Monthly Food Letter 【Dec.】今月ナニ食べる?
〜フランチャコルタ、
ピェンロー鍋、かぶら寿司〜

2021.12.1

始終食べることを考えているフードナビゲーターの個人的な食の備忘録です。毎月、こんなものを食べてみよう、飲んでみよう、作ってみようというつぶやきを、徒然なるままに書き留めます。

フランチャコルタ

ようやく他人と一緒に食卓を囲む喜びを祝して、あるいは自分への労いに、今年の年末はスパークリングワインをいっぱい飲みたい気分です。あらためて考えてみると、年々スパークリングワインを飲む量が増えました。それはスパークリングの選択肢が増えて、特別な時のシャンパーニュに限らず、気分や事情にあった良い泡が身近になったからだと思うのです。特に飲む機会が増えたのがイタリアのスパークリングワイン、フランチャコルタ。北イタリアのロンバルディア州、フランチャコルタというエリアで造られるワインで、シャンパーニュと同様、瓶内二次発酵でしっかり熟成させたスパークリングです。大きな産地ではないのですが、バラエティは豊か。シャンパーニュタイプの酸がしっかりしてミネラル感たっぷりなものから、ガス圧が弱めで優しい泡の「サテン」という独自カテゴリー、「ドサッジョゼロ」という補糖なしのタイプ(シャンパーニュなどでは瓶内二次発酵を促すのに補糖することが多い)は、ヘルシーで罪悪感なく飲めると人気です。12月、普段よりたくさん泡が飲みたいという方には押さえておいていただきたいスパークリングワインです。

ピェンロー鍋

舞台美術家で、イラスト入りエッセイストとしても有名な妹尾河童さんの著書「河童のスケッチブック」の裏表紙で紹介されていて知ったのが「ピェンロー鍋」(中国の白菜鍋)でした。中国広西省の郷土料理だそうですが、白菜を一気に使うならこの鍋をおいて他になし。年に2回以上は作ります。あるグルメ雑誌では、1992年にこの鍋を初紹介して以来、読者の支持率があまりに高くて4回目の掲載で殿堂入りになったとか。レシピが数多(あまた)ある中であっぱれなロングセラーレシピです。材料は白菜、豚バラ肉、鶏もも肉、干し椎茸、春雨。出汁の素的なものは一切使用せず、素材から出る味とごま油の風味付けだけ。食べる時は、塩と一味唐辛子で自分好みの味にします。食べだすと止まらない。リピーターが多いのは、手に入り易い食材ばかりで失敗がなく、期待以上の美味しさが得られるからだと思います。リピーターの一人として付け加えるならば、塩はにがり多めの複雑な味の海塩を使うと、一段と美味しくなる気がします。例えば沖縄の「粟国の塩」などです。

かぶら寿司

一般的には蕪に切り込みを入れ、塩鰤(エリアによっては塩鯖)を挟んで麹漬けにした発酵食がかぶら寿司。北陸地方でも石川県金沢と富山県西部、元加賀藩エリアで見られる郷土料理です。鯖の場合は大根に乗せて挟まないとか、地元で聞き込みすると諸説が面白い。昔は家庭で作ることが多かったけれど、今は地元でも専門店から買うことが多くなったようです。11月ごろから仕込み始めて年末までに届けられ、正月料理として楽しむとのことなのですが、私にとってはシーズンに一度は食べたい冬の味です。魚の熟れ寿司は苦手な方も多いと思いますが、かぶら寿司は、蕪でサンドされた鰤の断面も端正。熟れ寿司文化圏外の人でも、食べやすいと思います。北陸の麹が繊細で、発酵の香りが穏やかなのも食べやすさなのかと。私は特に、富山県南砺地方の身質が緻密で柔らかな白蕪に、鰤を挟んだパターンが好きです。東京ではまだまだ知られざる存在のようなので、ネットでのお取り寄せが良さそうです。

R gourmetへ、ようこそ。今月の皆様の食卓が美味しく、楽しくありますように。

イラスト:ヒラノトシユキ 文:柴田香織