさんの人に評価されるよりも、僕は音楽の伝え方をアップデートすることで音楽史に爪痕を残せたらと考えています。だからこのアルバムを聴いて、違った感覚を手に入れていただき、サカナクションの仲間になっていただけたら嬉しいです。

山口一郎さん(サカナクション)

オフはどのようにして過ごしていますか?

釣りをしている時が一番、音楽のことを考えずにいられる時間です。それがすごく重要ですね。あとは、寝ているかな。1人の時間が好きなので、1人で夜をどう乗りこなすかの天才だと思っています(笑)。

釣りは海釣りですか? それとも湖?

釣りがオリンピック種目になったらそっちへ行っていたんじゃないかと思うくらい、多種多様な釣りをやってきました。釣りへの情熱は音楽と同じくらい、常にあります。だからどんな釣りでも、行きますね。

最近、行きましたか?

がっつりとは行けていないのですが、夜釣りが好きなので、夜にちょこっと行ってみたりはしています。釣れなくてもいいんです、糸を垂らすだけで充分なので。

そして、楽天として伺います。ネットショッピングの経験はありますか?

この間、楽天さんで外へ水を撒くホースのノズルを買いました。ガレージを掃除する用のノズルが壊れてしまい、同じメーカーの物を探していたら楽天さんで見つけたので。 僕は出不精なので、ネットで買うことが多いです。本やCDは基本的に自分の目で直接見て買うことが多いですが、ネットでしか手に入らないものもたくさんあります。例えば古き良き、美しいものとか。もともとオフライン世代の僕らが、オンラインを手に入れたことで、知識をより広げられるんだと感じますし、そういう形で利用させてもらっています。

最後に、この記事を読んでいる方へ、メッセージを!

サカナクションは、6年ぶりにニューアルバムをリリースすることになりました。僕らを知らない方にも、このアルバムを通じて知っていただきたいと思っています。今は気分じゃなくても、みなさんが生きているうちにいつか耳に届くよう頑張りますので、ぜひ名前だけでも覚えていただければと。

山口さんの愛用品や、オススメのアイテムはありますか?

ウェアラブルスピーカー

ウェアラブルスピーカー
肩にかけられるスピーカーです。イヤホンやヘッドホンだと遮音性があるので外部の音が聞こえなくなりますが、これだと肩にかけられるので、人と会話をしながら音楽を聴くことができます。特にお薦めは、電話で使うこと。電話をすると片手が塞がり、スピーカー機能を使えば離れたら聞こえなくなります。でも肩にかけたスピーカーなら両手で作業をしつつ電話ができるし、その状態で玄関チャイムが鳴っても聞こえます。実はこの機能にものすごく可能性を感じていて、コンサートで僕らがいつも気になるのは、曲間で大きなスピーカーからしか音を出せないこと。でもウェアラブルスピーカーなら、森のざわめきの音をリスナーの近くで出しながら、映像を見せることができます。コンサートの演出に使える気がして、開発に注目しています。

COMME des GARCONS(コム デ ギャルソン)

COMME des GARÇONS(コム デ ギャルソン)
ファッションに対して注目する際、流行よりも考え方に興味を持ちます。最終的にいつも着てしまうのが、COMME des GARÇONSの洋服。デザイナーは川久保玲さんという、80年代に日本人の考え方みたいなものを世界に発信して評価された人です。COMME des GARÇONSと川久保玲さんが創るものは、好きなミュージシャンがCDをリリースするのと同様に、追いかけてしまいます。ライブ衣装でもプライベートでも、着ることが多いです。

宮崎県の餃子

宮崎県の餃子
太宰府天満宮の方にお世話になっており、その方からお歳暮で宮崎県の餃子をお送りいただきました。100個入りで「食べきれるかな」なんて思ったのですが、あっという間に食べきりました。それくらい、美味しい。焼き方も違うんですけど、スーパーで売っているものとはこだわりや込められた想いが違う、というか。

サカナクション

サカナクション

2005年に活動を開始、2007年にメジャーデビュー。

文学性の高い歌詞と郷愁感あふれるフォーキーなメロディ、バンドのフォーマットからクラブミュージックのアプローチをこなすなど独自のスタイルを持つロックバンド。様々な受容性を持つ楽曲はリリースするたびに高く評価され、2018年3月にリリースしたベストアルバム「魚図鑑」では、オリコンウィークリーチャート初登場1位を獲得。

全国ツアーは常にチケットソールドアウト、2019年には全国アリーナにて6.1chサラウンドシステムを導入したライブツアーを実施。出演するほとんどの大型野外フェスではヘッドライナーで登場するなど、現在の音楽シーンを代表するロックバンドである。

第64回NHK紅白歌合戦に出場、第39回日本アカデミー賞にて最優秀音楽賞をロックバンド初受賞するなど、多様な活動を高い表現で実現し、評価されている。

また、「ミュージシャンの在り方」そのものを先進的にとらえるその姿勢は常に注目を集め、近年では各界のクリエイターとコラボレーションを行いながら、音楽と様々なカルチャーが混ざり合うイベント"NF"を2015年スタートさせている。

MEMBER
サカナクション
山口一郎(やまぐち・いちろう)Vo/G
岩寺基晴(いわでら・もとはる)G/Cho
草刈愛美(くさかり・あみ)Ba/Cho
岡崎英美(おかざき・えみ)Key/Cho
江島啓一(えじま・けいいち)Dr

ヘアメイク:根本亜沙美、スタイリスト:三田真一(KiKi inc.)

私のオススメ

ウェアラブルスピーカー

ウェアラブルスピーカー
肩にかけられるスピーカーです。イヤホンやヘッドホンだと遮音性があるので外部の音が聞こえなくなりますが、これだと肩にかけられるので、人と会話をしながら音楽を聴くことができます。
特にお薦めは、電話で使うこと。電話をすると片手が塞がり、スピーカー機能を使えば離れたら聞こえなくなります。でも肩にかけたスピーカーなら両手で作業をしつつ電話ができるし、その状態で玄関チャイムが鳴っても聞こえます。実はこの機能にものすごく可能性を感じていて、コンサートで僕らがいつも気になるのは、曲間で大きなスピーカーからしか音を出せないこと。でもウェアラブルスピーカーなら、森のざわめきの音をリスナーの近くで出しながら、映像を見せることができます。コンサートの演出に使える気がして、開発に注目しています。

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COMME des GARCONS(コム デ ギャルソン)

COMME des GARÇONS(コム デ ギャルソン)
ファッションに対して注目する際、流行よりも考え方に興味を持ちます。最終的にいつも着てしまうのが、COMME des GARÇONSの洋服。
デザイナーは川久保玲さんという、80年代に日本人の考え方みたいなものを世界に発信して評価された人です。COMME des GARÇONSと川久保玲さんが創るものは、好きなミュージシャンがCDをリリースするのと同様に、追いかけてしまいます。ライブ衣装でもプライベートでも、着ることが多いです。

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宮崎県の餃子

宮崎県の餃子
太宰府天満宮の方にお世話になっており、その方からお歳暮で宮崎県の餃子をお送りいただきました。
100個入りで「食べきれるかな」なんて思ったのですが、あっという間に食べきりました。それくらい、美味しい。焼き方も違うんですけど、スーパーで売っているものとはこだわりや込められた想いが違う、というか。

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