「WOOD CHANGE(ウッド・チェンジ)」とは、身の回りのものを木に変えること、
国産木材を暮らしに取り入れることで、持続可能な社会をつくり出す活動のこと。
木とふれあい、森について知る「木育(もくいく)」を通じて木や森に興味を持ち、
正しい知識を学ぶことも社会をより良くするための第一歩です。
そこで、「もっとなかよく、ずっとなかよく。知ろう、木のこと、森のこと」と題した、
2日間にわたる木育プログラムを実施。
神奈川県内のアフタースクールに通う小学生に体験してもらいました。
「なぜ国産木材を使うことが大切なのか知る」
講師
一般社団法人more trees(モア・トゥリーズ)事務局長
水谷伸吉さん
一般社団法人more trees(モア・トゥリーズ)は、音楽家・坂本龍一氏が創立し、建築家・隈研吾氏が代表を務める森林保全団体です。加速する森林破壊や地球温暖化の危機的状況に対して行動を起こすために、100名以上の賛同人とともに2007年に設立されました。
国内外24か所で地域と協働して進める森の保全活動のほか、国産材を活用した商品やサービスの企画・開発、セミナーやイベントを通じた森の情報や魅力の発信など、「都市と森をつなぐ」をキーワードに「森と人がずっとともに生きる社会」を目指したさまざまな取り組みを行っています。
企画・運営
特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクール
「放課後はゴールデンタイム」をビジョンに、2009年に設立。安全で豊かな放課後を日本全国で実現するため、学校施設を活用した放課後の居場所「アフタースクール」の活動を行っています。企業と連携し、教育プロジェクトを実施する「ソーシャルデザイン事業」も展開し、社会全体で子どもたちを守り、育む活動を加速させ、子どもたちのためのより豊かな放課後の実現に向けてチャレンジを続けています。
「木を知る、木に興味を持つ」
1日目は、子どもたちの木への関心を高め、木の良さを感じるためのプログラム。
端材を利用した木のスプーン作りにも挑戦してもらいました。
- 1 木の関心を高める
- 「私たちの身の回りには、どれくらいの木製品があると思う?」と子どもたちに問いかける、進行役のぐってぃ先生。昔話『桃太郎』のスライドを見ながら、お話の中に木で作られたものがいくつ出てくるか、みんなで探して数えます。おばあさんが洗濯に使う桶、おじいさんとおばあさんの家の壁や障子、桃太郎が鬼ヶ島へ向かうときに乗った船、鬼から取り返した千両箱……など、正解は15個! 思っていた以上にたくさんの木製品が登場していたことを知り、子どもたちから「え、そんなにあったの?」「気づかなかった!」と驚きの声が上がりました。ゲーム感覚で楽しみながら、日本の生活に木は欠かせないものだったこと、日本人と木は昔からとっても仲良しだったことを知り、夢中になる子どもたち。
- 2 身近な木製品を見つける
- 『桃太郎』のお話の中のように、昔の人々は木で作られたものに囲まれて暮らしていましたが、今の生活ではどうでしょう?自分の身近にある木製品に気づいてもらうため、ぐってぃ先生が「教室に木で作られているものはあるかな?」と子どもたちに尋ねます。 また、昔は木だったけれど、今は木で作られていないものについてスライドを見ながら一緒に考えました。例えば、家。昔は木材の家が中心でしたが、今は鉄筋コンクリートや鉄骨などが主流に。洗濯をする際、昔は洗濯板と桶を使っていましたが、今は全自動洗濯機が一般的です。子どもたちからも「冷蔵庫」「家の床」「棚」など、さまざまな意見があがりました。 「このように時代は変わっているけれど、実は今も日本人と木はとっても仲良しなんだよ。それに、木や森、木で作られたものについて知ると、木や森を元気にしたり守ったりすることにも繋がるんだ。その理由をこの木育プログラムで学んでいこう」と、ぐってぃ先生。子どもたちはワクワクした表情を浮かべ、期待に胸を膨らませます。
- 3 “木ってすごい!”を知る
- 木の魅力って何だろう?木の特徴や良さを知ることは、木育の大切な第一歩。ぐってぃ先生が、木のすごいところを3つのキーワードを使って子どもたちにわかりやすく伝えます。 ● 木は力持ち!:建築に使われる木材は、重たい柱や屋根を支えられるほど力持ち。世界最大級の木造建築、大阪・関西万博会場のシンボル「大屋根(リング)」をはじめ、力持ちである木の特性は、現在も大いに活用されています。 ● 木は長生き!:世界最古の木造建築・法隆寺が、建立から1400年以上経った今も存続しているのは、木が長生きだから。木造建築物は、何百年も建ち続けます。 ● 木はへんしん上手!:樹液が輪ゴムやセロハンテープ、メイプルシロップになったり、クスノキの皮がシナモンになったり。木は、私たちの暮らしの中にある身近なものの材料になっています。 木について知っていることを聞かれると「いい香りがする」「空気をきれいにしてくれる」「それぞれ模様が違う」「動物の棲家になる」など、積極的に答えてくれた子どもたち。3つのキーワードによって、さらに木への理解を深めることができました。
- 4 国産木製品の良さを体感するスプーン作り
- いよいよお待ちかねの木製スプーン作り!スプーンの材料となる端材を配って、「この木の種類は何だと思う?」とクイズを出すぐってぃ先生。子どもたちは、香りを嗅いだり触れたりしながら「さわやかなにおい!」「模様がきれいだけど、何の木だろう?」と考えます。正解は、長野県産のヒノキ。加工しやすく湿気に強いのが特徴で「ヒノキのお風呂に入ったことあるよ」と教えてくれた子も。 木製スプーンは、粗さの異なる2種類のサンドペーパーを使って作ります。まずは目の粗いペーパーで角を落とし形を整えたら、目の細かいペーパーで表面をなめらかにして、最後にカラフルなひもをつけて完成!作業を始めると、今までにない真剣な表情で取り組む子どもたち。「木の粉までいいにおいがするね」「口に入れるところを丸くスベスベにして、食べやすくしたい」「このスプーンでスープを飲んでみたいな」など、周りのお友達のスプーンと見比べながら、時間をかけて丁寧に仕上げました。
次回までの宿題
自分で作った木のスプーンを実際に1週間おうちで使ってみよう!
「なぜ国産木材を使うことが大切なのか知る」
2日目は日本の森林とその課題、国産木材について学び、
自分ができる第一歩「WOOD CHANGE ACTION」について考えます。
- 1 “国産”について知る
- 進行役のぐってぃ先生が「前回、自分で作ったスプーンを使ってみてどうだった?」と尋ねると、「木の香りがした!」「いつもよりおいしく感じたよ」と、教えてくれた子どもたち。たくさんの子が木製スプーンの良さを体感していました。 プログラム2日目は、まず“国産”について学ぶことから。教えてくれるのは、“木の博士”こと、more trees(モア・トゥリーズ)の水谷先生。「みんなが作ったスプーンも木製だけど、木で作られたものは他にもいろいろあるんだよ」と、うちわや郵便はがき、ノート、食器など、意外な木製品を次々と紹介します。子どもたちはうちわで仰いでにおいを感じたり、食器の手触りを確かめたりと、多種多彩な木製品に驚いている様子。 「これは全部、日本で作られたものなんだよ。木の他にも、新潟で作られたお米、青森で作られたりんごなど、日本で作られたものがたくさんあるよね?」と問いかけるぐってぃ先生。「それらを“国産”っていうんだ。日本で育った木材は“国産木材”っていうんだよ」と、木材にも“国産”があることを学びました。
- 2 日本の森について知る
- このように、いろいろな製品の材料になっている木のこと、木が育つ日本の森のこと、どれくらい知っている? 水谷先生から子どもたちにクイズが出題され、木や森の現状や課題について楽しく学びます。
クイズに挑戦してみましょう!
① 世界の木や森は増えている? 減っている?
答え:減っている
世界の木や森は、伐採されたり燃やされたりと減少し続けています。その面積は、1秒間でテニスコート12面分にものぼります。② 日本の木や森は増えている? 減っている?
答え:増えている
世界では秒単位で広大な森が消失している一方、日本の木や森は増えています。その理由は、戦後の復興期から高度成長期にかけて国土の再生や保全、水源の涵養(かんよう)を図るため、スギやヒノキなどの植栽が行われたから。日本の森の約4割はこうした人工林で、利用可能な木材資源は着実に増加しています。
- 3 “森林循環”について知る
- 昔の人は木で作られたものをたくさん使っていましたが、今の日本ではどうでしょうか?鬱蒼とした森の画像を見せて、「この森を明るくして元気な木が育つ環境にするには、木を減らしたほうがいいよね。日本には木や森がたくさんあるから、木を切り、使うことがとっても大事なんだ」と水谷先生。
木で作られたものを使うと、木材が必要になります。けれど、切り続けていたら木が減ってしまうため、新たに木を植えて育てなければなりません。無計画に伐採するのではなく、必要な分だけ切り、切った分だけ植え、育った国産木材でものを作り、使う。こうした“森林循環”の仕組みについて、水谷先生がわかりやすく伝えます。
「木を使って、植えてをぐるぐる循環させると、日本の森は元気になるんだね」とぐってぃ先生。先生たちの話に、子どもたちは真剣に耳を傾けます。
- 4 「TSUMIKI」で遊んで国産木材の良さを体感しよう
- 日本の森を元気にするために大事なことは、国産木材を使うこと。「国産木材のおもちゃで遊ぶことも“使う”ことになるんだよ。今日は木のおもちゃで遊ぼう!」とぐってぃ先生が伝えると、子どもたちからは大きな歓声があがりました。 用意されたのは、宮崎県諸塚村のスギ材を使用した「TSUMIKI」。more trees現代表の建築家・隈研吾氏がデザインを手がけ、職人により一つひとつ手作業で作られたシンプルな三角形のデザインで、積み方次第でさまざまな形を表現できます。 「自然の香りがする!」「軽くてスベスベ」「形がおもしろい」など、木の香りや手触りを感じながら夢中になって遊ぶ子どもたち。最後はグループに分かれ、“自分たちが住みたい街”をテーマにユニークで壮大な作品を創り上げました。
- 5 みんなで始めよう!「WOOD CHANGE ACTION」
- 生活に木を取り入れて、持続可能な社会をつくり出す活動「WOOD CHANGE ACTION」。小学生の子どもたちにはどんなことができるのか、最後に水谷先生から子どもたちにメッセージが伝えられました。海に近い地域に住まう子どもたちに「実は、森と海はすごく仲がいいんです。川で繋がっているでしょう? 森がよくなると、海も元気になります。ぜひ森を豊かにして、森も海も元気にしていきましょう」と水谷先生。
木や森、国産木材 への興味や理解を深めた子どもたち。WOOD CHANGEへの大きな第一歩を踏み出せたのではないでしょうか。ぜひあなたにできることから、「WOOD CHANGE ACTION」を始めてみましょう!
今回のプログラムで行った「WOOD CHANGE ACTION」
- □身近な国産木材製品について知る
- □国産木材の魅力を知る
- □国産木材に触れる
- □木や森の現状について知る
- □日本の森のことを調べて、家族やお友達と話す
- □森林循環について知る
- □国産木材でできたものをつかう
大切なのは「植える、育てる、収穫する、上手に使う」という森のサイクル。あなたの意識が変わることによって環境をよりよくすることにつながっていきます。






