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2019/12/19更新

サステナブルな地味仮装が世界を平和にする!……かもしれない。地味ハロウィン振り返り対談

2019年10 月27日、渋谷の東京カルチャ―カルチャーで開催された「地味ハロウィン」。第6回となった今回も、誰もが身に覚えのある日常風景を切り取った、珠玉の地味仮装が集まりました。

「普通の人」が「普通の人」に仮装する地味ハロウィンは大がかりな衣装を必要とせず、ゴミもあまり出ないはず。ということは、じつはサステナブルなハロウィンと言えるのではないか? そんな仮説のもと、EARTHMALL with Rakutenは今年から地味ハロウィンとコラボレーションをすることにしました。

今回は地味ハロウィンが本当にサステナブルだったのか振り返るべく、主催者である「デイリーポータルZ」編集部の林雄司さん、古賀及子さんをお迎えし、EARTH MALL編集部のママベ・ヒライとともに対談を行いました。

地味ハロウィン前編記事はこちら

地味な仮装=普段の自分?

先日の地味ハロウィンがサステナブルだったか検証するということで、資料を用意してきました。参加した人に「仮装に必要な道具をどうやって用意したか?」「使ったものは、今どうなっているか?」を聞いています。サンプル数は10人です。

仮装で使ったものがゴミになっていたら悲しいですね。

どうですかね。まずは「(衣装や道具を)どう用意したか?」ですが、「家にあった」っていう人が多いんですよね。みんなだいたい、もともと持ってたものを使っている。

たとえば、「自称・変わり者」っていう仮装をした人がいるんですけど、ぜんぶ私服らしいんですよ。普段着ですと。

私服……。眼鏡がすごい。

この人は仮装といいつつ、普段の自分なんですよね。「変わり者になりたい人」を、本当に変わり者である自分がやっているっていう。

なんだか複雑ですね。どう理解すればいいのか……。「変わり者になりたいけど、なり切れていない」みたいな雰囲気の人の仮装なんですかね。やばい、いきなり仮装が分からなくなってきた。

そういうことなんでしょうね。でも、自分のことだから誰かをディスっているわけではなくて、自虐ともとれます。

そう、普段の自分の服装が変わっていることは理解しているんですよね。

自分を客観的に見れていて、それを仮装に生かしている。

そうですね、自分を客観視している人は他にもけっこういます。「洗濯に非協力的な家族を持つ主婦」とかね。これ、たぶん普段の自分のことなんでしょうね。

ああ~、家族が脱いだ服がひっくり返っちゃってるっていう。やられたら嫌なやつ。「転職活動のバナー」をやってた人も、自分が去年そうだった(転職活動をしてた)って言ってましたよ。

自分の状況を一歩引いて見て、これは仮装だ!って思うのかもしれません。たとえば、「インク漏れ」。これも完全にこの人自身ですね。ちなみに、このシャツは洗濯してしまってあるそうです。ちゃんとインクがとれてよかったですね。

あとは、野球ネタも多かったですけど、これも自分のことっぽい感じがしました。「試合を見ないで酒ばっかり飲んでるヤクルトファン」とか。ディテールが細かい。

「ビールを買いに行っている間に逆転されるロッテファン」とかね。これ、ロッテあるあるですよね。買っている時に、球場が一瞬静まり返るんですよ……って言ってました。ヤクルトファンとしても共感できます。


 
 

仮装で使った道具、その後どうなった?

一方、仮装のために新しく何かを買った人を見ていきましょう。

私は回覧板を買いました。「会社から帰って来てすぐ回覧板を回す人」の仮装で。660円です。

この回覧板、現場ですごい活躍してましたよね。

そうそう。進行表をこれに挟んでました。閉じると仮装だし、開くと進行を確認できる。こりゃいいやと思って。来年も進行表として使えますね。それか、うちの町会に寄付しようかな。今のやつがけっこうボロボロなんですよ。

リユースだ! サステナブルですね。

じつは、俺が一番、仮装以外に使い道がなさそうなものを買ってるんですよね。「逆浜省(ぎゃく・はましょう)」をやるためにジージャンを買いました。古着で700円。

浜田省吾さんは袖なしGジャンですけど、逆浜省は袖しかない。

今日は逆に袖なしのほうを着てきました。

逆浜省の逆だから普通に浜省ですよね。

正浜省(せい・はましょう)ですね。

二度楽しめる。サステナブル……ですかね?

ちなみに、一番お金をかけた人で5000円。「人形劇の人」です。人形は自宅に飾ってあるそうです。

この人形、すっごいよくできてましたもんね。そりゃ飾るよっていう。

あとは、「朝から元気な旗当番のご近所さん」。横断旗2本で1400円。楽天で買ったそうです。

ありがとうございます。下にリンクをつけておきます。

ちなみに、今は「どう使えばいいか分からないのでしまってあります」と。

でも、いつか普通にこういう係になることがあるかもしれないですよね。

そうですよね。そして「あ、旗なら持ってるんで」って言える。

「化粧水だけ買うつもりだった人」もよかったですね。

この人の場合、化粧水は「今、使用中」。バターサブレは「仕事中のおやつとして少しずつ食べているところです」とのことです。

少しずつってところがかわいいですね。

あれから1カ月くらい経つけど、まだ全然残ってるんでしょうね。僕らも記事のためにでかい食べ物買って、仕事中ずっと食ったりしてますもんね。


 
 

地味ハロは、欲しかったものを買うチャンス?

こうやって見ていくと、元から家にあるもので仮装していたり、新しく買ったものもちゃんと家で使っているっていう人がほとんどですね。

そうですね。「これから大浴場に向かう人」が買った3000円の浴衣も、「暖かい季節がきたら使おうと思っている」って。

こういうの家で着てたら、おかしいですね。

旅館気分が味わえますね。あと、旅館やホテル備え付けの浴衣ってサイズが合わないこともあるけど、マイ浴衣を持参すれば解決です。

チェックインする時から、もうこの格好で。

野良浴衣ですね。

なんかインディーズの人来たぞ、って騒然としそうですね。

浴衣がないホテルもありますから。人間ドックの検査着みたいなやつしか置いてないところ。

あれ、ズボンがないからどうしたらいいのか、いつも悩みます。

彼氏の部屋に来た彼女みたいになりますよね。一回、あの姿で部屋の外に締め出されたことがあります。恥ずかしかった。

これを持ってれば、そんな心配もない。

そうやって、年に何度かは地味ハロウィンで使ったものが役立つシーンがあるような気がします。

でも、こんな旅館っぽい浴衣って地味ハロでもなければ絶対買いませんよね。いくら欲しくても。

たぶん、買う理由が欲しいんですよね。たとえばギャルに憧れてるけど、そういう服を買うのは恥ずかしいっていう人でも「仮装だから」って言い訳ができる。ファッションで冒険するチャンスでもありますよね。

林さんの浜省もまさにそうですし。

そう、ぜんぜん趣味じゃない。今朝、家で着てみた瞬間に笑いましたね。やっぱり。

でも、楽天ってわりと奇抜な格好の人もいるから違和感ないですよ。天才プログラマーみたいに見えます。

古いタイプの天才。

何かの名人っぽいですよね。子供にいろいろ教えてくれそうです。

コロコロコミックの、ミニ四駆のお兄さんみたいな雰囲気もあります。

それだ! 皮のグローブがあれば完璧ですね。モーターのこととか、すごい教えてくれそう。

この格好で、ミニ四駆がヘタだったらおもしろいですね。

この人の言う通りにしたら、めっちゃ遅くなっちゃう。

いや、いいですね! この服ひとつで、何回でも地味ハロウィンに参加できそうです。

そうですね。違う人が着たら、また別の仮装になるかもしれない。

ちっちゃい!(笑)

いや、いいですよ! 「おしゃれすぎる店員さん」っていう感じがします。目黒の住宅街とかに、こういうお店ありますよね。


 
 

「ゴミをゴミとして再利用」リサイクルの新たな可能性

ここまで、捨てられているものがほぼありません。

確かに。一番使い道がなさそうな「カーシェアのスタンド看板を元の位置に戻す人」も、作った看板は「リビングになんとなく置いてあります」と答えています。

ちなみに、看板は引っ越しに使ったダンボール箱を分解して作ったそうです。

よくできてるばっかりに、捨てられないんでしょうね。

思い入れもあるでしょうしね。それに、もし捨てるとしてもダンボールだからリサイクルできる。本当に、全然ゴミが出てないですね。

ゴミを減らすこともサステナブルなんですか?

サステナブルです。環境問題で大事な3Rは「Reduce(リデュース)」「Reuse(リユース)」「Recycle(リサイクル)」といわれていますが、その一歩目がリデュース、つまりゴミを減らすことなので。地味ハロウィンは、サステナブルの基本を守っているといえますよ。

渋谷のハロウィンだと、やっぱりゴミがたくさん出ちゃうんでしょうか?

ゾンビの衣装とかは、ハロウィン以外では使わなそうな気がしますけどね。

血の化粧で汚したりするから、使い捨てのイメージがあります。

今年は渋谷ハロウィンに100万人が参加したそうですから、仮に1人500gのゴミが出たとすると50万kgにもなります。

それをどこかに埋め立てたら、ハロウィン島ができますね。

ちなみに、今回の地味ハロウィンは「ゴミ」をテーマにした人が多かったように感じます。「ゴミを出しそびれた人」とか。

「タピオカを捨てられない人」とか。

確かに、ゴミの話多かったですね。「ゴミを出しそびれた人」が持ってたゴミ、あれ自宅から持ってきた本物のゴミみたいですよ。カードの明細とか入ってました。

そうそう、「溜めた」って言ってました。

もはやゴミすら仮装の道具になるという……。

でも、仮装のために無理やりゴミを作るのではなく、ちゃんと生活の中で出たゴミを有効活用しているのが偉い。

それって、あり得ないリユースですよね。ゴミをゴミとして再利用してるわけですから。

そうなんですよ。余計なエネルギーを全く加えずにリサイクルしている。これはすごいことですよ。「地味ハロウィンは仮装がゴミにならない」みたいな話は予測できたけど、そのさらに上のレベルに達している。


 
 

地味ハロウィンが世界を平和に?

改めて考えると、地味ハロウィンってゴミ以外にもサステナブルな要素が詰まっているんですよね。

そうなんですか?

はい。SDGsには、持続可能な世界を実現するための17のゴールが定められているんですが、たとえばそのうちの一つに「平和」があるんです。今回、会場の雰囲気を見ていて感じたんですよね、「めっちゃ平和な場所だなあ」って。お互いの仮装について、誰もケチをつける人がいない。

あそこには参加者しかいないですからね。ただの傍観者がいないから、みんなお互いを褒め合うようになるんじゃないかな。リアルな場で面と向かって「おもしろくないですね」とか言う人はまずいないですからね。

なるほどー。SDGsでも「自分事化」することが大事だと言われていますからね。

ネットの世界から始まったイベントだから、どんな人が来るんだろうと思っていたんですけど、めちゃくちゃ和やかで健全でした。

そう。参加者同士が仲良くなって遊びに行ったりしてますからね。みんなでバンジージャンプしたり。おれは誘われないけど。

平和だ……。

今回はグローバルな拡がりもありましたよね。

台湾で開催された地味ハロウィンもおもしろかったですよ。みんなニュアンスをきっちり理解していて。

この感覚、グローバルでもちゃんと通用するんですね。

たとえば、「ご祝儀を600台湾元しか包まない友達」。あとは「高級マンションのプラカードを持ってサボってる人」や「やる気のないガールズバーの店員」。これ、みんな日本にもいますもんね。

へえ~。台湾も日本も一緒なんだなあ。でも、かと思えば「遊びにきた国軍の兄弟」なんてのもある。最近まで徴兵制があった台湾ならではの仮装ですね。

台湾あるあるなんでしょうね。

敬礼がもう完璧ですね。

外国のディープな文化も学べるし、共感できるところもある。これ、いろんな国のを見てみたいですね。

そうですね。コロンビアとか見てみたい。あと、ジョージアの地味ハロウィンとか。

そうやって広がっていけば、本当に世界平和につながるかもしれません。仮に隣国同士が険悪になっても、これをやるとお互いに生活者の目線で親近感が持てる。

確かに。しかし、まさか世界平和につながるとは!

地味ハロウィンはサステナブル、そして世界平和につながるという大きな結論になりました。EARTHMALLではこれからもデイリーポータルZとサステナブルな活動で連携していく予定です。お楽しみに。



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林雄司
1971年生まれ。デイリーポータルZ
編集長。インターネットでの記事制作を主に行う。代表作は「カフカ『変身』をネット通販風に描く」「ハトが選んだ生命保険に入る」など。2014年に地味ハロウィンを阿佐ヶ谷のスナックで始める。好きな食べ物はアスパラガス。

古賀及子
1979年東京生まれ、神奈川、埼玉育ち、東京在住。2004年よりデイリーポータルZ参加。2005年より同編集部所属。これまで書いた代表的な記事は「納豆を1万回混ぜる」「決めようぜ最高のプログラム言語を綱引きで」。動画コンビ「なんでもレンジでチンする会」メンバー。特技は司会。

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