01 みかん博士が教えてくれた地域の愛し方
02 離れていても大切にできる地域との関わり方
03 移住の先輩たちに聞いた移住攻略テクニック
こんにちは、ライターのいぬいです。
今回の企画では、東京以外の地方での暮らしに関心を持った僕が愛媛にゆかりのある方々にインタビュー。実体験を教えてもらいながら、
「地域とつながる暮らし」について考えてきました。
さまざまな地域とのつながり方を聞いているうちに、東京以外の地方で暮らすことへのモチベーションはかなり高まっています。
とは言え、地方移住に向けて最初にやるべきことは?手早く情報収集できる方法は?など疑問は尽きません。移住の相談窓口もあるようなのですが、どんなことを聞けばいいか分からない……
いつ来るともわからない"移住のタイミング"に向けて、準備したくなりました。
そこで今回は、ご自身も移住を経験し、移住希望者の相談にも乗っている「移住の先輩たち」にインタビュー!
愛媛県に移住した先輩移住者のお二人に、移住を決めるまでのエピソードから移住の基礎知識、移住攻略テクニックまで、根掘り葉掘り伺っていきます。
記事を読み終えた頃には、自分に合った"移住"を実現するための「心構え&攻略テクニック」が頭に叩き込まれているはずです!
〈座談会参加者のプロフィール〉
移住者① 山口さん
東京でセラピストとして活動したのち、地域おこし協力隊着任を経て2017年に実家のある西予市へUターン移住。
現在は愛媛県南予地方を中心に、移住促進の事業に取り組む。
移住者② 板垣さん
2012年に東京都内から愛媛県松山市へ移住。奥様の実家が松山市内にあったことがきっかけ。
松山市内の中心部にある広告会社に転職したのち、自身の移住経験を活かし、移住促進の事業に携わる。
その後、現在の住居がある久谷(くたに)地域へ転居。
聞き手 乾(いぬい)
今回の取材担当ライター。愛媛と関わるさまざまな人に話を聞くうちに、
「地域とつながる暮らし」に関心を抱きはじめた。
「今日は地方移住を経験されたお二人に、移住のことをいろいろ伺っていきます。よろしくお願いします!」
「まずは、愛媛に移住された時期を教えてください」
「2012年に、東京から松山市の中心部へと引っ越しました。市内の企業で3年間働いたあと、個人の仕事をしながら
妻の実家がある久谷エリアに拠点を移して。なので、私は、『Iターン移住』にあたりますね」
「私は東京で暮らしたあとに6年間くらい、移住先を探して多拠点生活をしていた期間がありました。
いろいろ見た後、2017年に実家がある今の拠点に『Uターン移住』したんです」
「そうか、知らない土地に行く場合だけでなく、故郷に帰ることも移住なんですね」
「そうなんです。簡単に説明すると…」
「UターンとIターンは聞いたことがあったけど、Jターンなんて種類もあるんですね」
「話を戻すと、山口さんが6年間ものあいだ移住先を探していたのはどうしてですか?」
「東京で続けていたセラピストの仕事を変えたくなかったんです。場所を借りてセラピーの施術をしながら、
同じ仕事が続けられるスタイルを模索して各地を巡る生活を6年間続けていました」
「そうか、暮らす土地が変わったら、自分の仕事も変えないといけない可能性が……! その結果、なぜ地元へ?」
「時間が経つにつれて、考え方が変わったんです。自分のなかで『故郷でくつろぎながら暮らせる場所で過ごす』ことと、
『あと何度会えるかわからない親のそばにいる』ことの優先順位が高くなりました」
「優先順位が変わると、仕事内容を限定しなくなったし、仕事に対しても『いままでの経験を活かせたり、新しい人との
出会いがあればいいかも』と思えるようになりましたね」
「なるほど。まず自分の優先順位を見つめ直すことで、仕事や移住先への考え方がまとまり、自分に合った土地への移住にもつながったんですね」
「その点、板垣さんはどう考えていましたか? 移住先に求めていた条件とか……」
「僕は移住先での仕事にはあまりこだわりがなかったので、転職活動自体はスムーズでした。移住先での仕事を
見つける前に前職を辞めていたので、何でもいいと思っていたところもありますが(笑)」
「実際、どのように仕事を見つけましたか?」
「転職活動をした会社が、東京にも事業所のあるところで。面接などの多くは東京で受けることができました」
「いま住んでいる街で仕事探しができるなら、気が楽ですね! 転職活動の度に移住先に行ったり、
移住してから仕事を探すとなるとハードルが高いですもんね」
「そうですね。それに、いまは県や市などの自治体が移住と就職の相談会を実施していたり、WEBサイト上でも、これらの相談窓口を案内していたりもします。まずは移住前に仕事を探す方法を、調べてみるといいと思います」
「では、どうして松山への移住を決めたんでしょう?」
「妻の実家が松山市にあったというのが大きいです。僕は神奈川県横浜市で生まれ育って、ずっと東京で働いていました。
東日本大震災をきっかけに都会での暮らしを変えて、地方での生活を作っていきたいと考えて……
そのときに一番自然な選択肢だったのが、松山市への移住でした」
「『地方でこういう暮らしがしたい』という理想が先にあったんですね。それに、愛媛という土地との縁も。
実際に移住してみて、どうでしたか?」
「実は、松山市ってかなり便利な町なんです。電車も走っているし、飲食店もたくさんある。通勤ラッシュのようなものこそ
ないけれど、東京での生活とあまり変わらないなって思っていました」
「規模の大きい地方都市だと、東京と比べてもそこまで不便さを感じませんよね」
「ですよね。それで3年ほど市内の中心部で暮らしたあとに、同じ松山市内の郊外にある久谷(くたに)地域にまた引っ越しをしました」
「久谷地域に引っ越した理由はなんですか?」
「人によって、自分とマッチする"ちょうどいい地域"ってあると思うんですよね。町から遠い土地で自給自足のような
生活をしたい人もいれば、地方都市で便利な暮らしをしたい人もいる」
「久谷地域は、松山市内の中心部から車で約30分もあれば行ける距離ですが、自然の中でゆったりとした雰囲気を感じられる。
それに、地域にも自治組織としてのコミュニティがある。そんな場所が、自分にとっては『ちょうどいい地域』でした」
「ただ『地方に移住したい』だけじゃなくて、自分に合う土地の特徴や、相性のいいフィールドを見つけることが大事なんですね」
「そう考えると、板垣さんは一度、松山の中心部に引っ越した経験もよかったのかもしれませんね。移住の第一歩というか」
「そうですね、生活インフラへの不安も少ないですし。気軽な移住先としての地方都市はあるかもしれませんね」
「板垣さんはお子様もいらっしゃるんですよね。ご家族での移住を考えたとき、気をつけたことはありますか?」
「最初は、子どもが通うことになる小学校との距離とか、その小学校の校風なんかも調べました。親子によって、
『どのくらいの生徒数の学校に通いたいか』とか、『どういう教育方針の学校に通うのか』って相性があると思うので」
「そうか、学校だって地域によって全然違いますもんね! 事前のリサーチと準備が大切なんだな」
「お二人は、移住する前にどのようなことを調べていましたか?」
「仕事探しと同時に、住む物件とその周囲の環境についても調べていました。方法として、不動産屋さんとメールをやりとりするなかで情報を集めていました」
「地元の不動産屋さんに聞くのはとてもいいですね! 当然、町のことにも詳しいでしょうし」
「そうですね。それに、調べるまであまり知らなかったんですが、松山市やその周辺の市町は賃貸物件の選択肢がありますが、愛媛県内でも人口の少ない地域になると、アパートやマンションが少なく、空き家を探して、借りる、もしくは購入するという検討になっていきます」
「地域によって、選択肢は変わるんですね。空き家を調べるのにいい方法って、
不動産サイトで調べる以外にも何かあるんでしょうか?」
「多くの自治体は、『空き家バンク』という空き家を紹介するWEBサイトを運営しているんです。そこで探したり、
あとは移住先の土地に知り合いができていたら、その人たちにクチコミで教えてもらったりですね」
「『空き家バンク』は誰でも気軽に見ることができるし、時々チェックしてもよさそうですね!」
「あとは、僕が移住した当時は移住の相談窓口や、住民のための支援制度がこんなにあるなんて知りませんでした」
「私のときも、知らなかったです。数年前までは、情報もなかなか届かなかったですもんね」
「移住後の生活を支えてくれるような支援制度が、実はたくさんあったと」
「移住してから気づいたんですが、もっと問い合わせをしてもよかったんだなと思いましたね。
自治体が設置している移住や就職の相談窓口があるので、まずは気軽にメールや電話で相談をしてみればいいんですよね」
「遠慮せずに、どんどん人に聞くのが大事だと。山口さんはどう思われますか?」
「私も、移住候補地での暮らしぶりや、支援制度の情報を知っている人といかにつながれるかが大事だと思いました。
相談窓口に連絡をすれば、移住コンシェルジュ(移住コーディネーター)と呼ばれるプロが相談に乗ってくれる。
わからないことは、素直に彼らに頼ってしまっていいと思います」
「やっぱり都会からの移住だと、現地の生活も文化も制度も、わからないことだらけですもんね。現地の人に聞かないと」
「自分はIターン移住でしたが、移住先が妻の実家に近かったのがとても大きいです。妻の家族から、
その土地のコミュニティのことも聞かせてもらえたので。そうした事前の情報収集が全くいない状態で、ただIターン移住者として
地域に入っていくとなると難しかったかもと思います」
「ただ、いまはそれぞれの市町に移住のコーディネーターさんがいたりもするので、家族や友達が現地にいなくても、
相談に乗ってくれる人は見つかると思いますよ」
「なるほど。山口さんもご実家のある町にUターンする時は、町のことをご家族に聞いたりしたんですか?」
「実は、あんまり家族からは聞いていなくて。むしろ東京で地元の情報を聞くことの方が多かったです。
移住をサポートするイベントに行って、地元の地域おこし協力隊に出会い、直接お話を聞くこともありました。いまはそうしたイベントもオンライン開催しているので、気軽に参加して話を聞いたりしやすいんじゃないでしょうか」
「お二人の話を聞いていると、移住の準備でなによりも大切なのは『現地の人に話を聞く』ということなんですね」
「地方への移住って、人との出会いが、予想外で予想以上の人生へと運んでいくなって思います。
出会った人といい関係を築いていくことで、仕事とか家とか、その土地の暮らしやすい情報が入ってきて、
移住生活をより豊かに前に進めていくことができる。全部、人がきっかけでつながっていくんです」
「なんだか、RPGのゲームみたいですね。人との関係性をつくっていくことで、1つ1つの課題をクリアしながら前に進んでいく」
「わかります。人との関係性は特に大切にしないとね」
「もちろん、それが煩わしいと思えば避けることもできるでしょうし、そういう関わり方が好きなら、
どんどん飛び込んでいくといい。素敵な人や、生き方に触れられると思いますよ」
「自分のペースで、地域に入っていけばいいんですよね。人との関わりを大事にすれば、受け入れてもらえるはず……
大事な姿勢を教えてもらえた気がします!」
移住を経験したお二人からお伺いできたのは、移住前の不安や移住生活で気をつけたことなど、さまざまな「生活」の準備と知恵。
好きな地域に移住するといっても、仕事や家、地域のコミュニティなど、自分の生活を取り巻く環境が変わることは避けられません。
そうした移住生活をうまくスタートさせるために必要なのは、何よりも移住先に「相談できる人」を見つけることでした。
それは何も、友達や親戚とは限りません。気軽に相談できる移住コーディネーターや、
困った時に電話できる相談窓口の番号を知っているだけでも、移住への気持ちが軽やかになるはず。自分一人だけで、
移住生活の経験値を蓄えようとする必要はないのかもしれません。
さまざまな「地域との関わり方」を探ってきた今回の企画。地域の特産品を買うことからはじまり、最後には現地への移住まで、
幅広い関わり方と出会うことができました。
自身の理想とする暮らしを思い描いたとき、もしも移住先での生活がマッチすると思ったなら、
移住への夢を膨らませてみてもいいのかもしれませんね。
〈地域とつながるヒント〉
「えひめ移住ネット」では、愛媛県への移住を考えるヒントになるような情報を発信中。
仕事が見つかる求人情報や、住まい探しにぴったりの空き家情報のほか、先輩移住者の暮らしぶりを知るインタビュー記事も。
是非、移住検討の参考にどうぞ。
https://e-iju.net/