KITCHEN LABO
今月のラボ
『国産レモン丸ごと!コース料理と保存食』
2021.6.16
自然豊かな都市近郊のフードラボ「blue monkey room」に集まった、食のスペシャリストたちが繰り広げる、ちょっぴりマニアックな部活動。blue monkey(青い猿)とはマヤ暦の星人の一つで、楽しむことが大好きです。
レモンが人気です。料理やお菓子、小説のタイトルにヒット曲、最近はホテルまで。※2016年香川県豊島に「檸檬ホテル」開業 レモンで人は元気が出たり、キュンとなったり。レモンはモノを超えて、もはやコトなのかもしれません。キッチンラボのメンバーもレモンが大好き。今回は、国産レモンをとことん使い、コース料理に挑戦です。
INDEX
レモンの特色と使い方。
夏のイメージのレモンですが、国産露地栽培の収穫シーズンは秋から冬。10月ごろからグリーンレモンが出回り、次第に黄色の完熟レモンに、ピークを過ぎてもゆるゆると夏前まで採れます。最近は、通年出荷のハウスレモンもあるので、国産レモンも年中入手可能になりました。栽培方法が明らかで、皮まで安心して食べられることから人気が拡大。おすすめは、まとめ買いしたフレッシュレモンでまずは料理や飲み物を楽しみ、余ったら漬け込む、あるいは冷凍などの裏技で保存する。今回は研究員4人の総力戦でレモンに臨みました。
- 今回の研究員。左上から時計回りにコース担当
- 前菜担当:平野佐知(さっちい)
- この4月よりカラコルフードネット(湘南料理塾)主宰。
https://www.instagram.com/sachirano/
- パスタ担当:いこまゆきこ(いこまさん)
- いこまゆきこお料理教室主宰。
http://ikomayukiko.com/
- メイン担当:後藤初美(はつみさん)
- 料理家&フランス食文化研究家
http://www.hatsumi-823.com/prof/index.html
- デザート担当:西山朗子(あっこさん)
- フランス菓子の教室「ル プティ シトロン」主宰。
http://www.akiko-nishiyama.com/
レモンを使う場合の主な形状と使い方を挙げてみると
くし切り:添える(揚げ物や生牡蠣)、塩レモン、冷凍
スライス:飲料、カルパッチョ、サラダ、炒め物、スイーツ
果汁:飲料、菓子
皮(すりおろし):サラダ、パスタ、菓子
そして、料理や飲料におけるレモンの役割は、
・酸味を出す
・苦味を足す
・香りを楽しむ
・味を引き締める
・臭みを隠す
・色味
・リフレッシュ
といったところでしょうか。一人七役は多彩です。他の柑橘でも類似する効果を期待できますが、総合点で使いやすさ、華もあるレモンが優勢な気がします。また、皮に香気成分やポリフェノールが含まれているので、レモンを使い切るなら、皮も生かす方法を知っておくと良さそうです。
レモンは肉や魚などの食材と合わせれば、臭みを抑えて酸味や少々の苦味、爽やかな香りを加えます。そして、ハーブやスパイスと絡みやすいことは大きな特色。そんなことを頭に入れて、コース料理を展開してみました。
前菜
レモン鶏
(レモン果汁、皮、実)
中国雲南省傣(タイ)族の名物料理のアレンジです。現地では丸ごと茹でた鶏肉、雲南レモン、生の唐辛子とハーブでシンプルに仕上げるそうです。たっぷりのハーブとレモンのグリーンのノートで清涼感が増します。雲南省のレモンは、グリーンレモンの様な香味があるので、日本でグリーンレモンのない時期は、ライムやスダチを加えます。お好きなハーブをなんでもミックスして良いのですが、欠かせないのがミント、バジル、パクチーの3つです。
RECIPE
材料(2人分)
- 鶏肉(モモ肉 or ムネ肉 ) 1枚
- *鶏肉は大きめがおすすめ
- 水 1ℓ
- 塩 小さじ1
- 生姜、長ねぎ(青い部分でOK) 少々
- <鶏肉の漬け込みたれ>
- 鶏肉のゆで汁 150ml
- 砂糖 小さじ1
- 塩 小さじ1
- レモン汁 1/2個分
- ライム汁 1個分
- 黒こしょう 5粒
- コリアンダーシード 10粒
- *コリアンダーパウダーでも可
- 花山椒(あれば) 5粒
- きゅうり 1本
- 赤玉ねぎ 1/2個
- お好みのハーブ たっぷり
- *スペアミント、パクチー、バジル、
ディル、フェンネル、大葉など
- <仕上げのたれ>
- 鶏肉の漬け込みたれ 大さじ3
- 魚醤 小さじ1/2
- 太白ごま油 大さじ1
- レモン 1/2個
- ライム 1個
- 赤唐辛子 1/2本
- *乾燥唐辛子の場合、水で戻して使う。
- 青唐辛子 1/2本
- スダチなどお好みの柑橘 お好みの量
作り方
① 鍋に鶏肉、水、塩、生姜、長ねぎを入れて中火にかける。沸いたら弱火にして5〜10分茹で(ムネ肉なら5〜6分、モモ肉なら10分ほど)、火を止めてそのままあら熱がとれるまで置く。
② <鶏肉の漬け込みたれ>の材料を合わせる。ジッパー付きビニール袋などに①の鶏肉と漬け込みたれを入れ、密封して冷蔵庫で1〜2時間おく(一晩おいてもOK)。
③ きゅうりは縦半分に切ってから斜め切りに、赤玉ねぎは薄切りにする。ハーブは手でちぎるか包丁でざくざく刻む。②の鶏肉を手でさいて、食べやすい大きさにする。
④ ②の漬け込みたれを使って<仕上げのたれ>の材料を混ぜ合わせる。レモン、ライムは厚めの半月や、くし型に切って絞り、そのまま皮ごと加える。唐辛子は種を抜いて刻む。
⑤ ③と④をざっくりと混ぜて器に盛り、たれも残さずにまわしかける。さらにお好きな柑橘をしぼりかけてもよい。
*残った鶏肉のゆで汁は、お好きな野菜を加えてスープにして食べるのがおすすめ。
▶︎レモン使いのポイント
イタリア料理のコースには、前菜の後にプリモというカテゴリー(パスタ、リゾット、スープ)があります。今回はイタリア料理のコースではないのですが、レモンのパスタを食べたかったので、前菜とメインの間にパスタを入れました。細麺と太麺、それぞれに合うレモンパスタです。
パスタその①
カラスミとレモンのパスタ
(レモン果汁、皮)
「魚卵×レモン×オリーブオイル」は鉄板の組み合わせ。この組み合わせを覚えておきましょう。オリーブオイルとレモンには、臭みのマスキング効果があり、魚卵の旨味だけを引き出します。レモンは仲介役となり、個性の強い食材を他の食材と繋がりやすくしてくれます。このレシピで個性的な食材はカラスミです。レモンで味を繋げたら、細い麺にたっぷりと絡ませます。
RECIPE
材料(2人分)
- カペリーニ 120g
- からすみ 50g
- E.V.オリーブオイル 大さじ5
- レモン 1個
- 塩 適量
作り方
① レモンの皮をすりおろしておく。
② からすみはすりおろし、E.V.オリーブオイル大さじ4と混ぜ、レモン汁を加える。
③ 茹で上がったパスタとE.V.オリーブオイル大さじ1を②に加え混ぜる。器に盛り、すりおろしレモンをかける。
▶︎レモン使いのポイント
レモンの皮をたっぷり、ラクラクすりおろすのに便利なのがフードグレーター。他の柑橘類やチーズにも使えるので一つ常備しておくと便利です。
ITEM
¥ 258(税込)
※商品情報は2021年5月26日時点の内容です。
パスタその②
牛肉とレモンとセロリのパスタ
(レモンスライス)
このパスタでは、レモンを具材として使います。具材として食べやすいよう、薄めのスライスをさらにカット。牛肉に合わせて噛みごたえのあるパスタ、キタッラを合わせました。ボリューム感のあるメニューを、セロリの香味とレモンの香気が軽やかにまとめます。
▶︎レモン使いのポイント
RECIPE
材料(2人分)
- キタッラ(またはフェットチーネ) 160g
- *太麺で具材と絡みやすいタイプで。
- 牛肉 100g
- セロリ 1本
- レモン 1個
- にんにく 1片
- E.V.オリーブオイル 適量
- 黒胡椒 適量
- 塩 適量
作り方
① セロリは繊維を断ち切るように薄切りにする。
② レモンは薄い半月切りにする。
③ オリーブオイルに潰したにんにくを入れ、火を入れてにんにくの香りがたったら取り出す。
④ 塩・胡椒した牛肉を焼く。セロリの茎、レモンを加えソテーする。
⑤ 茹で上がったパスタとセロリの葉を加え、パスタの茹で汁、オリーブオイルを加えて乳化させ、全体を和える。
メイン
イカのバスク風ファルシ レモンソース
(熟成塩レモン、レモンペースト)
豚挽肉と発酵塩レモン(熟成)※作り方後述 を合わせた餡をイカに詰めます。塩レモンは熟成させると発酵の旨みが加わり、味に凝縮感が出て肉と好相性。イカは焼き縮みするので、中に入れる豚挽肉は水で練ってふんわりさせ、詰めすぎ注意。詰めすぎると焼いている間に肉餡が外に中身がはみ出てしまいます。
RECIPE
材料(2人分)
- やりいか 1杯
- *25-30cm前後
- 豚ひき肉 100g
- タイムの葉 1本
- 冷水 15ml
- *氷水など
- 塩レモン 3g
- *または塩1gとレモン皮すりおろし
- 黒胡椒 適量
- パプリカパウダー 適量
- <ソテー用>
- オリーブ油 10ml
- 白ワイン 50ml
- <仕上げソース>
- 水 15-30ml
- レモンペースト(甘) 大さじ1/2
- *作り方後述
- 醤油 小さじ1/4
- レモン果汁 小さじ1
- 塩 ひとつまみ
作り方
① いかはたっぷりの水を張ったボウルにいれ、胴体と内臓をはずす。胴体は、プラスチック状の硬い芯をはずす。足の間にあるくちばしを取る。目玉を取り出す。胴体の内側を洗い、ぺーパーで水分を拭き取る。耳、足は2−3つに切り分ける。
② ボウルに豚ひき肉、たたいてみじん切りにした塩レモン、黒胡椒、パプリカパウダー、タイムの葉、冷水を合わせて良く練り、ふんわり柔らかい生地にまとめる。
③ いかの内側に②を少しずつ、8分目まで詰める。(または楊枝で留める。)
④ フライパンにオリーブオイルを熱し、いかをいれて両面を焼き、全体が白っぽくなったら白ワインを加えて蓋をして8分蒸し焼きにする。
⑤ 焼き上がりに足と耳の部分を加えて火を通し、いかを取り出す。
<仕上げのソース>(デグラッセ)
① フライパンに分量の水を加えてゴムベラ等で旨味をこそげとり、レモンペースト(甘)とレモン果汁、醤油、塩を加えて軽くとろみがつくまで30秒ほど加熱する。
② いかを厚さ2cm程度に切り分けてソースを添える。
注意)ソースに醤油を入れすぎない。
▶︎レモン使いのポイント
保存食として作り置きした自家製塩レモン※作り方は後述を豚ひき肉と一緒に餡にします。塩レモンは包丁でたたいてペースト状にすると混ぜやすいです。