Monthly Food Letter 【Sep.】今月ナニ食べる?
〜シャインマスカット、
黒豆の枝豆、菊の花〜

2021.9.1

始終食べることを考えているフードナビゲーターの個人的な食の備忘録です。毎月、こんなものを食べてみよう、飲んでみよう、作ってみようというつぶやきを、徒然なるままに書き留めます。

シャインマスカット

今のブドウ業界で一人勝ちの品種です。品種登録は2006年なので、もうロングセラーの域でしょう。食味よし、日持ちよし、作ってよしと三拍子揃っています。作ってよしというのは生産者さんから聞いた話で、病気に強く育てやすい。日持ちよしは、流通に好都合。聞けば聞くほど、そんなうまい話が、と思ってしまうのがシャインマスカットです。この品種は、県の農業試験場でなく国立の農研機構果樹研究所で開発されたため、各地に苗木が広がりやすかったのも人気を広げた要因のようです。美しいマスカットグリーンにパリッとした食感、嫌味のない甘さで種がなく食べやすい。非の打ち所がない分、私などはそのまま食べていると、完璧すぎて飽きてしまう。それで昨年はまったのが、サラダや、乳製品(ヨーグルト)などと一緒に食べる方法。シャインマスカットは酸があまりないので、レモン汁を搾り、セロリやマッシュルームと和える、ヨーグルトと一緒に食べるなどすると、バランスよく他を引き立てます。主役もはれるし脇役もいける。やっぱりできすぎなのですが。

黒豆の枝豆

枝豆のシーズンがどんどん長くなっています。夏の風物詩のはずが、最近は10月ごろに味がのる晩成種も増えています。こうなると秋に美味しい枝豆も試したい。枝豆はたっぷりの湯で茹でると豆の旨味が抜ける気がして、いつしか無水鍋や鉄鍋で蒸し焼きにして食べるようになったのですが、この食べ方で真価を発揮するのが晩成種の枝豆だと思います。蒸し焼きにすると、豆のほっくり感が強調されて栗のような雰囲気を出す。その最たるものが、黒豆品種の枝豆です。9月中旬ごろからは、「紫ずきん」という丹波黒豆を枝豆用に改良した枝豆が出てきますし、その後には親品種である丹波篠山産黒豆の枝豆が出回ります。栗は剥くのが大変ですが、ちょっとだけ栗っぽいホコホコした黒豆の枝豆が、小さい秋を届けてくれます。

菊の花

3月3日の桃の節句、5月5日の端午の節句などと比べ、日本でメジャーにならないのが9月9日の重陽の節句。節句の考えは中国から日本の朝廷に導入され、中国では奇数が吉数なので9月9日は大吉数です。しかし、日本では4や9が避けられるからでしょうか。9月9日はスルーされている気がします。あわせて重陽の節句にお約束の食べ物、菊の花も影が薄い。近年、世界のファインダイニングと言われるカテゴリーのレストランでは、色が美しく、ちょっと苦味や酸味のあるエディブルな草花が大人気。他人があまり料理に使わない花、見過ごされている草花を再発見して使う傾向があります。故に、菊の花にももっとチャンスがあると良いなと。鮮やかな黄色は映えるし、花を丸ごと使った工芸茶も美しい。日本人の場合、菊の御紋のイメージや、鑑賞用のイメージが強いのかもしれません。山形では食用菊を、御紋を食べるのはもってのほか、ということなどから「もってのほか」と呼びます。この花をこの季節、飲食のシーンでもっと美しく楽しく使える気がしています。

R gourmetへ、ようこそ。今月の皆様の食卓が美味しく、楽しくありますように。

イラスト:ヒラノトシユキ 文:柴田香織