地域とつながるミニコラム 愛媛県編

愛媛生まれのお祭り好きが見つけた、「離れていても大切にできる」地域との関わり方

ハッピを持つ笑顔の女性

01 みかん博士が教えてくれた地域の愛し方
02 離れていても大切にできる地域との関わり方
03 移住の先輩たちに聞いた移住攻略テクニック

こんにちは、ライターのいぬいです。突然ですが、皆さんは地元が恋しくなることはありませんか?

進学や就職、さらには新しい家族ができてパートナーの地元へ……などなど、地元を離れなくてはいけない事情ってありますよね。
一度地元を出たら、なんだかんだで1〜2年は地元に帰ってない、なんてこともザラにあるはず。

もちろん、それは地元に限らない「心の故郷=大好きな地域」でも同じこと。

「地域とつながり続けるって、意外と難しいよなあ……」そんなことを考えていたとき、ある人の噂を聞きました。なんでもその人は、

「祭りを通して、ずっと地元に関わり続けている」

ここまでなら、まだわかります。しかも、

「祭りを通して、自分の地元じゃない地域にもずっと関わり続けている」

と言うじゃありませんか。一体どんなお祭り人間なんだろう?

『祭エンジン』に関わる伊藤里加子さん

ハッピを持ってめちゃくちゃ笑顔になっているこの女性こそ、「祭りを通して地域と関わり続ける」人。
地域の祭と神社を応援するサービス『祭エンジン』に関わる伊藤里加子さんです。

伊藤さんは、現在は茨城県に住みながら、出身地である愛媛県をはじめ、全国各地のお祭りに関わっているそうなんです。

「離れていても、地域を大切にする方法はあるんだって実感しています」

その地域に住んでいなくても、なんでそこまで「地域の祭り」に関わり続けられるんでしょうか? 伊藤さんの実体験から、
「地域とのつながり」についてヒントを得られるかもしれません。

  • 伊藤さん
  • 〈プロフィール〉
    伊藤 里加子さん
    1992年愛媛生まれ。愛媛大学理学部化学科卒。某美容メーカーにて、営業・商品企画・販促企画を経験後、
    2019年1月にFICC京都オフィスに入社。地域の特産品の購入を通して、地域に残る神社やお祭り文化を
    支援するサービス『祭エンジン』などに携わる。

「祭」を通じて地元の人と密に関わる

「お祭りのことや愛媛との関わりのこと、いろいろ聞かせてください!」

「はい、よろしくお願いします」

「そもそも、伊藤さんが関わっている『祭エンジン』ってなんですか?」

「一言で言うと、祭版ふるさと納税です。地域名産品の購入をすると、購入金額の10%が神社や
お祭りの発展のために寄付されます。購入者には返礼品とともに神社や地域を知ってもらうためのものが届くこともあって、
離れていながらもその地域を感じられる仕組みになっています」

祭エンジンの仕組み

引用元:祭エンジンHP

「伊藤さんは、どういったきっかけで祭エンジンに関わり始めることになったんですか?」

「一般社団法人・明日襷(アシタスキ)の代表の宮田宣也さんと知り合って、お祭りの話で盛り上がっていたら
『祭が無くなっている地域があることを知ってる?』と聞かれて、ショックを受けたんです」

伊藤里加子さん

「そのときに、宮田さんが『音もなく消えていく祭を見逃さないために、こんな取り組みをしてみたいんだ』と祭エンジンの
構想を話してくれて。自分の大好きな祭に貢献したいと、立ち上げから関わらせてもらいました」

「その思いに共感できたんですね。祭エンジンでの伊藤さんの役割はどんなものなのでしょうか?」

「まずは、祭エンジンの記事『祭MAGAZINE』の記事執筆と公開までの進行管理。
さらには地域の方とやりとりをして返礼品を決めることもありますし、
地域のプロジェクトを1つ立ち上げて完成させるまで、プロデューサーの立場で関わっています

祭マガジン

『祭MAGAZINE』では、地方の祭りを担う人々へのインタビュー記事や、祭文化に関するコラムを公開。祭りの魅力を発信している

「地元の人と密に関われそうですね」

「はい! 祭の派手なシーンだけを切り取るのではなくて、祭に携わる人や、その人の想いにフォーカスした取材を
意識している
のですが、聞けば聞くほど本当にすごいなって思うし、学びがあるんですよ」

「伊藤さんにとっては『人』が大事なんだなと感じます。祭を通じて好きになった町ってありますか?」

「うーん、それで言うと全部ですね(笑)。高校の頃、日本を知りたいと思って、国内旅行をたくさんしたんです。
だけど第二のふるさとや仲間ができた感覚になれたのは、祭エンジンでの活動を通じてだけでした」

「どうしてそんなに地域との深い絆が生まれるんでしょう?」

祭り好き同士、祭への愛を語るだけで、すっごく仲よくなれるんですよ。例えば、本プロジェクトとは別に
『祭研究女子会』という手書き新聞を発行する組織を始めてみたんです。完全オンラインで、高校生か
ら海外在住の大使館勤務の方まで多様なバックグラウンドを持った方が集まっているのに、めちゃくちゃ盛り上がって」

『祭研究女子会』の手書き新聞

見せてくれた新聞には、全国各地からオンラインで制作に参加する女性メンバーたちの「祭りへの思い」が綴られていた

「若い人も祭が好きなんだとわかると、地元の方の励みになりそうですね」

「まさにそれが狙いなんです。それから、「オミヤクリーン」活動も参加者の距離がグッと縮まります」

「オミヤクリーンというと? 」

オミヤクリーン活動の参加者

「『神社清掃』をかわいく呼んでるんです(笑)。きっかけは、祭エンジン代表の地元にある春日神社が
祭を盛り上げるために神社清掃を月1回していると聞いたことでした。実際に私たちも参加して、清掃を続けていると、
そこから新たな地域コミュニティが生まれている感覚があって……

「どんなことがあったんですか?」

「若者が楽しく参加している姿を見た町内会のおじさんが『実は僕、地元で和太鼓チームをつくりたかったんだよね』
と話してくれて。それを聞いたオミヤクリーンのメンバーの中から、和太鼓にも参加したいという人が10人くらい集まったんです。
しかも、その場で。いまや地元のイベントに呼んでもらえる太鼓チームに成長したんですよ」

和太鼓チーム

「すごい! おじさんの夢が叶ったんですね!」

神社は、昔からその土地を大事にされてきた方と出会うこともできるし、地域文化が保存されている場所でもあります。
地域の人との距離を縮める方法を聞かれたら、『オミヤクリーンをはじめること』と答えたいくらいです(笑)」

その土地に住まなくても、大切にする方法はある

「いろいろな地域と深く関わっていると、その場所に住みたくなったりしないですか?」

「すごく住みたくなります。私ひとりで動ける状態だったらたぶん移住してると思いますが、今はパートナーがいるので。
自分の気持ちだけでは決められない事情があるのが、移住をしていないシンプルな理由ですね。
ただ、離れていても大切にできる方法があることは、すごく実感しています」

「離れていても地域を大切にできる方法、ぜひ聞かせてください」

伊藤里加子さん

継続的にかかわることは絶対条件かな。あとは課題が共有できる存在になることも大事だと思います」

「課題、ですか?」

「たとえ解決に至らなくても課題を共有できる存在になることが大事。課題を聞いた私が『私たちの地元も
そういうことがありました』と話すだけで、町の人たちが前進する力を届けられることもあるんじゃないかなと。
悩みを話せる友達みたいな感じでしょうか」

「そうか。だから『オミヤクリーン』みたいに継続的に関わる活動をされているんですね!外部から来ている人だからこそ、受け止めやすかったり、うまく助言できることもありそうです」

「そうやって私たちが離れていながら地域のコミュニティに関わることで、地域に住む人同士もつながっているという実感が
あります。
オミヤクリーンや和太鼓チームを通して知り合った地域の人同士が、町でばったり会った時に自然と話すようになる。そうすると、町の中でのコミュニケーションが増えていくじゃないですか」

「ある意味、普通に暮らしているだけだとなかったはずの会話が、町の人同士の間で生まれているというか」

「それって、日常がすごく楽しいものに変わっていっていると思うんですよ。私たちも、そのコミュニティのなかに入れて
もらっているという意識があるので、住まずとも豊かさを感じています」

好きな愛媛に、外から関わっていく

話を伺うライターのいぬいさん

「そうしていろんな土地とつながりを持っている伊藤さんですが、地元・愛媛との関係はどうなんでしょうか?」

「実家に年に数回帰省するほかは、愛媛在住のメンバーを中心としたビジネスコミュニティに所属させてもらっています。
そこではコラムを書いたり、イベントに登壇してお話をしたりという関わり方ですね」

「愛媛在住のメンバーが中心となるなかで、伊藤さんはどのような立場で登壇されたんですか?」

「"副業している愛媛出身の人"というざっくりした立場で呼ばれたのが最初で、
2回目は"移住しそうなのに移住してない人"という立場でした(笑)」

「すごい肩書きですね(笑)」

「しかも呼ばれたのが移住促進のイベントで。ただ、一緒に登壇していた移住した人の考えを聞くことで
『移住ってなんだろう』と考えを深めることができたのがよかったですね。愛媛から離れてしまって寂しいなと
思っていたときに声をかけてもらって、外に行っても地元のために何かできる機会をもらえたような
感覚がうれしかったんです」

「伊藤さんは、地元への愛着がもともと強かったんですね。最初に県外に出たきっかけはなんだったんですか?」

伊藤里加子さん

「都会で最先端の仕事をしている人の考えに興味があったんですよね。
だから就職では愛媛にも帰りやすい場所にと考えて、東京ではなく大阪に行ったんですけど。
大学4年生のときにアメリカのニューヨークに留学したことも大きかったと思います」

「ニューヨークに留学!」

「そこで出会ったスペイン出身の女の子に『日本についてすごく興味があるんだけど、
日本ってどんないいところがあるの?』と訊かれたんですが、全然答えられなかった
んですよ。

でも、そのときに地元である愛媛の『新居浜太鼓祭』のことを思い出して話したら、その子が
ちょっと興味を持ってくれて。その出来事がきっかけで、地元以外の日本のことももっと知らなくちゃと思ったと同時に、
地元のお祭りが自分にとってのアイデンティティのひとつだったんだと気付いたんですよね」

「いい話ですね。ちなみに、新居浜太鼓祭ってどんなお祭りなんですか?」

「毎年10月に行われる、男性が太鼓台を担ぐ男祭です。いつも見ている人や場所がキラキラしたものに変わって、
誰とでもすっごくフラットに話せる夢のような3日間なんですよ。小さいときは"子ども太鼓"に参加して太鼓台を担いだり、
太鼓台の指揮者をしたり。私にとっては今も昔も変わらず、特別な時間ですね」

伊藤里加子さん

「愛媛のこと、地元のこと、しっかり好きでいるんですね……!
これはしょっちゅう聞かれていることかもしれないんですが……愛媛には移住しないんですか?」

「いまは考えていません。でも、移住って選択肢自体はすごく素敵な決断だと思いますね。ワーケーションの取り組みに
関わっているときに山梨に移住したご夫婦と知り合ったんですが、地域の人と深く関わりながら、
一緒にプロジェクトを生み出して働かれていて。そういう働き方もすごくいいなと思いました。

私は地域の外から変化をもたらす役割を模索しているんですけど、その土地に根付いて活動する人も必要。
役割が違うだけで、どちらも地域やそこに住んでいる人を大事にする動きですよね」

「すごく大事な、地域と関わるスタンスを教えてもらった気がします。そういえば自分の地元にも、祭りがあったな……」

「いいですね!」

「しばらく関わっていないので、今度、地元の友達に『いまはあの祭りどうなってるの?』って聞いてみようと思います!」

まとめ

「移住」でもなく「観光」でもないかたちで、地域との多様な関わりを持つ伊藤さん。
その姿はまさに軽やかに地元・愛媛と関わり続ける"関係人口"というあり方でした。

伊藤さんにとっての関係人口の定義を聞いたところ、
「行動の有無は問わず、その土地に想いを寄せている人のこと」と答えてくれました。

その土地に想いを寄せることも、地域の課題解決にかかわることも、関係人口のカタチのひとつ。
みなさんも、自分の気になる地域との接点を探してみてはいかがですか?

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〈地域とつながるヒント〉
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