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2018/10/30更新

真のチョコのおいしさは、 アレの鮮度が決め手!? 攻めのフェアトレードを実現させた「Dari K株式会社」さんに迫る!

京都に拠点を構えるチョコレートブランド『Dari K』。 日本では珍しい“インドネシアのカカオ豆”を専門に扱ったチョコレートを製造しています。 “Bean to Bar(豆からチョコまで)”という言葉は日本でも段々と認知されてきていますが、こちらはいわば“Farm to Bar(農家からチョコまで)”を実現しているブランド。 現地の農家から直接カカオを仕入れることにより、新鮮なカカオを使ったチョコレートを生活者に届けることを可能にしています。 今回は、チョコレートブランドを立ち上げるきっかけから、カカオ本来の旨味を生かした美味しさの秘密まで、代表取締役の吉野さんから伺うことができました。 編集部も目から鱗の、チョコレートができるまでの裏側をご紹介します!

きっかけはカフェにかかっていた“世界地図”

カカオといえば、ガーナの印象が強かったのですが、今回、Dari KさんのHPを拝見して“インドネシアのカカオ豆”を使用しているということが意外で目を引きました。
なぜ、インドネシアのカカオ豆なんですか?

ある時、海外旅行中にたまたま立ち寄ったカフェに大きな“世界地図”があったんですね。
そこには、世界でのカカオ豆の生産量が国別に載っていました。それを見ると、有名なガーナは全体の3位。意外にも、インドネシアは2位の生産量があったんですね。
なぜ日本でインドネシアのカカオは知られていないのか。調べてみると、日本に輸入されてくるカカオ豆の約8割がガーナから。インドネシアからはたったの0.3%ほどしか輸入されていなかったんです。
普通に考えれば、輸送コストが低い近くのアジアの国から仕入れた方が良いに決まっているのに不思議でした。そこで私は、「これは現地に行って確かめるしかない!」と思い立ったんです!

え!それですぐにインドネシアに向かったんですか!?

はい(笑)。 勢いに任せて気付いたら、インドネシアにいました。

“発酵作業”を行わないインドネシアのカカオ農家

まず驚いたのは、カカオの実の大きさ!
普段意識することはありませんが、カカオは木になる“フルーツ”なんです。私たちが普段食べているチョコレートは、そのカカオの“種”なんですね。

たしかに!
加工し終わった後のチョコレートばかり見ているので、フルーツだという感覚で食べていないですね。

そうですよね。 実際のカカオの実にも触れながら聞き込みを行っている中で、段々と気付き始めたことがありました。それは、農家の人たちにとってカカオが“ただの換金作物でしかない”ということです。
通常、カカオ豆の相場は欧米で決められています。農家が値段を設定することができないため、いくら手塩にかけて育てたとしても値段は変わらない。
ですから、カカオ豆の出荷前の工程として大切な“発酵”を全く行っていないことにも気付きました。

え、カカオ豆って発酵させるんですか...?

あまり知られていませんが、チョコレートはれっきとした“発酵食品”なんですよ。
出荷前に農家が発酵作業を行うのが通常の工程ですが、インドネシアの農家では発酵の有無にかかわらず買取額がほとんど変わらないことから、その作業を行う農家はほとんどありませんでした。
しかし、この発酵によって果汁が種に移り風味が生まれるため、品質の良いカカオ豆を生産する上では不可欠な作業なんです。

「良いカカオを作る意識を、広げたい」

そこで私は「品質の良いカカオを作りさえすれば、日本のメーカーの目に止まるのでは?」と考えました。
品質の良いカカオにそれ相応の価格がつけば、農家にとっても良いカカオを作るモチベーションになるはずです。
ただ、そうなると、発酵作業は必須ですからその作業を一から身につけてもらうしかない。そこで、私自身でその方法を教えて回ることに決めました。

吉野さんご自身で!?

ネットで調べて見よう見まねで、、。 飛び込みで農家に出向き、発酵作業の必要性を伝えながら一日に20軒は回っていたような気がします。
もちろん全ての農家が二つ返事で了承してくれるわけではないですから、1年目は3人ほどから始まりました。
最近になって知ったことですが、その3人は発酵作業の必要性を理解してくれたからというより、私があまりにも必死でかわいそうだったから契約してくれたそうです(笑)。

契約農家が決まってすぐに、ブランドを立ち上げることになるわけですか?

はい。
良いカカオを作ればメーカーも注目してくれるかと思っていましたが、やはりそう上手くは行かず、なかなか買取先は見つかりませんでした。
そこで、私たちがブランドを起こして買い取るところから始めようと決意したんです。それが『Dari K』の始まりでした。
インドネシア語で“~から”と言う意味の「Dari」。そして「K」には、生産農家が集まるスラウェシ島の形がアルファベットの「K」に似ていることと、“京都(Kyoto)から世界へ”と言う意味が込められています。

なるほど、ブランド設立まであっという間で本当にスピード感がありますね...!吉野さんご自身のパワーに感心しきりです。
「自分でどうにかしよう」という覚悟が現在のDari Kの成功の源のような気がします。

強みは“鮮度”と、カカオ本来の“フルーツ感”

次は、是非Dari Kのチョコレートの美味しさの秘密についてお伺いしたいです!
他のブランドやメーカーのものと比べると、どんな特徴があるんですか??

そうですね...。
私からでも良いのですがせっかくなので、インドネシアのカカオ豆氏から直接紹介してもらいましょうか!

スラマシアン!やっぱり僕たちカカオ豆の“鮮度”が違いますヨ!

せ、鮮度!?チョコの鮮度じゃなくて、カカオ豆の鮮度ってこと…?

そのトーリ!
吉野さんも言っていたように、カカオは元々フルーツ。だから保存期間が長いほど酸化してしまって、カカオ本来の“フルーティーさ”や“酸味”は失われてしまうんですヨ!
だけど、Dari Kで使われている私たちは短くて3ヶ月、長くても約半年でチョコレートとして皆さんの元に届けられているんですネ。
一般的なチョコレートだと、買取や買付け、加工をすべて別々の会社が行うから商品がお店に並ぶまでに3~4年かかることもザラですヨ!
そう考えると、農家から直接仕入れて自社で生産まで行っているDari Kのチョコレートがどれだけ新鮮か分かっていただけますヨネ!?

Dari Kのチョコレートと一般的のチョコレートで、商品になるまでの期間にそんなに差があるのね!

カカオ豆氏からの紹介があったようにフルーツ本来の風味は、生産者の発酵の工程から管理している私たちだからこその強みだと思っています。
さらには、カカオ豆ごとに異なる個性に合わせた焙煎にもこだわっているので、自社の商品だけでなく、Dari Kで加工されたカカオ豆を他のメーカーやブランドに供給したり、共同で商品を開発したりするということも増えてきました。

はじめに目標としていたインドネシアのカカオ豆に目を止めてくれる、国内メーカーやブランドも段々と増えてきているんですね!

消費者とのふれあいで変わり始めた“生産者の心”

Dari Kさんのチョコレートを食べたくなってきました!
お客さんのリアクションはどうですか?。

やはりインドネシアのカカオ豆のストーリーから興味を持っていただき、チョコレートの美味しさに気づかれる方が多い印象ですね。
そんな皆さんのためにDari Kをより知ってもらおうと、ここ数年、インドネシアのカカオ豆の生産農家を訪問するツアーを開催しているんです。毎年50名ほどの方々に参加していただいています。
実は、ツアーを行った結果“嬉しい誤算”がありまして...。

うれしいゴサン...?

どちらかというと、消費者側のためのツアーのつもりだったんですが、結果的に生産者側の意識改革に繋がったんです。
というのも、スラウェシ島自体、外国人がほとんど来ることのないインドネシアの奥地にあるので、レストランなどもありません。自然と、食事は農家のお母さん達に作ってもらうことになるんですね。
食事を共にしていると、初めは日本から来た我々を“ゲスト”と呼んでいたのが、帰る頃には“ファミリー”に変わっていたんです。
今までまったく見えなかった消費者側を知ることで「ファミリーにいい加減なカカオは提供できない」というモチベーションが農家の人々に生まれたんですね。
実は、これが品質を上げた一番の要因ではないかなと個人的に思っています。

ファミリー!
農家さんも、食べた方からダイレクトに「美味しい!」と言ってもらえるのはとても嬉しいと思います!

“攻めのフェアトレード”を実現できる世界に

最後に、吉野さんからDari Kさんが目指しているフェアトレードの未来についても伺って良いですか?

そうですね。
フェアトレードと言えば日本の方からすると、「かわいそうだから与える」印象が強いはず。しかし、Dari Kの場合は農家が努力した分だけ、報酬を受け取ることができる「生産者自らが勝ち取るフェアトレード」だと考えています。
そうすることで、消費者側も一過性の購入では終わらずに“美味しいから”購入し続けようという意識に変わってくるでしょう。

冒頭におっしゃっていたように生産者が単にカカオ豆を換金アイテムと思っていては、消費者との関係性は作れませんよね。顔が見えることがいかに大事かということですね。
吉野さん、ありがとうございました!

今までのフェアトレードだと、商品自体の味や品質より「フェアトレードだから」という理由で値段設定がされていたような印象があります。
Dari Kでは、生産者が努力した分だけ高く買い取ることで、消費者側も納得して良いものにそれ相応の値段を支払う仕組みを作ることができました。

加えて、Dari Kのインドネシア産カカオを使ったチョコレートは鮮度が高く、カカオ本来の旨味を生かした焙煎方法にも力を入れています。
実は値段以上の価値があるかも...?

Dari Kでは「カカオ豆から手づくりチョコレート・キット」という豆を焙煎する工程から実際に体験できる商品も取り扱っています。
原料のカカオがどんなものか、そしてチョコレートができるまでを知ることもできます。 是非Dari Kのカカオ豆のストーリーをなぞりながら、チョコレート作りを楽しんでください!

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今回の EARTH MALL イノベーター

Dari K株式会社 社長
吉野慶一さん

イギリスの大学院で修士課程を修了後、証券会社にてアナリストとして業務に従事。日本にほとんど輸入されて来なかったインドネシアのカカオに興味を持ち、2011年にDari Kを設立し、CEOとなる。 「カカオを通して世界を変える」を理念に、生産者・消費者双方に利益のあるフェアトレードを実施。自社のサプライチェーンで実現した鮮度の高いカカオを使ったチョコレートを開発・販売している。

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