サステナブルな酪農、地元の銘酒との出会い
発酵の町・秩父の恵みが育む名チーズ
埼玉県秩父市 秩父やまなみチーズ工房
令和7年度国産牛乳乳製品の需要拡大・競争力強化対策事業(国産チーズ競争力強化支援対策事業)
※お酒は20歳になってから。
池袋から80分。発酵文化が息づく聖地で始まった、第二の人生
池袋から西武線で約80分。
秩父は日本酒・ウイスキー・ビール・ワイン・ミードまで、主要な酒類が全て揃う全国でも稀有な発酵文化が根付く聖地です。
清冽な水と豊潤な自然に抱かれたこの地で、2018年10月に産声を上げたのが秩父やまなみチーズ工房。代表の高沢徹さんは、新聞記者として27年のキャリアを積んだ後、休職を経て54歳でチーズ職人へと転身。北海道・共働学舎新得農場での半年間の修業を経て、妻のりり子さんとともに秩父の大地に根を下ろします。2020年ジャパンチーズアワードで最優秀部門賞含む3部門入選、2024年には「秩父黒ビールチェダー」が受賞するなど、今最も注目すべき国産チーズ工房です。
第2の人生、妻の故郷・秩父で始めたチーズ作り
秩父市街地から車で約30分、秩父産のブドウでワインをつくる兎田ワイナリーのすぐそば。青い牛のイラストが目印の工房は、牛の模様で世界地図をあしらった遊び心あふれる外壁や、ミルク缶をモチーフにした駐車場番号などが訪れる人を和ませます。
徹さんは新聞記者からチーズ職人という異色の経歴の持ち主。「新しい道を選ぶか、そのまま働くか、50歳を過ぎて悩みましたが、もともと味噌、こんにゃく、豆腐など食品を作ることが趣味だったんです。休職を経て、その中でもチーズに魅了されて」(徹さん)
妻のりり子さんの出身地である秩父での再出発を決意した徹さんは、埼玉・秩父にある丁寧な飼育と自家製乳製品で知られる吉田牧場と出会います。2016年、54歳で北海道・共働学舎新得農場で半年間チーズ作りを学び、さらに白糠酪恵舎でも研鑽を積みました。
名水と良質な生乳が織りなす、秩父テロワールの結晶
「チーズは生乳だけで作るシンプルな食品。だからこそ、その生乳の良さを損なわないこと、ミルクが持つ本来の力を最大限に引き出すことが私たちの使命です」と語る徹さん。秩父やまなみチーズ工房のチーズには、この土地ならではの「二つの恵み」が息づいています。
第一の恵みは、平成の名水百選に選ばれた「毘沙門水」。隣町・小鹿野町の山中から湧き出る清冽な水は、pHが高く熟成チーズに最適な性質を持ちます。ウォッシュタイプの代表作「ルビー」を塩水で丁寧に磨く際、この毘沙門水が欠かせません。
第二の恵みは、吉田牧場の秩父で出る食の資源を再活用して育てる、持続可能な酪農が育むミルク。世界が注目するウイスキー「イチローズモルト」の搾りかす、地元クラフトビール・秩父麦酒の麦芽粕、スーパーのカット野菜、そして地元7軒の豆腐屋のおから。本来なら廃棄される食材を、丁寧に配合し飼料として牛たちに与えています。「チーズ作りでは副産物も出ますが、無駄なく循環させることが、持続可能なものづくりの第一歩」と徹さん。
秩父の銘酒を纏うチーズたち。
イチローズモルト、秩父麦酒など、
地元の発酵食品を活かした味わい
秩父やまなみチーズ工房の真骨頂は、地元の銘酒を纏ったチーズたち。中でも傑作が、世界的評価を確立したウイスキー「イチローズモルト」を使用したウォッシュチーズ「ルビー」です。
毘沙門水の塩水で1カ月以上丁寧に磨き、最後にベンチャーウイスキー秩父蒸溜所の「イチローズ モルト&グレーン ワールドブレンデッドウイスキー」でウォッシュ。「スカモルツァの燻製」では、ウイスキー樽に使われていたミズナラのチップで燻煙をかけます。「最初から計画していたわけじゃないんです。でも秩父には素晴らしいお酒がある。使わない手はないと思って」
同じ空気、同じ水、同じ大地で育まれた発酵食品同士。ウイスキーとビールとチーズが織りなす三重奏は、数値では測れない不思議な調和を生み出します。「いずれは日本酒の酒粕も」と語る徹さん。秩父の発酵文化を繋ぐ挑戦は、まだ始まったばかりです。
おすすめのチーズ
モッツァレラ
「ミルクの旨味と繊維感、この二つをバランスさせることが理想。でも本当に難しいんです」と徹さんが語るのは、シンプルゆえに職人の技が問われる一品。多くの工房が手掛けるモッツァレラですが、秩父やまなみチーズ工房のモッツァレラチーズは吉田牧場の良質な生乳の個性が凝縮された特別な味わいです。
驚きはその食べ方の提案。定番のカプレーゼやサラダはもちろん美味しいのですが、徹さんのおすすめは「モッツァレラ鍋」。「これからの季節は、薄くスライスしたモッツァレラをしゃぶしゃぶのように。キムチ鍋でも味噌鍋でも醤油味でも、何にでも合いますよ」。豚肉や野菜と絡めながら、とろりと溶けたチーズを頬張る贅沢。「高価なものだから、もったいないと思われるかもしれません。でも一番美味しい食べ方なんです」。
秩父黒ビールチェダー
秩父麦酒の黒ビール「黒熊のスタウト」を贅沢に使った、技術が光る逸品。製造過程でホエーを抜き、スポンジ状になったカードを黒ビールに約1時間浸漬。ビールの炭酸がピチピチと弾ける中、チーズは旨味を吸い込んでいきます。その後型に入れてプレス、5カ月の熟成期間を経て完成。
「スタウトの旨味とチェダーの酸味が、絶妙なバランスを生むんです。味噌みたいだと言う人もいますね。同じ発酵物だからでしょうか」と徹さん。カラメルのような深い色合いと、複雑に絡み合う香り。アルコール度数は検出不能なので、お子様でも安心です。
スライスしてそのまま、あるいは少し温めてとろりとさせても絶品。ビール好きの方へのギフトにも最適な、秩父ならではの味わいです。
- 店舗名:
- 秩父やまなみチーズ工房
- 住所:
- 埼玉県秩父市下吉田4074-2
- 電話:
- 0494-26-7638
- 営業時間:
- 12:00~17:00(金・土・日)
※最新情報は公式サイトやSNSをご確認ください。






