Monthly Food Letter 【Dec.】今年は日本のパネットーネ元年!?

2020.12.02

全世界が想定外な災禍に見舞われた一年でしたが、気がつけば師走の音が聞こえてきました。どんな年も時は平等に刻まれます。今年の無事に感謝し、翌年の無事を願う。それは古今東西共通で、その時に贅沢なご馳走やお菓子を食べるというのも、どうやら共通の習慣のようです。今回は、遅れてきたヒーローになるか。イタリアのクリスマスシーズンの伝統菓子、パネトーネの最近の事情をお伝えします。

パネットーネとはどんな菓子?

名前ぐらいは聞いたことがあるという人も多いでしょう。パネットーネは、北イタリアのロンバルディア州(州都ミラノ)で生まれたクリスマスシーズンに食べる大きなパンのようなケーキのような食べ物。パネットーネというのは大きなパンという意味で、バターや卵、レーズンやオレンジピールなどの入ったリッチな発酵菓子です。パネットーネ菌という特別な菌で発酵させる菓子という説明もされているようですが、実際にはパネットーネ菌という菌は存在しません。伝統的には粉と水を混ぜて作った自家製の発酵種(サワー種)が、リエヴィト・マードレと呼ばれています。日本酒のもろみを発酵させる酒母みたいなもの。余計わかりにくいでしょうか?ともかく、発酵がパネットーネの大きな特長であり、作り手の生命線と言って過言でないでしょう。

イタリアでは地域と季節を超えてブームに

このクリスマス伝統の菓子が、現在はイタリア各地、そして夏にはサマーパネットーネなど季節のバリエーションまで生まれる人気菓子になっています。ずっとイタリアにあったはずなのに。きっかけは、海外の観光客がパネットーネを年中お土産で買いたがるので季節以外にも作ってみた.ミラノじゃないけど作ってみた.そしたら売れちゃったということのようです。数年前に「一年中パネットーネ」という活動も始まり、今や各地でパネットーネのコンテストが開催され、クラシックなミラノ伝統の型から飛び出して、様々なパネットーネが生まれて人々を楽しませています。

日本のパネットーネが面白くなってきている

さて、そんな本国の盛り上がりもあって、日本人でも現地のコンテストに参加してファイナリストにもなった鈴木弥平さん(イタリア料理店「ピアットスズキ」のオーナーシェフ。パネットーネ歴26年)、パネットーネをシグニチャーに据えた菓子店「レス」、そして本国のトレンドを汲んだ塩味バーション「パネトーネ・サラート(塩味の)」を数量限定で発売した「ブルガリ・イル・チョコラート」など日本のパネットーネもようやく動きが出始めています。11月1日にはパネットーネの作り手と食べ手を繋ぐコミュニティ「PANETTONE SOCIETY」も誕生。実は不肖私も発起人の一人です。数年前より日本ではクリスマス当日のケーキに加え、アドベントスイーツといってクリスマスイブまでの約4週間、少しずつ楽しめる焼き菓子(シュトーレンなど)、毎日違うスイーツがカレンダーに隠されているアドベントカレンダーも定番になってきました。その状況を見て、本格的なパネットーネがもっと日本で買えたら人気になるだろうなと思ってはきたものの、最初にお話した発酵種を起こすのも、その後の発酵過程も非常に時間がかかって高難度。作り方もあまり公開されず、作る人も限られていました。でも、食べたい人が増えれば作り手も増えるし、作り手が増えれば食べる方も盛り上がる。そんな空気感が日本でもできればと思って立ち上げた団体です。

今年あたりから、日本のパネットーネは面白くなってきます(きっと)。なので、初めての方も、ご無沙汰の方も、食べるなら今年。小さなサイズもありますが、大きなサイズを気のおけない仲間やご家族で。ミラノ近郊生まれの極上なスパークリングワイン、フランチャコルタと合わせれば、幸せな気分になれるはずです。 Buon Natale!(良いクリスマスを!)

R gourmetへ、ようこそ。今月の皆様の食卓が美味しく、楽しくありますように。

イラスト:いとう瞳 文:柴田香織