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2019/3/25更新

キーワードは“ゆるみ”。 JICAと鎌田安里紗さんが見つけた、途上国のものづくりの面白さとは?

ある日、独立行政法人 国際協力機構(JICA)から「楽天市場にJICAが関わっている素敵な商品があるんです。ぜひ紹介させてください!」という一本の連絡がありました。「JICAってなんだか敷居が高そう……」とドキドキしながら取材に伺ったEARTH MALL編集部と助っ人・鎌田安里紗さん。みんなで一緒にこれからの途上国のものづくりを考えてみました。

なぜJICAがEARTH MALLにアプローチ?

今日はわざわざお越しいただきまして、ありがとうございます。先日Earth Mallの存在を知って、「うちで関わっている商品のことを知ってもらいたい」と連絡してしまいました。今日はJICAのことや商品のこと、ざっくばらんにお話できればと思っています。

ありがとうございます。JICAさんが携わっている商品が楽天市場で販売されているなんてうれしいです。お話を伺うにあたって私たちだけだとちょっぴり力不足かもしれないので、今日は強力な助っ人・鎌田安里紗さんをお呼びしました。

こんにちは、鎌田安里紗です。

鎌田さんはエシカル・ファッションプランナーという肩書きで、講演や商品企画などを行っているんですよね。

はい。「なんプロサポーター」(※)としてJICAさんともお仕事をしていましたが、具体的にどんな取り組みをしている組織なのか、意外と知らなかったんです。だから今日はきちんと学びたいと思います。
※なんプロ……「なんとかしなきゃ!プロジェクト」。JICA、国際協力NGOセンター(JANIC)、国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所が、国際協力に関心の高い著名人や国際協力を行っているNGOと一緒に、国際協力や開発途上国に関する情報発信を行うプロジェクト。より多くの人に国際協力に対する関心や理解を深めてもらうことを目的としており、鎌田安里紗さんはサポーターとしてプロジェクトに参加していた。2019年3月末をもってプロジェクトを終了することが発表されている。

ありがとうございます!まず簡単にJICAの仕事内容をご説明しますね。一言で言うと開発途上国の課題解決が私たちの仕事です。道路や橋などの建設や開発資金の貸し付け、専門家の派遣など、内容はさまざまです。私が携わっている日本人材開発センター(通称:日本センター)では、ビジネス人材育成のための取り組みを支援しています。

日本センターでは、具体的にどんなことをしているのでしょう?

開発途上国でビジネスについて学べる場をつくり、国の産業発展を担う人材を育成しています。具体的にはモンゴル、ラオス、ベトナムなど社会主義経済から市場経済に移行した国々で、日本企業の経験から経営を学ぶセミナーや社会人向けビジネスコースを実施しています。また、日本企業との取引や日本市場への関心も促しています。

なるほど。開発途上国がスムーズにビジネスを進められるようなサポートをしているんですね。

その通りです。その一環として今、開発途上国の方が生産した商品を日本で販売できるルートをつくりたくて。

それはなぜですか?

日本が要求する品質レベルはすごく高いので、日本企業と少し取引するだけで、現地企業がぐっと成長するんです。それが他の現地企業にも大変な刺激になります。あと「日本で売れている」という信用も得られます。

途上国の商品をどう日本人に届けていくか……考えていたときに見つけたのがEarth Mallだったんですね。

そうなんです。日本の買い物プラットフォームで、かつ「サステナブルな買い物をあたりまえにする」という新たな取り組みを始めたEarth Mallさんを見て、ビビッときて。私たちがサポートしている生産者の商品と日本のみなさんが出会える場になれるんじゃないかと。

いいですね、いいですね。

ということで、今日は楽天市場で販売されているJICAのイチオシ商品を紹介していきます。鎌田さんは数多くの開発途上国に足を運び、商品開発も手がけていますよね。今日は率直な意見を聞かせていただき、JICAのものづくりの未来を一緒に考えていきたいです。

わかりました!楽しみです。

お茶が……青い……!?みんなで飲みたいハーブティー

ということで、まずはこちらのお茶を。

このお茶、どんどん青くなる……。理科の実験みたい。

バタフライピーという花のハーブティーです。ラオスの契約農場で育てた無農薬のバタフライピーの花を加工してつくられています。

見た目のインパクトとは裏腹に、飲んでみるとおだやかなレモングラスのような味です。このお茶にJICAさんが関わっているんですか?

滋賀県にある会社がラオスで食品原料を殺菌加工する事業をしていて、その取り組みを私たちが支援しています。ラオスの契約農家にバタフライピーの花を栽培してもらって、それを買い取って殺菌加工するという流れで。

こちらのお茶をつくることで、ラオスの人にどんな良いことがあるのでしょう?

バタフライピーの花を確実に買い取ってもらえるので、安定した農業を営むことができます。これまでタイに出稼ぎに行っていた若い人たちが村に残り、バタフライピー栽培を拡張し始めてもいます。このおかげで月収が10倍になった農家もあるんです!将来的には殺菌加工の技術そのものをラオスの人が習得し、オリジナルの商品をつくって輸出できたらいいなと思っています。

お茶を飲むことが、ラオスで働く人の経済的自立につながるかもしれないんですね。 ちょっと感想を述べてもいいですか?

ぜひぜひ!

お茶はおいしいし、パッケージもかわいいいけれど、一人で青いお茶を飲んでも寂しい気がします(笑)。たとえば飲むシチュエーションを提案したら、より楽しんでもらえそうですよね。ピクニックとかフェスとか海でみんなで飲んだら盛り上がりそう!

たしかに!ラオスで誰も注目していなかったバタフライピーの商品価値を見出すことには成功したので、おっしゃる通りこれからは「どう楽しむか」という意味付けに力を入れることが必要かもしれません。

“ゆるみ”があるからいい

次はキルギスでつくられたハンドメイドのフェルト商品です。動物小物、ポーチなどがあります。

これはかわいい~!この長細いものは何ですか?

それは本に挟むしおりです。

何かのつくりかけかと思いましたが、妙に惹かれます……(笑)。

JICAが支援している生産者のフェルト商品です。キルギスの山岳地帯ってとても寒くて。昔から天然のウールでつくられたあたたかいフェルトが必需品なんです。「一村一品運動」といって、もともとキルギスにあった天然素材のフェルトに付加価値をつけて販売することで、現地の人の収入を増やし、ひいては地域を元気にしようというプロジェクトです。

私、このしおり好きです。海外に行ったとき何が楽しいかって、用途不明なものに出会った瞬間(笑)。「これ何に使うの?」みたいなものを見つけるとテンションが上がっちゃいます。

たしかに一見、何に使うかわかりませんね(笑)。

しかもこのしおりって日本人だけじゃ絶対につくれないと思うんです。だってそもそもフェルトが厚くて本が閉じられない(笑)。現地の人が「この布の切れ端、しおりになるかもよ?」みたいなノリでつくったのかも……なんて妄想すると、急に愛おしく思えます。

先進国でない方が、味のある商品が生まれる余地がありますよね。マーケティングしちゃうとつくれないおもしろさ(笑)。

アクシデントなのか個性なのかはわからないけれど、そこから生まれる“ゆるみ”っていいなと思います。ちなみにこの商品をつくることで、キルギスの人の生活は何か変わりましたか?

この商品、キルギスのお土産として旅行者から好評で生産が追い付かないんです。日本の大手小売業者も取り扱っていて。現地の方も最初は「日本が支援してくれるからつくる」という受動的な姿勢だったのが、最近は「いいものをつくって買ってもらおう」という意識が生まれているみたいです。生産者が自分ごととして商売をするようになった……そのことがうれしいです。

途上国と日本文化がゆるやかに混ざり合う

最後は、バングラデシュでつくられているリサイクルサリーのブランケットを紹介します。

色合いもデザインもとっても素敵ですね。

インドやスリランカ、バングラデシュの女性たちは日常的にサリーという民族衣装を着ていて、その古布を重ねて刺し子を施したものをブランケットにした商品です。青年海外協力隊としてスリランカで活動していた方が帰国後起業し、現地の生産者グループと一緒に本商品を企画販売されています。

本当に美しいです。しかも、いつも不思議に思うのですが、こういうインドやバングラデシュの刺繍の模様って青森のこぎん刺しの柄とすごく似ていますよね。

文化は全然違うのに、紡ぎ出されるものが似ているっておもしろいですよね。

おもしろいです。しかも一枚一枚つくった方のお名前が入っている!

「彼女たちの感性でつくりました」という意味を込めて名前を入れているのかもしれないです。

そう思うと一枚一枚のブランケットが愛しく感じられます。

世界に一つだけのブランケットですものね。

作るものありきで物事が進むのではなく、現地の生産者が持っている技術や感性と日本人の感覚が合わさって、商品が生まれてくる。市場調査からじゃ生まれない個性が、フェアトレード商品のおもしろさで。「買うことが社会貢献になる」ということだけではなく、ものとしてもおもしろいということがもっと伝わると良いですよね。

売り手は個性を語り、消費者はもっと買い物を遊ぼう

ということでJICAのおすすめ3商品を紹介させてもらいました。鎌田さん、率直にどう思いましたか?

どの商品も“ゆるみ”を感じられて良いなぁと思いました。そのゆるさって、今の世の中だと淘汰されたり見過ごされたりしてしまいがちですけど、一つの個性ですよね。

“ゆるみ”が個性、うれしい言葉です。鎌田さんは企業とコラボレーションして、途上国の商品を日本の視点で再発見し、企画・販売していますよね。鎌田さんから見て今後、こういう商品がきちんと売れるようになるには何が必要だと感じますか?

私はフェアトレード商品も買うし、大量生産されているものも買います。二項対立じゃなくて、両方に良さがあると思っていて。とはいえ、フェアトレード商品を始め、小規模生産のものは意識的に選んでいかないと、情報的にも値段的にもアクセスしやすい大量生産のものに淘汰されてしまいかねない。もし完全に淘汰されたら、すごくパサついた世界になると思う。それは寂しいです。だから買う側と売る側どちらにも工夫が必要だと思っています。

というのは?

消費者が買いものをもっと遊ぶ!

買い物を遊ぶ!いい言葉ですね。

今って「合理的に買い物しなきゃ」という強迫観念が強くないですか?ちょっとでも安く買わないと損していると思ったり……。楽しい買い物のはずなのに疲れちゃいます。適当に買い物する日があっていいし、店員さん良い人だからネットじゃなくて店舗で買おうとか、生産者のメッセージが素敵だから買ってみようとか、安さ早さ便利さ以外の基準も取り入れて買い物したいですよね。

合理性ばかり求めすぎず、消費者も心に“ゆるみ”を持って買い物したら、意外といいものに出会えるかもしれない。

私は今日、しおりと出会いました(笑)。商品を届ける側は今、宮田さんが話してくれたような個性……つまり「早い」「安い」「便利」と比べられないストーリーを語ることが大事だと思います。

今日、鎌田さんと話していてその必要性をすごく感じました。

JICAさんだけでメディアを持ってもいいくらい、生産者の話っておもしろくて興味深いですよね。実際に行って生産現場を見るのが一番いいけれど、なかなかむずかしい。だから商品を売る時に背景、想い、個性をきちんと伝えることが本当に大事だと思います。

その結果、商品が売れて、結果的に途上国の方のビジネスを支援できたらJICAとしても最高ですね。今日は本当にありがとうございました!

(写真・文=忠地七緒)


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今回のEARTH MALLイノベーター

独立行政法人 国際協力機構(JICA) 産業開発・公共政策部 民間セクターグループ
宮田真弓さん

民間企業で勤務した後、国連ボランティアとしてブータンに派遣。その後、JICAの在外事務所やプロジェクトの専任スタッフ、国連工業開発機構(UNIDO)などを経て、2010年よりJICAの正職員に。現在は、産業開発・公共政策部 民間セクターグループ第一チームにて、日本人材開発センター関連業務に従事する。

今回の聞き手
エシカル・ファッションプランナー 鎌田安里紗さん
中学生まで地元の徳島県で育ち、2008年高校進学と同時に単身上京。渋谷109のスタッフとしてアルバイトをする傍ら、雑誌『Ranzuki』のモデルとしてもデビュー。現在は慶應義塾大学の博士課程に在籍し、同大学総合政策学部の非常勤講師も勤める。同時にエシカル・ファッションプランナーとして、国内外問わず、幅広く活動をしている。


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