戸惑うことや不安なことが多いはじめての育児で、ママやパパがとくに気をもむのは子どもの発育や健康面だと思います。お口の健康もその1つで、子どもの歯を虫歯にさせないために、日々奮闘されている保護者の方も多いでしょう。ここではそんな保護者の方に向けて、子どもの虫歯の特徴や、子どもの歯を虫歯から守るうえで注意しておきたい点などを詳しくご紹介していきます。

子どもの歯は大人よりも虫歯になりやすい？

一般に子どもの歯（乳歯）は大人の歯（永久歯）に比べて虫歯になりやすいといわれます。その理由に次の3つが挙げられます。

まず1つめは、乳歯に限らず、生えたばかりの歯は歯質が未熟である点です。生えたての歯は歯質自体がまだ柔らかく、生えた後に唾液に含まれるミネラルやご家庭や歯科医院でのフッ素の活用によって丈夫になっていきます（石灰化）。そのため、生えたての時期に歯がうまく磨けていないと、通常よりも早く虫歯になりやすいわけです。

２つめは、子どもがまだ幼い時期は間食が多くなる点です。小さな子どもの場合、1回にとれる食事の量が少ないため、エネルギー補給として間食は栄養面において重要な位置を占めます。一方でこの間食を“おやつ”ととらえてしまう保護者も多く、糖分が過剰に含まれるお菓子などを頻繁に与えてしまうケースも実は少なくありません。そのことが結果として、子どもの虫歯の発症へとつながっていきます。

3つめは、歯がうまく磨けていない、あるいは磨けないという点です。子どもの虫歯は保護者による“仕上げ磨き”が予防の大きなカギを握る一方で、お仕事などが忙しく、そこまで手が回らないというケースも多くみられます。また仕上げ磨きをしたくても、なかなか子どもが磨かせてくれないというケースも少なくありません。

以上の３つの理由から、子どもの場合は大人と比べて虫歯になりやすい傾向があることを、まずは頭に入れておきましょう。

■乳歯は虫歯の進行が速い

乳歯は虫歯になりやすいことにくわえ、一度虫歯になるとその進行も速いのが特徴です。これは乳歯の構造がその原因の1つに挙げられます。

歯の表面には「エナメル質」という硬い組織に覆われており、そのエナメル質が外部からの刺激や虫歯菌がつくる酸から内側を守っています。しかし乳歯はこのエナメル質が永久歯の半分程度の厚みしかないため、虫歯に一度なってしまうと内側まで進行するスピードが速くなります。また乳歯は永久歯に比べると歯質が柔らかいことも、進行のスピードを速めてしまう要因となっています。

さらに子どもの場合は、お口の中に異常を感じてもそれをうまく伝えられないということが、虫歯の発見を遅らせ病状を進行させる原因になるので注意が必要です。

子どもの歯が虫歯になる原因

子どもの歯が虫歯になる原因は大きく次の２つが挙げられます。

まず1つめは、親から子への虫歯菌の感染です。虫歯菌は生まれたばかりの赤ちゃんの口には存在しておらず、生後まもなくして周囲の大人の口から感染していきます。とくに虫歯菌については生後19か月から31か月の間にもっとも感染しやすく、この時期を『感染の窓』と呼んで歯科医も注意をうながしています。したがってこの時期は親子間のキスや食器の共有などを控えるほうがベターでしょう。

2つめは先ほども述べた“間食”のタイミングです。子どもの歯が虫歯になる原因でもっとも多いのは、時間を決めずに間食を与える「ダラダラ食べ」。虫歯は口内に食べ物や飲み物を含む回数が多くなるほど、そのリスクが高まります。また間食に糖分が多いお菓子（チョコレート・キャンディー・ビスケットなど）を与えてしまうのも注意が必要です。間食は必ず時間を決め、できるだけ糖分の少ない食品を選ぶよう心がけてください。

■乳歯の虫歯に気づかず放置するとどうなる？

乳歯の虫歯に気づかず放置した場合、まず問題となるのは治療による子どもへの負担です。虫歯は初期の段階（初期虫歯：CO）で発見できると、歯を削らなくても歯磨きの徹底やフッ素の活用によって元の健康な歯に戻すことができます。しかし虫歯がある程度進行してしまうと削って詰める治療が必要になるため、子どもへの身体的・心理的負担も大きくなります。

また乳歯には食べ物を噛むほかに、永久歯を正しい位置に導いたり、発音を助けたりする重要な役割を担っています。その乳歯が虫歯によって大きく壊れてしまった場合、食べ物がうまく噛めないために偏食気味になりやすく、これが体の健康や発育にも悪影響を及ぼします。また虫歯によって乳歯の形が変わってしまうと、残っている乳歯や次に生えてくる永久歯の歯並びを悪くしてしまう可能性があるため注意が必要です。ほかにも口内に虫歯菌が繁殖することで永久歯が虫歯になりやすくなったり、うまく噛めないことで顎や顔立ちの発育にも何らかの影響を及ぼしたりするおそれがあります。したがって乳歯の虫歯はこまめにチェックし、できるだけ早い段階に見つけてあげることが肝心です。

子どもの虫歯を予防する方法

ここまで述べてきたように、子どもは大人よりも虫歯になりやすく、またその進行も速いため、乳歯が生えてきた段階で予防に取り組むことが重要です。ここでは、その具体的な方法をご紹介しますので、ご家庭での対処法の参考にしてみてください。

■食生活の改善

先の項目でも挙げたように、間食の時間を決めない「ダラダラ食べ」は子どもの虫歯リスクを高める要因になります。したがってまずは規則正しい食生活を心がけ、決められた時間以外の飲食はなるべく控えるようにしましょう。

また子どもの間食は大人が考える“おやつ”とは異なり、あくまで不足したエネルギーを補給するためのものととらえるべきです。糖分の多いお菓子やジュースは虫歯になりやすくなるだけでなく、成長に必要な栄養面においても不向きといえます。子どもに間食として与える食品では、おにぎりやサンドウィッチ、ヨーグルトやチーズなどの乳製品、果物などがおすすめです。

■仕上げ磨きの徹底

子どもの仕上げ磨きは最初の乳歯が生えはじめる頃（生後6~9か月頃）からスタートします。また子どもが自分で歯ブラシを持つようになってもまだ十分には磨けないため、小学校低学年あたりまでは仕上げ磨きを継続しましょう。

正しい仕上げ磨きを実践するコツは、口内で虫歯になりやすいポイントをおさえておくこと。具体的には歯と歯の間、歯と歯ぐきの境目、そして奥歯の噛む面の溝の3か所です。ただし子どもが嫌がる時に無理強いしてしまうと、“歯磨き嫌い”になってしまうため注意しましょう。まだ小さいうちは、たとえ上手に磨けなくても毎日欠かさず続けておこなうことが、歯磨きの習慣化につながります。近年は歯磨きタイムを楽しくするアプリなどもありますので、このようなツールを活用しながら工夫してみるのも方法の1つでしょう。

■定期検診で予防歯科の実践

日ごろから保護者の方が注意深く観察していても、子どもの小さな虫歯を発見するのは至難の業です。したがって子どもの歯を虫歯から守るうえでは、やはり歯科医院の定期的な受診は欠かせないでしょう。

子どもの歯医者さんデビューの目安は、乳歯が生えそろう2歳半～3歳ごろ。歯科の定期検診では虫歯の有無にくわえ、乳歯や永久歯が正しく生えているか、歯並びや顎の発育に異常はないかなどをチェックしていきます。さらに虫歯の予防処置として、歯質を丈夫にする『フッ素塗布』や奥歯の溝に汚れをたまりにくくする『シーラント』などをおこなっていきます。

歯科の定期検診を習慣にしておけば、万が一虫歯になったり、歯並びに問題が生じたりした場合でも早期に対処でき、治療による子どもへの負担も軽減できるでしょう。

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子どもの歯（乳歯）は大人の歯（永久歯）よりも虫歯になりやすく、また進行するスピードも速いため、虫歯を予防する為には早めの対処が重要となります。また子どもの虫歯は、食習慣の影響を大きく受けやすいこともよく理解しておきましょう。

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