KITCHEN LABO 今月のラボ『餃子大研究』

2021.1.20

生地(粉)違いの餃子を比較する。

ここからは研究結果です。まずは、基本具材の豚ニラを三種の粉違いの生地で、中国餃子の基本調理法「茹でる」(水餃子)で比較試食しました。生地特性から合う調理法を考えてみたいと思います。

右からA薄力粉、B強力粉、Cスペルト小麦の水餃子。餡は全て豚ニラです。

茹でるを基本に考えた場合、優位性のあったのは強力粉でした。噛みごたえ、そして食べた時に、餡から美味しいスープがほとばしる。その魅力が圧倒的です。

茹で餃子は、餃子が浮かんで、皮に透明感が出てきたら出来上がり。

思うに、日本の餃子が焼きデフォルトになっているのは具材の味よりも、皮のパリパリ食感に嗜好が集中しているからではないかと。なぜそこにいったかといえば、市販の餃子の皮に最も合った調理法が焼きだからだと思います。手作り餃子の出来立ての皮は水分値が高く、パリッとさせるのが難しい。強力粉は焼くと特に油っぽくなり、せっかくの粉の風味も失われるようでした。

焼き餃子。油を敷いて餃子を並べたら、お湯を少し加えて蓋をして蒸し焼きに。最後は蓋をとって水分がなくなったら完成。

そして、ヘルシーに食べたいのなら蒸しです。餡の具材の旨みが茹で汁に流出することなく、栄養素もキープして食べられる。グルテン質が弱く、胃に負担をかけないスペルト小麦の皮で作れば、最強のヘルシー餃子となるでしょう。ただ、焼きや茹で餃子と一緒に比較試食するとアピール力は弱く、どこか物足りなさを感じてしまったのは事実です。

蒸篭で約10分間蒸します。

餡(具材)から考える、
調理法と生地(粉)。

次に、餡(具材)違いの豚ニラ、豚大根、ニラタマにどのような調理法、どのタイプの粉(A 薄力粉、B 強力粉、C スペルト小麦)が合いそうかを予想して調理してみました。

肉×野菜の組み合わせは、粉と調理法の組み合わせを外さなければ、全て美味しくできると思います。ニラタマは卵を炒めているので、茹でて水っぽくなるのを避けるには、蒸しと焼きが良いかと。実際やってみて良かったのは、豚ニラ×茹で×強力粉、豚大根×茹で×強力粉、ニラタマ×蒸し×薄力粉(orスペルト小麦)の組み合わせでした。

今回使った強力粉は、小麦の表皮を含んだ石臼挽きで、非常に風味のある粉。粉は表皮の灰分を含むと具材との味の一体感が出て、茹で餃子は特に旨みを感じました。

炒め物にして合う組み合わせは、餃子の餡にしても絶対美味しいですよ。(シン)

汎用性のある図にしてみると

のような感じでしょうか。まずは主役の具材、肉・魚などの動物性タンパク質、あるいは卵など植物性タンパク質を決め、これに合う従の具材を考える。野菜同士であれば香りの強弱で主従となります。シンプルですが、組み合わせは無限に考えることができます。

改めての餃子考。

日本の餃子は、調理法も餡の具材もバリエーションが少ないとかねがね思っていました。それはやはり、餃子の皮という便利な既製品の存在が大きいのかもしれません。巷のレシピを見てみても、餃子の皮は材料に入っているものがほとんど。今回実験してみて、皮(粉)が調理法を決めると言って過言ではないと思います。皮を手作りしたら、餃子の調理法は自然に広がる。中国では、季節の野菜をよく餡にするそうです。日本にも、季節と餡のような餃子カルチャーがあっても良いと思います。

そしてドリンク。ビール以外の選択肢があるといい。今回はニラを多用しているにも関わらず、研究員がワイン好きということもあって、ニラでもいけるワインを選んでみました。軽いタンニンのあるロゼ、雑味も旨みの一部のようなオレンジワインは合うと思います。餃子はもっと自由に、でもシンプルに。皆で皮作りからすると、それだけでも楽しい食べ物です。