証明された北海道チーズの真価
「Japan Cheese Awards 2024」2部門同時受賞
標茶町 長坂牧場チーズ工房
令和7年度国産牛乳乳製品の需要拡大・競争力強化対策事業(国産チーズ競争力強化支援対策事業)
「Japan Cheese Awards 2024」は、2年に一度開催されるこの権威あるコンテストで、2024年は全国120工房371品という過去最多のエントリー数を記録。激戦の中から「胡椒入りハードチーズ」で金賞、「酒ウォッシュチーズ」で銅賞という2部門同時受賞を成し遂げたのが、北海道川上郡標茶町(しべちゃちょう)の長坂牧場。家族経営の小さな工房でありながら、確かな技術と独自の哲学で北海道チーズの真の実力を全国に知らしめた、注目すべき名工房です。
釧路湿原を抱く道東の酪農王国で育まれる、
職人気質の家族工房


釧路から車で約50分。牧草地面積約24,000ヘクタール、乳牛約36,000頭を擁し、人口よりも牛の数が多い道内屈指の酪農王国。南には日本最大の釧路湿原、北には阿寒摩周国立公園と広大な自然がひろがり、湿原の65%が町に含まれる国の特別天然記念物タンチョウをはじめとする動植物の聖域であり、北海道らしいスケールの絶景と多彩な生き物との出会いを楽しめる場所です。


そんな標茶町で約80年前から放牧酪農を家族で行ってきたのが長坂牧場。兄が酪農を担当し、その放牧乳を使ってなにか商品を作れないかと考えたのをきっかけに弟の泰裕さんが チーズ作りを担当。放牧乳とは、広い牧草地で自由に草を食べて育った牛のミルクのこと。ワインに「テロワール(風土)」があるように、放牧乳にも土地ごとの個性が出やすいのが魅力です。
「当初はラクレット作りに挑戦しましたが、設備も技術も思い通りにいかず」と率直に振り返る長坂さん。転機は中標津(なかしべつ)でチーズづくりを行う三友さんから、イチから教わったハードチーズの技法でした。
「ささやかな宣伝効果を期待して」から始まった、
栄光への軌跡

「正直なところ、少しでも宣伝効果があればという軽い気持ちで応募したんです」と長坂さん。「受賞の瞬間は、責任の重さを痛感して身が引き締まる思いでした」
金賞に輝いた胡椒入りハードチーズの誕生は、偶然の発見から。イタリアの伝統的な羊乳チーズ・ペコリーノ・ロマーノとの運命的な出会いが、すべての始まりでした。「チーズ専門店で目にしたのは、ホールペッパーが贅沢に練り込まれた特別な一品。その瞬間、自分のハードチーズにも応用できるのではないかとひらめいたんです」(長坂さん)


しかし、完成への道のりは決して平坦ではありませんでした。胡椒の分量調整に苦心し、2、3回の試行錯誤を重ねて、ようやく理想の味わいにたどり着いたのです。「誰でも思いつく発想かもしれませんが」と謙遜する長坂さんですが、その絶妙なバランスこそがおいしさの決め手となりました。
併せて銅賞を獲得した酒ウォッシュチーズには、釧路が誇る福司酒造の銘酒を採用。地域への愛着と誇りが込められた、まさに道東テロワールの結晶といえる逸品です。
広大な土地を活かした放牧乳のおいしいハードチーズ



牧場に足を踏み入れてまず目を奪われるのが、広大な放牧地で、のびのび草を食べる牛たちです。「ハードチーズ製造には、新鮮な生草もしくは完全に乾燥させた牧草の給餌が絶対条件。この要件を満たせる農家は、実は極めて限定的なんです」。長坂さんが語る言葉には、職人としての矜持が込められています。
「水分量の高いサイレージ(牧草などを発酵させて保存した牛のエサ)を与えてしまうと、チーズ内部で異常発酵が起き、製品として成り立たなくなってしまいます。放牧システムは、単なる飼育方法ではなく、ハードチーズの品質を左右する生命線なのです」(泰裕さん)
さらに特筆すべきは、長坂牧場のチーズが持つ鮮やかな黄金色。「他の工房と比べて、うちのチーズは際立って黄色いと指摘されることがあります」と長坂さん。この美しい色合いは、放牧により摂取される牧草の豊富なカロテンが生み出す、道東の自然の恵みそのものなのです。
おすすめのチーズ


胡椒入りハードチーズ(金賞受賞作品)
「基本的には教わった技法に胡椒を加えただけ」と飾らない長坂さんですがその完璧な調和は並大抵の技術では実現できません。「ビールとの相性を考慮して開発しました。おつまみとして最高の一品になったと自負しています」。
まずは、薄切りにしてそのまま味わうのがおすすめ。その豊かな風味を最もストレートに楽しめる食べ方です。さらに料理への応用力も高く、カルボナーラの材料に使えば、胡椒とチーズが絶妙なバランスで配合されているため追加の調味料は不要。ハードチーズは実用性の高さも魅力のひとつです。


「みのり」ハードチーズ
胡椒入りと双璧をなす人気商品で、長坂牧場の技術力を象徴する代表作。「可能な限り薄くスライスして召し上がってください」と長坂さんがアドバイスするように、繊細な味わいを最大限に引き出すにはスライスに魂を込めましょう。
加熱調理には適さないため、そのままの風味を楽しむか、細かく削ってシーザーサラダの仕上げなどに使用するのが理想的。味の決め手になる、実力派チーズです。

長坂牧場の珠玉のチーズは、新千歳空港や東京の専門店「チーズのこえ」をはじめ、全国の厳選されたチーズ専門店で取り扱われています。基本は卸売ですが、ふるさと納税やオンライン通販でも購入することが可能です。
釧路湿原の雄大な自然に囲まれた標茶町の職人の情熱が込められたチーズを味わう体験は、きっと忘れられない思い出となることでしょう。
- 店舗名:
- 長坂牧場チーズ工房
- 住所:
- 北海道川上郡標茶町字中チャンベツ原野基線11-8
- 電話:
- 015-488-6355
- 営業時間:
- 9:00~






